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「出会いが自分のキーワード」と話す渡辺俊幸さん。「ビートルズ、さだまさし、『未知との遭遇』、オーケストラ…。出会いに恵まれ今の自分がある」 |
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♪映画やテレビ番組…♪
多くの人の“心に響く”映画やテレビ番組の音楽−。ヒット作の音を“紡ぐ”作曲・編曲家、渡辺俊幸さん(53)は、35年に及ぶ自らの音楽家生活を「すごく変わっている」と振り返る。デビュー時はフォークグループのドラマー。その後、さだまさしのプロデューサーとなり、1980年代からはクラシックを軸にした「映像の音楽」で名を高めた。“分野を越えた音楽世界”を生かし「新鮮で、そして聴きやすい曲を作り続けたい」と穏やかな口調で言葉を継ぐ。
35年、分野を越え活躍
「ピアノは苦行でした」。アニメソングの第一人者といわれる作曲・編曲家、渡辺宙明を父に持つ渡辺さんは“意外な”思い出を口にする。4歳からピアノと絶対音感を養う聴音を学習したが「ピアノは指を間違えないように動かす練習。曲もつまらなかった」と2年間でレッスンをやめた。
聴音は、父親の“命令”で続けたが「音楽家にはならないと内心反発していた」。しかし小学校4年生の時、ザ・ビートルズに刺激されドラムを始めた。1970(昭和45)年、故郷の名古屋から上京。ジャズバンドなどを経て73年、人気絶頂だったフォークグループ「赤い鳥」のドラマーとしてプロデビューした。作曲・編曲のためピアノを“再開”した渡辺さん。74年の「赤い鳥」解散後ほどなくして、さだまさしのプロデューサーになった。「さださんとの出会いは大きな転機。彼は今も、かけがえのない盟友です」
「音楽の魅力、言葉でも」
さだのソロデビュー曲「線香花火」(76年)を皮切りに、渡辺さんが編曲した歌は次々にヒット。「次第に自信を付けた」と語るが、映画「未知との遭遇」の音楽に「一人の作曲家(ジョン・ウィリアムズ)がこれほどの仕事をするとは…」と衝撃を受けた。ほぼ独学で作曲・編曲をしてきたが「複雑な作曲技法を体系的に学びたい」と79年にボストン留学。当時、ボストン交響楽団の指揮者が小澤征爾だったこともあり「毎週のようにコンサート通い。映画音楽の元がクラシックにあると確信しました」と笑みを見せる。
大河ドラマの曲も
82年の帰国後、テレビなどの音楽で実績を重ね「毛利元就」(97年)、「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」(02年)と、NHK大河ドラマ2本の音楽も担当した。さだの小説を映画化した「解夏(げげ)」(04年)、ことし11月公開の「天国はまだ遠く」など映画音楽の数々も。「仕事をしながら自身の世界を広げてきた」と話す。
音楽家生活35周年を記念した初めてのベストアルバム「メロディーズ」には「自分の多面性を味わっていただきたい」との思いを込めた。大河ドラマの曲のほか、NHKテレビ「迷宮美術館」のテーマ曲など“親しみやすく心地よい音楽”をえりすぐっている。
“挫折体験”を糧に
現在はオーケストラの指揮者も務め「生の演奏の魅力も届けたい」と意欲的な渡辺さん。8月に東京で開いた35周年記念コンサートでは、タクトを振った上で、演奏した自作やザ・ビートルズなどの曲について説明した。「音楽の魅力を言葉でも伝えたい」。24年前の「赤い鳥」解散後、新グループを立ち上げたが「売れなかった。今思えば音楽への姿勢が独り善がりでした」と振り返る。
“挫折体験”を糧に「多くの人に希望と喜びを感じていただける曲作りを貫いている」と渡辺さん。映画やテレビの音楽では日本屈指といわれる今も「(メロディーを)とことん考える。そうしてこそ、インスピレーションもわく」。穏やかな表情の中に、しんの強さと情熱を秘める。
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渡辺俊幸さんのCD 「渡辺俊幸ベスト〜メロディーズ〜」
「未来への提言メインテーマ」、「大地の子エンドタイトル」、「雨にうたれて〜雨の情景〜」(映画「解夏」より)、「にっぽん家族の肖像メインテーマ」など19曲を収録。2600円。
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「GLORY〜35周年記念コンサート」
8月にサントリーホール(港区)で開かれたコンサートのライブ盤。2枚組。3500円。09年1月21日(水)新発売。
双方とも(株)ユーキャン(TEL:03-3954-6421)より発売。 |
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