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  東京版 平成22年8月上旬号  
全国で奏でる被爆ピアノ  広島市の調律師・矢川光則さん

4台の被爆ピアノを含め、矢川さんは現在、平和コンサート用ピアノ6台を所有している。写真は爆心地から1.8キロの民家で被爆した「ミサコのピアノ」=広島市安佐南区の矢川ピアノ工房で
 
   
“平和の旋律”次世代に
 原爆の惨禍に耐えた数台のピアノ—。広島市の調律師・矢川光則さん(58)は自らの手で修復した被爆ピアノをトラックに乗せて全国を回る。65年前、広島で被爆したピアノには生々しい傷跡が残るものの、「ピアノの人生は今も続き、その音を奏でている」。手弁当で続ける平和コンサートは400回を超え、各地に共感の輪が広がる。9月にはアメリカ・ニューヨークで初めての海外公演も。“あの日”の音色が次世代に受け継がれていく。

 「水がきれいで夏には蛍が出ます」。広島市郊外で育った矢川さんは先祖代々の土地でピアノ工房を営む。戦後生まれの被爆2世。祖父母、両親は65年前の8月6日、広島に投下された原爆で被爆した。消防士だった父・正行さんは爆心地から800mの消防署で、その瞬間を迎えた。

 爆発の熱線と爆風は一瞬のうちに広島を包み、爆心地周辺の地上の温度は3000度以上に達したとも。崩れたコンクリートのすき間に閉じ込められ、九死に一生を得た正行さん。腰に付けていた短刀で天井に穴を開け脱出。地獄絵図と化した町を歩き、翌朝、実家まで帰ってきたという。戦後は体調を崩し、無理ができない体になった正行さんから戦争の話をよく聞かされた矢川さん。「自分が今いるのは紙一重」とかみ締めながらも、「昔は戦争に関心もなかったし、平和ボケしていた」と話す。

 大手ピアノメーカーを経て1995年、ピアノ工房設立を機にピアノのリサイクル活動を開始した矢川さん。使われなくなったピアノを譲り受け修復、再生。国内外の学校や福祉施設に寄付する奉仕活動を重ねる中で、被爆ピアノと出合った。

被爆後の姿残す
 爆風で飛ばされたガラス片が刺さった跡—。持ち主からピアノの思い出話を聞き、あらためて戦争について学んだ矢川さん。「被爆ピアノの音色を聞いてもらえば平和を考えるきっかけになるはず。単なる原爆資料でなく伝える道具として活用しよう」と01年から手作りコンサートを開始した。ピアノの調律をはじめ、音響設備や運搬用のトラックも自らそろえた。ピアノの修復や調律など、できる限り部品を変えず当時の姿を残そうとするのは「65年前の被爆の証しを消したくないから」。戦後60年の05年には活動を広げ、ピアノと“二人三脚”で全国を回っている。

 「放射能を浴びたピアノに触っても大丈夫?」—。公演直後のさりげない一言に心を痛めたことがあれば、被爆ピアノに救われた人に出会ったことも。母親の妊娠時、体内で被爆したあるピアニストは戦後母を亡くし引きこもるようになった。

 しかし被爆ピアノを弾くと、「ピアノから虹が見えた」と心の病を克服、演奏活動を再開したという。矢川さんは話す。「ピアノは生き物。弾く人によって音色が全く違う」。特にテーマ性の強い被爆ピアノだけに、「技術でなく心まで出ちゃう。だから怖くて、面白い」。

「未来への伝言」
 被爆ピアノを題材にした物語の朗読や多くのアーティストとの共演などその活動は広がりを見せる。7日(土)には昨夏開催された被爆ピアノ朗読コンサート「未来への伝言」の再演も。歌、三味線、朗読、学生のパフォーマンス。世代を超えた仲間が平和の音色を奏でる。今年は東京、茨城、秋田と続き、9月のニューヨーク公演につなげる構想だ。

「9・11」慰霊も
 被爆ピアノ初の海外公演は、「9・11」の米・同時多発テロで犠牲になった消防士らの慰霊と平和への祈りを込める。核廃絶を目指すオバマ大統領の姿勢に共感した矢川さんと、写真家の竹本宗文さん(52)=広島県廿日市市=が中心になって進める。自身も被爆2世の竹本さんは、「過去は変わらないけれど、未来なら変えられる。宗教、言葉、肌の色の違いを超え、被爆ピアノの音色を通して手をつなぐことができる」。ただ悩みの種はピアノの輸送費。600万円ほど必要だという。「昨春から募金を集めているけどまだまだ」と矢川さんは支援を呼び掛けている。

 「50歳を過ぎてから自分は変わった」。矢川さんはしみじみと振り返る。手弁当の活動のため金銭的な負担は大きいが、「子どもも独立したし、この活動でいろいろな人とのつながりを実感できる」。戦争を体験した親世代、混迷の時代を過ごす若者世代に思いをはせ、「自分はいい時代に青春を送った。今は被爆ピアノから使命をもらったような気がします」。広島では今年に入り学生たちが自主的にコンサートを企画する動きも出てきている。http://www.peace-hiroshima.org/


2009年8月に開催された「未来への伝言」 提供:ヴォイスケ
 
「未来への伝言 平和の旋律 ピアノで、三味線で!」
 7日(土)午後6時半開演、文京シビックセンター(地下鉄後楽園駅すぐ)小ホールで。

 2009年8月に東京で開催された被爆ピアノ朗読コンサートの再演。谷川俊太郎作詞・杵屋巳太郎作曲のエピグラム「五月の人ごみ」「原爆を裁く」の演奏のほか、絵本「ミサコの被爆ピアノ」(文=松谷みよ子)の朗読も。

 出演:杵屋巳太郎、谷川賢作、おおたか静流、飯島晶子、矢川光則、クラーク記念国際高等学校。全席自由3000円。ヴォイスケ(飯島)TEL&FAX.03・3998・8254

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