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昭和の時代劇スター、大河内傳次郎の 時代劇が好きだという杉さん。「立ち 回りにエネルギーがあった。ああいう 作品をもう一度見たいね」と語る。事 務所に所有するお気に入りの甲ちゅうの前で |
俳優・杉良太郎さん(66)の過去の名作が時代劇専門チャンネルで再放送中だ。「リアルな時代劇を作りたい」という思いで徹底的にこだわった自信作「同心暁蘭之介」(1981年・全44話)などのテレビ時代劇作品が2011年2月まで楽しめる。放送から20年以上たっても作風に古さは感じられない。「観客にこびることなく作った作品を見ることができるので、本当の時代劇ファンには楽しんでもらえると思う。そしてこれからの時代劇の指針になってくれたら」と杉さんは期待を込める。
膨大な数の時代劇に出演してきた杉さん。しかし、本人は全く時代劇に興味はなかったという。長い道のりを経て歌手デビューを果たした3カ月後に、司馬遼太郎原作「燃えよ剣」の沖田総司役のオファーが来て、「渋々引き受けた」のが時代劇との出合い。
しかし、これだけ時代劇にはまる役者もそうはいない。「引き受けたことに責任を持つ、言い訳をしない、困った人を見て見ぬふりができない」など、杉さんの生き方は硬派そのもの。刑務所の慰問活動や海外でのボランティア歴も長く、08年には芸能人として異例の緑綬褒章を受章。しかし本人は「ボランティアは、よしやろう、と思ってするものではなく、もっと自然に行うもの」と気負いがない。
「同心暁蘭之介」など再放送
11年2月までに時代劇専門チャンネルで放送される作品は3本。中でも「視聴者にこびない、リアルな時代劇が作りたい」という思いが募り、ついに自ら会社を興して作った連続ドラマ「同心暁蘭之介」(12月14日から放送)はお気に入りの1作だ。
作品には原作があったが、そこは完ぺき主義の杉さんのこと、よりリアルになるように新聞記事などからネタを拾い、脚本家とともに手を加えた。「すごい貧乏で何日もご飯を食べていない人が、髪は床屋さんに行ってきたみたいにぴちっとしている…、そういう映像は撮りたくない」と細部にもこだわった。忙しいスケジュールの合間を縫って時代考証家のもとへ出向いたり、本を読んで勉強し、十手の長さから着物の仕立て方までとことん詰めたという。
「若い人にも見てほしい」
時代劇に欠かせない危険な立ち回りのシーンでも、杉さんはほとんどスタントマンを使っていない。そのため、「新五捕物帳の撮影の時、木の上から飛び降りてきた敵役に空手の技を掛けられたことがあって、技を受け止めた腕が『みしっ』といったよ」とか、「橋の欄干の上をぴょんぴょん飛んで立ち回りをやったこともある。今からすると自分でも信じられないよ。落ちたら死ぬんだから(笑)」といったエピソードが絶えない。火の中に飛び込むシーンも自分でこなし、瓦屋根の上も走った。まさに、「役者って、命がけ」を地で行っている。
ここまで徹底してやり抜いたのは、「人間って、いい加減な人間になりだしたらとことんだめになってしまう。歯止めが利かないことを知っているから」と話す。
現在は、テレビの時代劇の製作から手を引いているが、遠くから愛情を持って見守り続けているようだ。
「時代劇は奥深いもの。今の若い人が見てもおもしろいね、っていう世界がもっとあるはずです」と、エールを送る。
「時代劇専門チャンネル」
放送されるのは、「喧嘩屋右近3」 (94年・全13話)、「次郎長三国志」(00年・全13話)、「同心暁蘭之介」の3本。 チャンネルの視聴はスカパーなどへ の加入が必要。番組内容の問い合わせはTEL.03・5549・2214 |
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