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歌丸さんの趣味は川や湖での釣り。今秋、ワカサギ釣りを久しぶりに再開しようと計画している |
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肺気腫患い禁煙…、「元気に」
今年で放送開始から45年目の人気長寿番組「笑点」(日本テレビ系)の司会を務める桂歌丸さん(73)。これまで約60年もの間、落語一筋に生きてきた。これほど長く続けていても落語に対する深い愛情は変わらない。「落語には、その噺(はなし)をやるのにふさわしい年齢がある」という歌丸さん。元気で長生きして、現代では高座でやらなくなった古典落語の復活など、新境地の開拓に意欲を見せる。
「あと何十年も生きられるわけじゃない。だったら自分の思う通りに生きたい」と話す歌丸さん。何を思う通りにやりたいかというと、「仕事である落語以外にはない」と言葉に力を込める。「まだまだ、これからやりたい落語があります。大きな噺ばかりじゃなくて、笑いの多いものもやりたい」と落語のことになると、身を乗り出す。
1936(昭和11)年、横浜市・真金(まがね)町に生まれた歌丸さん。小さいころから落語家になりたくて、中学3年生の時に古今亭今輔(5代目)に入門、今児を名乗る。その後、桂米丸門下となり、米坊を経て歌丸に改名。32歳で真打ちに昇進した。
今も“ネタ”増やす
36年前の横浜・三吉演芸場での独演会から本格的に古典落語を取り上げるなど、“ネタ”を増やしていく努力を今も怠らない。そこで大切になってくるのは健康管理。「落語家は楽屋から高座まで歩けて、声が出ればいつまでもやれる商売。でも、どこか体の具合が悪ければ新しい噺は覚えられない」と話す。
それでも病気になる時にはなるもの。昨年2月、歌丸さんは肺気腫で10日間入院した。入院前に、高座で一気に話すことができずに途中で息継ぎをすることがたびたびあったが、「たばこの吸い過ぎかな」くらいに軽く考えていたという。入院を機に、歌丸さんは“缶ピース”で1日50本吸っていたたばこをやめざるを得なかった。
歌丸さんがかかった肺気腫はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の一種。COPDは別名“たばこ病”ともいわれ、たばこなど有害な空気を吸い込むことで気道や肺などに炎症が起こる「肺の生活習慣病」。日本では、60歳以上の喫煙者の3人に1人にCOPDの疑いがあるといわれる。まだ、欧米に比べ認知度が低く病院で気付かないことも多いという。
「70代に合う噺に挑む」
毎月3カ所の病院で肺、腰、大腸を診てもらっている歌丸さんだが、健康のための散歩や運動などは一切やらない。また、毎日の食事で塩分や糖分の取り過ぎなども気にしない。もともと酒は飲めないし、20歳から吸い始めたたばこもやめた。大好きだった釣りも腰を痛めてからは遠ざかっている。「そのうえ塩分や糖分を控えめにしていたら、生きている張りがない」と笑う。
仕事であるとともに生きがいでもある落語。歌丸さんの持論は、「政治家には政治家の責任があるように、落語家は落語を後世に残していくのが責任」。自らに課すことの一つに古典落語の復活がある。「落語家にとって落語は財産。それを埋もれたままにしておくのはもったいない」と目を大きく見開く。かつて客を楽しませてきた噺でも、宗教的なからみなどが理由で演じられなくなった落語がずいぶんあるという。その原因となった部分をカットし、代わりに何か現代に通じる話を入れて復活させるのが歌丸流だ。
若い客向けに工夫
また、落語の客を後の世に残していくのも落語家の責任。「客席に来る若い客が増えてきた」と喜ぶ一方、若い客が多いと苦労するのが言葉の問題。「落語は古い言葉でできていますよね。そのため時々、通じない場合がある」と歌丸さん。最近では、若い人が理解できない言葉を最初に説明した上で本題に入ることも。
「悲惨なことや残酷なことをネタにしては絶対だめ」と若手へ注文を付ける時の歌丸さんは、(社)落語芸術協会会長としての顔を見せる。「寄席の時はできるだけ客が笑えるような噺をやってほしい。落語というのは面白いな、と思って帰ってもらいたいから」
「20代や30代に合った落語があるように、60〜70代に合うものもある」と歌丸さんは話す。幕末から明治にかけて活躍した落語家、三遊亭圓朝の創作した「文七元結」や「真景累ヶ淵」などの人情噺や怪談物を始めたのも58歳から。年齢を重ねるにつれて歌丸さんが今後、どんな新境地を見せるのか楽しみだ。
ディスカバリー COPD研究会
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断率向上を目指し呼吸器科専門医が設立。桂歌丸さんは、世間に広く知ってもらうことが役割の「COPD啓発大使」に就任した。ちなみに8月1日(日)は(社)日本呼吸器学会が定めた「肺の日」。呼吸器疾患について最新の情報を伝え、病気予防のための啓発活動を推し進めている。
COPD情報サイト
http://www.spinet.jp/ |
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