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  東京版 平成26年9月下旬号  
「読者を異界に連れていきたい」  作家・浅田次郎さん

大の競馬好きでもある浅田さん。「臨場感のないものはニセモノだから」と場外馬券売り場ではなく競馬場に通う。「競馬は頭と体を使うから高齢者におすすめです。軽く1万歩は歩くことになるし、声も出す。金はなくすけど、しょせん子どもに渡すものではないから。僕は子どもに『使い果たす宣言』をしていますよ。でも人生の終わりが予測できないから、使い切るタイミングが難しい(笑)」
「柘榴坂の仇討」が映画化
 「読者を異界に、自分の小説世界に連れていきたい」。作家・浅田次郎さん(62)の夢だ。時代物から現代小説まで多彩な作品を手掛け、「鉄道員(ぽっぽや)」「壬生義士伝」など映画化された作品も数多い。20日公開の映画「柘榴坂(ざくろざか)の仇討(あだうち)」は、幕末から明治へという“時代の垣根”を必死に乗り越えようとする侍と家族の物語—。「一つのことを貫くのは尊い。時代と向き合い、今の世の中に何が書けるか」。浅田さんはひたむきに筆を執る。

 早朝から執筆し午後は読書。夜は酒を飲まずに、テレビで社会情勢に触れる。浅田さんは根っからの“活字人間”だ。「僕から小説を取り上げたら何も残らない。最近想像するのは突然、体が不自由になって読み書きができなくなった時のこと。性格や見た目がよければいいけど、何もないから妻や子どもにも捨てられる」と苦笑する。書くことに飽きはないと言い切る。「締め切りでがんじがらめになって愚痴をこぼしている時でも自虐的快感がある。よほど書くことが好きなんだと思う」

 幼少から読書に明け暮れた浅田さんは高校卒業後、自衛隊に入隊した。「憧れの三島由紀夫さんの割腹自殺の理由を知りたかった。周りも三島さんのファンと思っていたら誰もいなくてびっくり」と笑う。2年間の自衛隊生活で得たものは、規則正しい生活習慣と基礎体力、精神力だという。

 浅田さんは話す。「小説家はデビューしてからが体力勝負。どのくらいの数を、レベルの高いもので書いていけるかという世界。今も小説と格闘できるのは、若いうちにつくった体のおかげだね」

 除隊後はアパレル業を営みながら執筆を続け、39歳で小説家デビュー。悪漢小説作品を経て、95年に「地下鉄(メトロ)に乗って」で吉川英治文学新人賞、97年に「鉄道員」で直木賞を受賞した。

 人情味あふれる作風で「平成の泣かせ屋」の異名を取るものの、浅田さん自身は作品のテーマ選びを重視する。「今の時代を書くのが作家。『男と女とは何か』『社会における異種とは』とか、いつもテーマが頭の中を巡っている。最初に書きたいテーマを決め、それにふさわしいストーリーをかぶせていくという順番が大事。魂を考えておいてそこに仏を彫るというのが芸術です。仏を彫って後から魂を入れようとしたら、ろくな小説はできない」

庶民がつくる歴史
 そんな中、ひたむきに生きることの尊さを描いた作品が「柘榴坂の仇討」だ。同作は03年発表の短編集「五郎治殿御始末」の中の一つ。明治維新という時代の転換点で、武士の誇りと覚悟を胸に主君の仇を追い続ける男と、武士の未練を捨てた男、そして彼らを支える女たち…。そこへ新政府の「仇討禁止令」が布告され、侍たちの運命が動く。

 「歴史は有名な人ではなく、その時代に生きる庶民一人一人がきちんと向き合ってつくってきたもの。明治維新も戦後復興もその好例」と浅田さん。「江戸から明治という時代の垣根を日本国民はいかにして乗り越えたのか。日本全体で価値観の逆転がなければ西洋列強の植民地になっていたはず。その陰にはこういう名もなき武士の物語もあったのではないかと想像した。人々の心の葛藤や夫婦関係など、現代劇では表現しにくい“心のひだ”をしっかり描けるのは時代物ならでは」

 映画では中井貴一や阿部寛、藤竜也ら豪華俳優陣に加え、映画「沈まぬ太陽」の若松節朗が監督を、久石譲が音楽を務めた。「書く時に映像は意識しない」という浅田さんも、「一人一人の役者が時代背景を理解していて感心した。とてもいい映画です」と満足げだ。

愚直に続ける
 「『健康のため』と考えず、やりたいことをやって生きたいように生きる。それが健康にいい」と浅田さん。自身が取り組む小説の魅力をこう語る。「いい小説というのは、読者を異界に連れていってくれる。想像力が働くからね。自分で読みながらその背景を想像していて、頭の中で初めて世界が構築される。自分の小説の世界に読者を連れていくのは夢ですね」。また、若者に対しては「一つのことを持続することは尊い。多才な人間に限って若いうちはあれもこれもできちゃうけれど、最終的に愚直にやってきた人間には勝てないんです。だから一つのことを根気強く、辛抱強く」とエールを送る。

 直木賞の選考委員や日本ペンクラブ会長も務める浅田さん。激動の時代といわれる現代にペンを持つ責任をかみ締める。「明治維新も戦後復興の時も、じっとしていたら時代に振り落とされてしまうからみんな必死だった。僕らは世の中が豊かになって食べ物を捨てるようになった。太るからといって米を食べないし、ワーキングプアでもスマホを持っている時代。豊かだと切迫感がなくなり、何でも人ごとになってしまう。豊かさの中で時代にきちんと向き合うのは難しいけれど、おろそかにしてはいけない。決して『人ごとではない』と向き合っていけるかが、僕らの大命題だと思います」


©2014映画「柘榴坂の仇討」 製作委員会
柘榴坂(ざくろざか)仇討(あだうち)」  日本映画
 「桜田門外の変」で敬愛する主君・井伊直弼を失った彦根藩士・志村金吾は切腹を許されず、「仇を討て」という藩命に従い、明治維新後も仇を追い続けた。13年後の明治6年、金吾は最後の仇・佐橋十兵衛を探し出すが、皮肉にもその日、新政府は「仇討禁止令」を布告していた。十兵衛が引く人力車は金吾を乗せ、柘榴坂に向かう。

 原作:浅田次郎、監督:若松節朗、出演:中井貴一、阿部寛、広末涼子、中村吉右衛門ほか。119分。

 20日(土)から、丸の内ピカデリー(Tel.03・3201・2881)ほかで上映。

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