定年時代
定年時代はアクティブなシニア世代の情報紙
ASA(朝日新聞販売所)からお届けしています
会社概要 媒体資料 送稿マニュアル
広告のお申し込み イベント お問い合わせ
個人情報保護方針 サイトマップ  
HP更新日 → 新聞発行日の翌々日(水曜日)
新聞発行日 → 第1月曜日:東京/埼玉/千葉/横浜・川崎/茨城
  第3月曜日:東京
トップ 東京版 埼玉版 千葉版 横浜・川崎版 茨城 高齢者施設 プレゼント
旅行 | おすすめ特選ツアー | 趣味 | 相談 |  | 仕事 | 学ぶ | これは便利これは楽々 | リンク | インフォメーション
定年時代
 
  東京版 平成22年11月下旬号  
逆境乗り越える! “ネアカの魂”  俳優/財津一郎さん

財津さんは戦中・戦後にかけて、立ち直る日本の姿を見てきた。「年老いた体でも、心に糸1本のロマンを持って生きている人は目の輝きが違う。たとえその夢が成就することがなくても…」
映画「ふたたび」で新境地
 踏まれた麦ほどよく育つ—。そんな「ネアカの精神」で人生の苦難を乗り越えてきた俳優・財津一郎さん(76)。公開中の映画「ふたたび swing me again」では、50年前の友との約束を果たすため出会ったばかりの孫と最後の旅に出る祖父役を熱演、「自己変革の作品に出合った」と振り返る。ジャズを軸にした、祖父、父、孫三代の痛みと再生の物語—。希望に満ちたジャズの音色が、人生の喜びと重なっていく。

 「肥後もっこすの、へそ曲がりです」。頑固に個性派の道を歩んできた財津さんは笑う。

 熊本県出身。父を早くに戦争で亡くし、戦後の農地解放で代々の土地を失った。「地主と小作人がいきなり逆転、まさに下克上」。不当ないじめや嫌がらせに遭い、木刀で決闘したことも。そんな時、農業高校の恩師の教えが大きな支えに。「今は勝負の時じゃない。踏まれた麦ほど豊かに実る」。つらい時に踏ん張る勇気—。「ネアカの精神」で何度も立ち上がってきた。

 高校卒業後上京し、財津さんは帝劇ミュージカルの研究生に。「30歳までは砂をかむ思いをしよう」と最低限の収入がある撮影所には入らず、実社会でもまれながら芸を磨く道へ。東京會舘で皿洗いの仕事をしたり、「ジミー財津」と名乗って進駐軍のキャンプ回りをしたり。時代の波にのまれ、所属する劇団が次々とつぶれるという憂き目にも耐えた。「若い時に苦労すれば、中年になった時に味のある顔になると信じていた」

ギャグでブレーク
 流れ着いた大阪で吉本新喜劇に入り、大きな転機を迎えた。「キビシー」、「助けてチョーダイ」…。舞台中、思いがけずに生まれたギャグが評判になり1966(昭和41)年から人気テレビ番組「てなもんや三度笠」に出演、一躍全国区の人気者に。

 大阪の客の厳しい反応は、アカデミックな芝居を目指してきた財津さんに柔軟さも加えた。「人情とリアリズムの街。一生懸命やると喜ぶし、駄目なものは駄目と教えてくれる。答えはすぐ出た」。庶民感情に気が付き、大衆へのサービスに喜びを感じるように。当初は妻と幼い息子を抱え、寺の離れで食うや食わずの下宿生活だったが、「座長になると少しずつ食べられるように。大阪に成長させてもらった」と感慨深げだ。

 40歳の顔、50歳の面構え…。有名になった後も数年後の自分をイメージし試行錯誤を続けた。

最期は「ありがとう」で
 その後も「コメディアン経験を切り捨てた作品」という井上ひさし作の舞台「藪原検校」(73年)をはじめ、映画「お葬式」(84年)や藤沢周平原作の時代劇ドラマ「清左衛門残日録」(93年)など数々の作品に出演し活躍の幅を広げてきた。

