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  東京版 平成26年10月下旬号  
人生はいつも…“今”から始められる  海外での失業体験を著した栗崎由子さん

つらい体験も笑顔で話す栗崎さん。ただ、千葉県内に住む80代の母親に話が及んだ時だけ声を詰まらせた。失業中、一時帰国しスイスに戻る前夜、現金の入った封筒を渡された。「つましい年金暮らしの中、お金をためた母の心を思うと…。その時だけは泣きました」
 女性、独身、50代半ばにして異国で失業—。国際通信ビジネスの最前線に立っていた栗崎由子さん(59)は4年近く、スイスで定職のない日々を余儀なくされた。東京大卒業後、30年間は“サラリーウーマン”。求職中は、すし店や観光ガイドのアルバイトで日銭を稼いだ。今、専門分野にこだわった過去とは違う価値観を持ち合わせる。「仕事とは、他の人がしてほしいことをすることでもある」。再就職までの体験を本に著した栗崎さんはこう話す。「何歳になっても、人生は『今』から始められる」

 「きょうの午後から、会社に居なくていい」。2008年1月、当時53歳の栗崎さんは突然、解雇を言い渡された。世界各国の航空会社間のデータ通信に関わる「多国籍企業」。組織改編に伴う措置は、個人の評価とは無縁だった。「欧米では珍しくないこと」と言うものの、「市場調査のプロ」の自負を胸に各国を駆け巡った日々に幕を下ろされた衝撃…。「2カ月ほどは何も手に付かなかった」

留学…海外への関心募る
 栗崎さんは東京大教養学部を出た78年、日本電信電話公社(現・NTTグループ)に入社。デジタル通信網の普及や電話機のカラー化に向けた市場調査を担当した。ただ、休職して留学したカナダで、「以前から抱いていた海外への関心を募らせた」。

 89年、NTTを退社し、パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)へ。94年には「多国籍企業」への転職に伴い、ジュネーブ(スイス)に移住した。電気通信市場自由化の利点を各国政府に説くなど、交渉の場でも手腕を発揮。「自由化は世界の人たちのためになると思うとパワーが湧いた。身近な例でいえば、電話料金が下がるとか」。最先端技術と情報弱者をつなぐ“懸け橋”になる気概もあった。「弱視の人が使いやすいネット環境も考えました」

“タケノコ生活”
 失職後、「日本に帰っても再就職は難しい」と考え、ジュネーブにとどまり仕事を探した。しかし、応募先の多くから返事すら来ない現実。「無視されるほど心のエネルギーを奪われることはない」と苦笑する。失業保険給付は09年末で打ち切られ、「(10年の)元旦から貯金を取り崩す“タケノコ生活”に入りました」。

 「家賃も払えなくなるのでは…」という不安。「私の専門性を必要とする企業はほとんどない」とこぼし、大学の先輩に諭された。「仕事とは、他の人が『お金を払ってでもしてほしい』ということをすること」。その言葉を聞き、職種を選んでいた視点を「180度変えた」と栗崎さん。何人もの知人に仕事の紹介を頼んだ。その経緯や心情をホームページ上の日記・ブログで公開。ユーモアを交えて率直に…。「ブログは私自身の癒やしになった。書くことで気付きも得られました」

 臨時の通訳や取材助手、社長秘書、観光ガイド…。持ち帰り専門のすし店で接客の店員としても働いた。さまざまな人種・民族が住むジュネーブで「私の“日本人顔”は、お客さまの好感を得る効果があった(笑)」。11年10月、日本の製薬会社の現地法人に再就職した栗崎さんは、言葉に実感を込める。「どんな仕事にも熟練と工夫が必要」。専門性を大事にする姿勢を保つ一方、「新しい職種で自分の意外な可能性に気付くこともあります」と歯切れ良い。

自分に“投資”を
 今夏、出版した自著「女・東大卒、異国で失業、50代半ばから生き直し」では、求職中のブログを再構成した上で、今の思いを書き加えた。「(失業中の)私と同じ思いをしている中高年女性は日本にも多い。私の七転び八起きが参考になれば…」。ジュネーブではおととし夏から毎月、求職中の50代女性を対象にしたワークショップを主宰する。無報酬のボランティア活動。悩む女性に「自分への投資を惜しまないで」と助言する。栗崎さん自身は求職活動と並行して大学の社会人コースで「企業の社会責任(CSR)」を学び、フランス語の学校に通った。失業中の孤独感を知るだけに、こうも語り掛ける。「あなたは一人ではない。あきらめなければ必ず道は開ける」。自著に載せた亡き愛猫のイラストは、猫が元気だったころ、趣味で描いた作品だ。「楽しみをけちると、心がやせてしまいます」

 栗崎さんは再就職した会社を今春辞め、「日欧ビジネスのコンサルタント」として起業した。人種や民族、年齢や性別に関係なく、「個人が能力で評価される社会をつくりたい」。求職中、何度も聞かされた“高年齢の壁”を、行動の積み重ねで乗り越えた自負もある。「年齢を重ねる中、得られる経験や熟練は、若さとは別種の価値があります」

「女・東大卒、異国で失業、50代半ばから生き直し」
 パド・ウィメンズ・オフィスから発行。2700円。Tel.03・5292・8200

【栗崎さんの現在のブログ】
「今、生き直し中〜私は昭和30年生まれ」 http://ameblo.jp/chancy-suisse/

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