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定年時代
 
  東京版 平成21年7月上旬号  
伝統の芸を「確実に継承」  人間国宝/杵屋巳太郎さん

長唄杵巳流七代目家元、屋上菊五郎劇団音楽部代表部長…。“お堅い”肩書とは対照的に、気さくで多趣味多芸の巳太郎さん。40代以降に水泳と空手を始め、「今は音楽部の若手が作る野球部とサッカー部の終身名誉監督をやっています」
 
   
歌舞伎音楽・長唄三味線 8月に奏でる“平和の調べ”
 歌舞伎音楽・長唄三味線の人間国宝、杵屋巳太郎さん(本名=宮澤雅之、71)は自分の役割を運動会の集団競技に例え、「伝統芸は“大玉送り”。確実に受け取って次に渡すことが大事」と話す。疎開、空襲、空腹…。少年期の「何もない時代」に命をつなぎ、邦楽の普及や歌舞伎音楽の発展・継承に努めてきた。「戦争体験を伝えるのは自分の世代にとって大切」と8月9日(日)の被爆ピアノ朗読コンサート「未来への伝言」に出演、世代とジャンルを超えた仲間とともに平和の調べを奏でる。

 30代半ばで尾上菊五郎劇団音楽部に入部し、黒御簾(くろみす)音楽の三味線方を務める。舞台下手、黒いすだれの内側が巳太郎さんの定位置だ。三味線、唄、鳴り物による多彩な音色で歌舞伎役者の心理や情景描写を表現する黒御簾。「歌舞伎の“歌”だから」と長年歌舞伎音楽に貢献し、2007年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

 認定の意味を「確実な伝承」と解釈し、「個の技の研さんだけでなく、将来にわたって後継者を育てる責任が加わった」と語る巳太郎さん。「先輩たちが苦心してつくってきた伝統芸」という大玉の“送り手”の一人として、次世代に経験を語り継ぐ。ただ「戦争のせいで、大玉送りの途中が欠けている」とも。

“戦争の記憶”曲に込める
 東京都出身の巳太郎さんは3歳から父(先代)に長唄の指導を受けた。しかし小学校入学の年に戦局が悪化、家族は親類を頼って鹿児島へ疎開した。

 北九州の工場を狙うB29や錦江湾から高射砲で敵機を迎え撃つ漁船群の光景。特攻隊の青年たちと遊んだ淡い記憶があれば、グラマン機の機銃掃射を不意に受けたことも。

 終戦間近、3日かけて鹿児島から引き揚げた。母の手記には当時の苦労が残されている。幼子2人と大荷物を抱え、混雑する汽車を何度も乗り継いだ。荷物には代々の歌舞伎音楽台本など杵巳流の資料があったという。

 「うちの劇団は江戸歌舞伎の写実的な芝居が得意」と今でこそ笑みを見せる巳太郎さん。しかし、少し上は継承の“空白世代”。大正後期や昭和初期生まれなど「江戸の雰囲気が残った東京の街並みを見ている最後の世代が兵隊に取られた」としみじみ語る。自身も「原爆投下の直前に広島を通った」と言うだけに、いろいろな分野で伝統の継承が途絶えていたのかもしれない。

 
被爆ピアノ朗読コンサートの様子=20007年
創作活動も
 戦後、長く肺を患った父は巳太郎さんが高校2年の時に死去。その後、父の親友・今藤長十郎(後の人間国宝)に誘われてけいこに行くと、「いい師といいライバルがいて火がついた」と巳太郎さんは演奏者の道を決意。「17年間で長唄、三味線、作曲法を学んだ」

 「伝統」の中にあっても巳太郎さんは柔軟な姿勢を貫く。渋谷駅前で邦楽に関する街頭アンケートをしたり、小劇場で洋楽器と演奏したり。小中学生を対象に邦楽の魅力を伝える学校巡回を始めたのもこの時期だ。

 創作活動にも力を入れ、創作邦楽研究会として10年間全国を回った。「かちかち山」を題材に戦争の愚かさを表現した「狸八島」(作詞=杉昌郎)など平和を願った作品も作曲。原爆の悲劇と立ち向かう広島の姿を描いた音楽ドキュメンタリー「朝顔」では監修を務める師匠から第一楽章を任され、「修業時代の大変な抜てきに自信がついた」と巳太郎さん。

40年ぶりの「再演」
 8月9日に開催される「未来への伝言」はNPO日本朗読文化協会理事の飯島晶子さんらが草の根で続ける「被爆ピアノと朗読コンサート」の特別版だ。64年前、原爆を受けながら今も“生きる”ピアノと、その持ち主の体験から誕生した絵本「ミサコの被爆ピアノ」(文=松谷みよ子)の朗読─。昨年この公演を聴いた巳太郎さんが自ら参加を希望した。

 コンサートでは40年前、谷川俊太郎さんの詩に平和への祈りを込めて巳太郎さんが作曲した「原爆を裁く」などを演奏する。最近では他ジャンルとの共演が珍しいというが、今回は三味線、ピアノ、朗読、歌声という組み合わせ。高校生がコーラスとして参加することも決まり、「子どもたちがやわらかな平和運動に参加する。せっかくだから、まったく新しいものをつくろうよ」とうれしそうだ。

 国立劇場講師や黒御簾音楽の演奏をまとめたCD集の発表など近年、後進の育成にますます力を入れる巳太郎さん。「弟子は自分の鏡。弟子から気がつくことが多い」という芸の道にいるだけに「素質のある弟子に責任と自信をつけさせ、その弟子が育てる若い芽を増やしたい。若い世代に戦争体験を伝えることは自分たちの世代にとって大切だと思う」。

「未来への伝言 平和の旋律 ピアノで、三味線で!」
日時:8月9日(日)午後2時開演
場所:東京ウィメンズプラザホール(地下鉄表参道駅徒歩7分)
出演:杵屋巳太郎、谷川賢作、おおたか静流、矢川光則、飯島晶子
料金:前売り3000円(当日3500円)。全席自由
問い合わせ:VoiceK(ヴォイスケ)TEL&FAX03-3998-8254

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