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  東京版 平成26年12月下旬号  
死を見つめ、生を慈しむ  緩和ケア医・奥野慈子さん

奥野さんは“治す医療”のため、お金と時間、体力と気力を使い果たした患者を数多く見てきた。「最期まで闘病という選択はあっていい」と言う一方、「人の幸せは延命の時間以上に、どう生きどう死ぬかによって変わるのではないでしょうか。そのことは、ご家族にもお伝えしていきたい」。がんの初期から強い痛みを感じる患者もいる。「緩和ケアは、治癒のための治療と並行して、早い段階からできます」
 がんなどの病苦を和らげる緩和ケア。緩和ケア医の奥野滋子(しげこ)さん(54)は、がんによる死をテーマにした本「ひとりで死ぬのだって大丈夫」を著した。個々の痛みに即した「オーダーメードの治療は可能」。心の痛みにも着目し、「不安やストレスが体の痛みを強くすることもある」と指摘する。2500人もの看取り(みとり)を重ね、「死について語り合いたい」という患者の切望に応えてきた。体験を基にこう話す。「『死』について考えを深めることは、より良い生き方につながるのでは…」

「がん死」テーマの本を執筆
 「死んだらどうなるの?」。2000年、緩和ケア医に転向した奥野さんは、緩和ケア病棟(ホスピス病棟)の勤務初日、女性のがん患者に尋ねられた。予想もしてなかった質問に「頭が真っ白になった」。答えを考えあぐねているうちに、その女性は亡くなった。「生の苦しみと死の意味、人間の根本の問題を医療者としてもっと考えなければ…」。勤務の傍ら都内の大学院に4年間通い、宗教学を専攻した。

 死に関する疑問の多くに「100%正確な回答はない」と、患者自身も承知している。「患者さんは、恐ろしい死のイメージを少しでも楽なものにしたいと思って聞いてくる。その思いを受け止めるのも緩和ケアです」

 富山市に生まれた奥野さんは高校3年生の時、顔面の形成再建手術を受けた女性を偶然目にした。「傷痕がすごく目立たなくなって、笑顔が印象的でした」。形成外科医を志し、金沢医科大に進学。同大大学院に進んだ後は、研修医として患者に接した。形成外科を選んだ“もう一つの理由”を苦笑しながら明かす。「私は『死』が怖かったのです」  だが、形成外科病棟でも命を落とす人はいた。重症のやけど・けが、乳房再建手術後のがん再発…。苦しみ、嘆きを目の当たりにして、死と向き合う意志を固めた。都内の大学病院に移り、痛みをコントロールする麻酔科医に。投薬や神経ブロックの治療に習熟していく中、確信を深めた。「心のサポートもしないと、痛みの問題は解決しない」

“今”を生きる場所
 終末期を中心に、がんの苦痛を訴える人は際立って多い。だが、緩和ケア病棟で診療を始めて間もなく、意外な事実に驚いた。「(一般の病院に比べ)鎮痛などの薬が少量で済む」。看護師らのスタッフが時間と工夫を惜しまず、心の痛みに寄り添う日常。「死」をタブー視することなく語り合える雰囲気。そこから生まれる感情の安定が痛みを軽減させると思い至った。緩和ケア医への転向を決意した際、“治す医療”を進める周囲から、「なぜ(看取りという)“敗北の医療”を選ぶのか」と聞かれたことを思い返す。「着任前は私自身にも『(緩和ケア病棟は)暗い場所』というイメージがあった」。確かに、打ちひしがれたまま亡くなる人もいる。しかし、「死」をめぐる対話を通し“今を生きる覚悟”を強固にする人は、それ以上に多い。「そんな患者さんたちと接していると、『死は人生の完成期』と思える」。51歳で人間科学の修士号を取得した奥野さんは言葉を継ぐ。「本来は『死』を遠く感じている時から『死』について考え、自分らしい生き方を探究していただければ…」

患者に教えられる
 今夏発行された著書「ひとりで死ぬのだって大丈夫」では、治す医療の現状、緩和ケアの課題など、幅広い問題を取り上げた。「頑張れと言い過ぎない」など、家族が“してはいけないこと”も記した一冊。同書では「家族」を「血縁があってもなくても、縁を結んだ関係にある全ての人」と独自に定義づける。「一人で亡くなっても“心の家族”が居れば、無縁死にはなりません」

 ボランティアへの参加、排せつケアの拒否…。患者と家族の事例も豊富に紹介した。ある男性は全身のひどい倦怠(けんたい)感に苦しみながらも「眠りによる鎮静」を拒んだ。死の直前、妻の誕生日に「ハッピーバースデートゥーユー」を歌った、ささやくような歌声は、奥野さんの心にも刻み込まれている。「痛み治療は時として“最期の別れ”の機会を奪う。単純に体の苦しみを取れば良いものではないと、あらためて教えられました」

 奥野さんは昨年春から神奈川県藤沢市で在宅医として働く。がんだけでなく、認知症や慢性呼吸不全などの患者宅も訪ねる毎日だ。「在宅でも緩和治療が可能な症状は少なくない」とよどみなく語る。「患者さんは自宅に居れば、病気を“現実の全て”ではなく“生活の一部”と捉えやすい。住み慣れた家でそれぞれの生き方を貫くお手伝いをするのも、やりがいのある仕事です」

「ひとりで死ぬのだって大丈夫」 奥野滋子著
 朝日新聞出版から発行。1620円。 Tel.03・5540・7793

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