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  東京版 平成26年1月下旬号  
時代劇「鬼平外伝」最新作に出演  俳優・國村隼さん

趣味は車と釣り。釣りはルアーなどを使用して「ヤマメやニジマス、イワナなどを釣る。釣りに使う毛針を自分で作るのが楽しい」と趣味でもものづくり精神を発揮している
 最近、時代劇を映画やテレビで見る機会がめっきり減っている中で、見応えある作品で注目を集めているのがオリジナル本格時代劇「鬼平外伝」シリーズ(時代劇専門チャンネル)だ。昨年放送され好評だったシリーズ第3作「正月四日の客」に続き、最新作「老盗流転」がこのほど製作された。元盗賊の徳兵衛と松蔵が35年ぶりに再会したのを機にそれぞれの人生が大きく流転していく様を描いた同作品。徳兵衛役の橋爪功、徳兵衛の妻・おもん役の若村麻由美を相手に松蔵を演じた國村隼(じゅん)さん(58)に話を聞いた。

 「鬼平外伝」シリーズは、池波正太郎の代表作「鬼平犯科帳」の原点といわれる短編集を映像化したもので、盗賊や市井の人々を主役に、もう一つの鬼平の世界を描いている。その4作目となるのが「老盗流転」(原作:池波正太郎「江戸の暗黒街」=角川文庫=所収「殺」)だ。

 かつて同じ盗賊一味で今は小間物屋・井筒屋の主人、徳兵衛といまだ闇の世界に生きる松蔵。兄弟分のような関係だった2人は、別れてから35年ぶりに江戸・深川で偶然再会する。しかし、松蔵は意外な人物から徳兵衛の殺しを頼まれていたのだった…。

 今回、松蔵を演じるにあたって「堅気になった徳兵衛と闇の世界からなかなか抜け出せない松蔵のコントラストがうまく出せればいいかな」と考えて撮影に臨んだという國村さん。「(徳兵衛役で共演する)橋爪さんの芝居をする時のたたずまいが大好き。その橋爪さんと一緒に演じることを楽しむ気持ちでいれば、自然と徳兵衛と松蔵の関係がにじみ出てくるのでは、と思った」と言う。

 1955年生まれの國村さんは、子供のころ忍者のまねやチャンバラごっこで遊んだ世代。また、若いころにテレビの「新・必殺仕事人」などの必殺シリーズにたびたび出演した経験もある。そんな國村さんにとって今の時代劇の状況はさびしく映るようで、「時代劇だからこそ日本人の心情が描きやすいと思う」と時代劇のよさをアピールする。  「老盗流転」の製作では、テレビ「必殺シリーズ」の石原興が監督を、数多くの池波作品を手掛けてきた金子成人が脚本を担当、長年京都で時代劇をつくり続けてきた松竹撮影所のスタッフが集結した。

 前3作同様、時代劇の情感を出すために地上波のテレビドラマではほとんど見られなくなったフィルム撮影にこだわり、池波が愛したというフィルム・ノワールの世界—、光と影が交錯する深みのある映像スタイルで人の心の闇や人生の非情を描いた。

 こうして作られた「鬼平外伝」シリーズは前作、「正月四日の客」が第3回衛星放送協会オリジナル番組アワードオリジナル番組賞ドラマ番組部門最優秀賞を受賞するなど高い評価を得ている。

 そんな時代劇に「橋爪さんや若村さんと池波正太郎の世界を演じることができ、楽しかった」と話す國村さん。昨年から今年にかけて映画「あさひるばん」(やまさき十三監督)や「地獄でなぜ悪い」(園子温監督)など出演作8作が相次いで公開され、その活躍ぶりが目立つ。

“つなぎ”が天職に
 幅広い役柄をこなす俳優として定評がある國村さんだが、子供のころの夢はエンジニア。「車が好きで大人になったら車の設計を仕事にしたい」と思っていたという。

 しかし、エンジニアになるために通っていた学校(大阪府立大学工業高等専門学校)を退学してエンジニアの夢を断念。「次の目標が決まるまでの一時的なつなぎ」という軽い気持ちで大阪放送劇団付属研究所に入ったのが、俳優としての人生を歩むきっかけに。

 「それまで演技の経験もなく、父は普通の勤め人。親戚にも役者関係の人はいなかった」という國村さん。演劇の世界に足を踏み入れて分かったのは、「ものづくりと芝居をつくることは同じ」ということだった。「出来上がるものは違うが、どちらもゼロから完成するまでの工程はほぼ同じ」ということに気付き、それから俳優という仕事が「面白くてしょうがなくなった」と言う。

 その後、初舞台を経て81年「ガキ帝国」(井筒和幸監督)で映画デビュー。89年には俳優・松田優作の遺作となった「ブラック・レイン」(リドリー・スコット監督)にやくざ役で出演して海外からも注目され、97年「萌の朱雀」(河瀬直美監督)で初主演を務めた。テレビでも2006年10月から放送されたNHK朝の連続テレビ小説「芋たこなんきん」で主人公の夫(カモカのおっちゃん)を演じている。

 これまで映画やテレビで主役から脇役までさまざまな役柄を演じ、ナレーションにもいぶし銀の存在感を見せる國村さん。これからどんな活躍を見せるのか注目される俳優の一人だが、そんな國村さんにはエンジニアとしてものづくりを志していた頃の気持ちが今もなお息づいている。

「才能と出会う」
 「この仕事をやっているといろんな人との出会いがある。俳優に限らず監督やスタッフなど、それぞれ才能を持った人たちと仕事できるのが楽しい」と笑顔を見せる國村さん。映画などの作品をつくる過程でさまざまな才能と出会う喜びが、俳優という仕事を長年続けてこられた原動力になっているようだ。

 國村さんが俳優という仕事に臨む時の態度は、「映像作品というものづくりを楽しみながら、お客さんに面白いと思っていただける作品をつくりたい」とあくまでシンプル。この姿勢はこれからも変わらないはずだ。


©2013日本映画衛星放送(株)/松竹(株)
鬼平外伝「老盗流転」  時代劇専門チャンネル
 原作:池波正太郎、監督:石原興、脚本:金子成人、音楽:遠藤浩二、出演:橋爪功、國村隼、若村麻由美、益岡徹ほか。78分。

 2月1日(土)午後10時と11日(火・祝)午後2時に時代劇専門チャンネル(Tel.0570・200・262)で再放送。

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