 「ジャズロマンを前面に出しながら、ハンセン病という地をはうテーマを支えた」。主人公・大翔の祖父を演じた「ふたたび」も財津さんの節目の作品に。祖父と孫、年齢差50歳のコンビが旅するロードムービー。「人生でやり残したこと」をかなえる旅の中、大翔は自分に受け継がれてきた家族のきずなを知る。

 財津さんはハンセン病療養所から50年ぶりに帰ってくる、頑固な元トランペット奏者という役どころ。監督からまず求められたのは道端の石のような重さ、存在感の演技—。「何もしないでそこに“居る”。作品がその存在を支える」。財津さん自身、晩年の演技の課題でもあった。長く独創的なアイデアで勝負してきた“ヒネリダマ”を封じられ、「自己改革を迫られた」と回想する。

 ハイライトは最後のジャムセッション。一夜限りの復活ライブには渡辺貞夫のサックス、犬塚弘のベースも加わり作品を引き締めた。財津さんも撮影の1カ月以上前から猛練習。しかし、「いくらやっても音が出ない。作品が台無しになる」と出演辞退を申し出たほど。そんなピンチを救ったのが「情熱の狂想曲」(51年)、「5つの銅貨」(60年)という2本のジャズ映画。カーク・ダグラス、ダニー・ケイという名優も実際の演奏ができない事実を思い出した。

 「吹けなくても、役者なら迫真の演技という世界で活路を見いだせる。(実際の演奏を担当した)トランペット奏者・原朋直さんの動作やしぐさなど、後ろ姿からその生理を盗み、背中や肩、腰で吹きました」。腕や首筋を痛めながら体にたたき込んだという。

夢は孫との二人旅
 財津さんは61歳の時、脳出血で倒れ緊急手術を受けた。後遺症はなかったものの、今も何本もの“びょう”が右脳を固定する。「時々頭にピリピリと感じると、『そろそろお迎えなのか、もうちょっと待って』と不安になる」。健康を保つため50歳から始めたゴルフを「生きている証し」として続ける。「ある程度の腕前と18ホールを回り切ることが目標。倒れる時は『ありがとう』と叫びながら逝きたい」

 3世代で暮らす財津さん。10歳の孫は野球に熱中し、二人旅の日はだいぶ先になりそうだ。「大人になるまで元気でいないとね」。“ジージー”の優しい笑顔に変わっていた。


(C)2010「ふたたび」製作委員会
「ふたたび swing me again」日本映画
 復興の街・神戸。50年前ジャズバンドに青春をかけていた男たちは、今やそれぞれの人生の最終コーナーを曲がろうとしていた。78歳になった健三郎はかつてのバンド仲間を探すため、思うように動かなくなった手につえを握らせ立ち上がった。その願いは、何も言えずに姿を消したあの日の許しを請うこと。そして果たすはずだったあこがれのジャズクラブ「ソネ」でのセッションを実現させることだった。

 企画・監督:塩屋俊、出演:鈴木亮平、財津一郎、MINJI、青柳翔、藤村俊二、犬塚弘、佐川満男、渡辺貞夫。111分。
 有楽町スバル座(TEL.03・3212・2826)ほかで上映中。

ポイントページの先頭へ
東京版
最新号
→ 令和6年過去の記事一覧
→ 令和5年過去の記事一覧
→ 令和4年過去の記事一覧
→ 令和3年過去の記事一覧
→ 令和2年過去の記事一覧
→ 令和元年過去の記事一覧
→ 平成31年過去の記事一覧
→ 平成30年過去の記事一覧
→ 平成29年過去の記事一覧
→ 平成28年過去の記事一覧
→ 平成27年過去の記事一覧
→ 平成26年過去の記事一覧
→ 平成25年過去の記事一覧
→ 平成24年過去の記事一覧
→ 平成23年過去の記事一覧
平成22年過去の記事一覧
平成21年過去の記事一覧
平成20年過去の記事一覧
平成19年過去の記事一覧
   
定年時代読者のためのおすすめ特選ツアー
 
 
定年時代
トップ | 会社概要 | 媒体資料 | 送稿マニュアル | 広告のお申し込み | イベント | お問い合わせ | 個人情報保護方針 | サイトマップ
当ホームページに掲載されている全ての文章、写真、イラスト等の無断複製・転載を禁じます。
Copyright Shimbun Hensyu Center Company. ALLrights reserved.