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  東京版 平成26年11月下旬号  
「現場の“熱”を映す」  映画カメラマン・大津幸四郎さん

「映像にこだわるのは、言葉(文章)では漏れてしまう細かな部分をちりばめることができるから」と話す大津さん。著書「撮影術—映画キャメラマン大津幸四郎の全仕事」(13年、以文社)で自身の撮影哲学や作品について詳しく記している
映画「三里塚に生きる」公開
 「現実は奇妙で面白い。現場の熱を伝えるルポルタージュ(ルポ)の姿勢が大事」。日本のドキュメンタリーを代表する映画カメラマン・大津幸四郎さん(80)の実感だ。学生反乱、三里塚、水俣、原発…。戦後社会運動の現場や世界各地で撮影してきた大津さんの執念の映画「三里塚に生きる」が22日から公開される。「日本解放戦線 三里塚の夏」(小川紳介監督、1968年)の撮影以来、45年ぶりに現地の人々にカメラを向けた“ニッポン最後の百姓一揆・完結編”。「国家権力に抵抗した人々のその後。生き抜くことこそが闘争だった」

 「生きる」とは何か—。静岡県出身の大津さんが少年時代から向き合う命題だ。中学時代にギリシャ哲学、高校時代はフランス映画にはまり、大学ではサルトルの実存主義に傾倒。58年に岩波映画製作所に入社し、5年間撮影助手を務めて退社。フリーのカメラマンとして独立した。

 「圧殺の森」(67年)、「三里塚」シリーズの小川紳介や水俣病問題を追った土本典昭ら日本ドキュメンタリーの旗頭と活動し、黒木和雄監督の「泪橋」(83年)など劇映画にも参加。「映画 日本国憲法」(05年)のジャン・ユンカーマン、「エドワード・サイード」(同)の佐藤真ら若手の映像作家とも組み、数々の傑作を手掛けてきた。

皮膚感覚で迫る
 被写体に皮膚感覚で迫る柔軟なカメラワークに定評がある大津さんは、被写体と自分の生き方を対峙(たいじ)させてきた。相手との距離、空間を意識し、その関係性から生まれた“現場の熱”を感じ取ろうとする。「相手に自分の考えを押し付けるのではなく、相手にいかに吸い上げてもらい教えられるか。頭で考えて撮るというよりも撮った時にはすでに体が動いている感覚」と話す。

 「被写体の姿や生活をさらけ出す」というカメラの暴力性を指摘した上で、「相手の秘密を丸裸にしてはいけない。特に自分の中に『盗んで撮っている』というやましい気持ちが出てくる時は危険」と自戒する。

 近年はルポとドキュメンタリーの違いを再考しているという大津さん。「ドキュメンタリーは記録した映像を分析しながら取捨選択していく理知的な作業。構成力が鍵」。一方、ルポを「報告」と表現し、「現場で受けた熱気を大事にするスタンス。撮る時に思った感覚や相手が持つ熱をすくい上げていけば、幅の感じられる作品になる」と強調する。例えば、「水俣」では大津さんの撮影者としての勘でタコ採り名人の漁を水中撮影。患者の生活と漁の営みから人々の海への愛着を映し出し、作品に深みを与えた。「今の若手は自分の世界観や『つくる』という意識が強い。うまくまとまっているけれど、『作品に力がない』『理知的で冷たい目線』という印象を受けます。でも、現実はもっと奇妙で面白い。そこをくみ取れるのがルポだと思う」

「長い時間」を表現
 そんなルポの強みを意識したのが、「三里塚に生きる」だ。千葉県成田市三里塚を舞台に、60年代に始まった空港建設反対闘争。国家権力に石つぶてやふん尿弾で抵抗する農民の勇姿を撮った「三里塚の夏」のDVDブック発売(12年、太田出版)を機に、大津さんは45年ぶりに三里塚へ。

 農民の側から撮った当時とは違い、「旗幟(きし)を一切鮮明にしないで臨んだ」と大津さん。「権力と闘ってきた人々の今を知りたい。闘争で負った傷は何か。生きるとはどういうことか。こじ開けようとはせず、なるがままになればいいという撮り方にした」

 元反対同盟の青年や婦人、三里塚に定住した闘争支援者の独白。撮影は12年夏から約1年に及んだ。カメラは土地を離れた人間や最後の抵抗者の姿も映す。自死した青年行動隊リーダーの遺書、自宅と農地を強制収用された老婦人の「戦闘宣言」…。2人の死者の言葉を俳優の井浦新と吉行和子が朗読すれば、大友良英が創作した音楽は人間の苦悩を表現する行進曲に。編集を担当した共同監督の代島治彦は、現在の映像に小川らが残したアーカイブ映像や当時の白黒写真を自在に織り交ぜ、国家権力に抵抗した農民の「長い時間」を映像化した。

 同作を「三里塚」“完結編”と位置づける大津さん。「その後の人生を誰もとがめられない。ただ、農業を続けながら生きている人がいたのが、僕にはうれしかった」

撮ることは習性
 作品を撮り終えると心も体もすり減り、フラフラになるという。95年には食道がんを患った大津さん。「術後の生存率は15%と宣告された。8時間の手術で患部を切除。胃を持ち上げて食道上部と喉を直接くっつけた」

 復帰して10数年後、今度は大腸がんに。幸い患部は小さくすぐに処置したというものの、最近は肺の不調とも闘う。それでも「撮ることは習性、生きること」と静かに笑う。「力まずに、いい意味で諦める。すると脱力できて、いいことが起こる。興味が湧くからまたカメラを回す」


「三里塚に生きる」を撮影する大津幸四郎さん
「三里塚に生きる」  日本映画
 監督・撮影:大津幸四郎、監督・編集:代島治彦、朗読:吉行和子、井浦新、音楽:大友良英、写真:北井一夫。140分。

 22日(土)から、渋谷・ユーロスペース(Tel.03・3461・0211)で上映。

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