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定年時代
 
  東京版 平成24年7月下旬号  
時代の空気、アニメに託す  アニメ映画監督/杉井ギサブローさん

「自分が60歳、70歳だからと、年齢そのものに価値を置くことにいいことありますか」と話す杉井さん。「思考や、時代を見る目線に年齢は関係ない。『若さ=ものの考え方』だとすれば、いつまでも若い方がいいですよね」
半生がドキュメンタリーに
 「タッチ」「銀河鉄道の夜」「あらしのよるに」…。アニメーション映画監督の杉井ギサブローさん(71)は、常に新しい映像表現を追求する職人だ。28日(土)公開の「アニメ師・杉井ギサブロー」(石岡正人監督)は、そんな杉井さんの素顔と戦後日本のアニメーションの歴史に迫ったドキュメンタリー。「時代の空気を呼吸し、その鮮度を作品に託したい。自分の年齢なんて考えている場合じゃない」。公開中の新作アニメ「グスコーブドリの伝記」に対する思いも聞いた。

 「手塚治虫先生(1928~89)に出会って人生が決定したようなもの。ものづくりの考え方、思考法を学んだんです」

  静岡県沼津市出身。小学校5年の時にディズニー映画「バンビ」を見て以来、杉井さんはアニメーションの道を志した。「滑らかな動きのディズニーのような映画を作りたい」。18歳で東映動画に入社し、日本最初のカラー長編アニメーション映画「白蛇伝」(58年)に参加。21歳の時、手塚が立ち上げた虫プロダクションへ。

  憧れの存在だった手塚は偉ぶることのない人だったという。「入社した瞬間から態度も言葉遣いも対等のような扱い。常に同じ戦場で相手をしてくれた」と杉井さん。父のように敬愛する一方、時には異を唱えることもありながら、手塚からの信頼は厚く、「ぎっちゃんがもう一人いてくれたら」という言葉も。

  日本初のテレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」(1963~66)の演出・作画を担当したのは23歳の時だ。人間と同じ感情を持つロボットの苦悩―。動きが少ない「リミテッド・アニメーション」。題材もさることながら、手塚が考えた“省略化”の手法は杉井さんの常識を覆すものだった。

見る人の“目”を信じる
 「手抜きといわれたけれど、動く所と止まる所を極端にした結果、ある種のリズム感が生まれ、当時の若者に心地よく届いたのでは」。そう分析する杉井さん自身、最初はかなり困惑したが、作品の面白さに驚いた。「人は習慣や経験があると、今までの価値の延長上で始めるものだけど、それを壊してみる。作るってこういうことかと知り、アニメに可能性を感じたんです」

  「ルパン三世」のパイロット版を制作し、以降、「悟空の大冒険」「どろろ」など杉井さんは常に新しい表現を追求してきた。一方、自分のアニメーションの限界にぶつかり現場を離れた時期も。30代半ばから10年間、家庭も仕事も捨てアニメを辞める覚悟で放浪の旅へ。日本各地を転々とし、絵を売って生計を立てたという。それでも旅先からテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」の絵コンテを送るなど、アニメと決別することはなかった。「自分の仕事とは、アニメとは何かを考える時間になりました」

  復帰後は、あだち充の漫画「タッチ」や紫式部の「源氏物語」などをアニメ化。中でも再出発の作品と位置付けるのは、宮沢賢治原作の「銀河鉄道の夜」(85年)だ。不思議な汽車で旅をし、出会っては別れる物語に、杉井さんの放浪の記憶が刻まれる。猫のキャラクター設定がされた、ますむらひろしの漫画を原案に、幻想的で美しいイメージ、深い哲学的思想を持つ賢治文学の集大成を映像化した。

  「難解」「観念的」という否定的な前評判をよそに、作品に手応えを感じていた杉井さん。「観客は、作り手が描く限定的な世界ではなく、変化の多い日常を生き抜き、許容量や視野の広さを持っている。今の時代を映した作品であれば、見る人に受け止めてもらえると信じています」。映画は、アニメファン以外からも高く評価され、大ヒット。

自称「年齢音痴」
 「僕は若い頃から年齢音痴。『70歳だからこうだ』という考えは好きじゃない」。時代の空気を敏感にキャッチし、情感をリアルに表現しようとする杉井さんの姿勢は今も昔も同じだ。例えば関心が向くのも、若者が今の時代に何を求め、悩み、どんな感じ方をするのか。「自分の年齢より、作品を世の中に送り出す意味を考えることで頭がいっぱい。時代の中で生きたい、という思いが原動力です」

  「3・11」後の日本に贈る「グスコーブドリの伝記」にも、そんな思いが募る。美しい「イーハトーブの森」を舞台に、厳しい自然と向き合う主人公ブドリの勇気と成長を描いた物語。原作者の宮沢賢治自身、その生涯に何度も地震や冷害を体験しながら故郷を愛し、問いかけた自然と人間との関わり。監督の杉井さん自ら脚本も手掛け「銀河鉄道の夜」のスタッフが再結集した。   「昨年の震災以降、多くの人が新しい発想の必要を感じたはず。地球の営みの中で人はどう生きていくのか。前の方法、価値観を否定するという意味ではなく、もう一度検証して何に価値があるのかを見つめ直すことが大切だと思います」


(C)2012「アニメ師・杉井ギサブロー」製作委員会
「アニメ師・杉井ギサブロー」 日本映画
 日本のアニメーション史を支えてきた職人、杉井ギサブローの素顔に迫ったドキュメンタリー。手塚冢治虫、大塚康生、山本暎一、りんたろうといったアニメ史上の有名人たちが証言し、数々の名作アニメ映像が挿入。職人的な情熱と創意工夫に満ちたアニメの現場が描き出される。

  監督:石岡正人。92分。28日(土)から銀座シネパトス(TEL.03・3561・4660)で上映。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇

  映画「グスコーブドリの伝記」は、丸の内ピカデリー(TEL.03・3201・2881)ほかで上映中。声の出演:小栗旬、忽那汐里、柄本明ほか。音楽:小松亮太。108分。

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