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撮影では三宅さんの意見でせりふの一部を変えたという。「(佐々部清監督は) 対話を大切にしてくれる監督さんでした」 |
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45歳以上の人におすすめの「R−45?」を掲げ公開中の映画「結婚しようよ」は、切なく温かく心に響く父と家族の物語だ。主演の三宅裕司さん (56) は“年ごろの娘”2人の父親役。実生活でも大学生の娘の父親とあって「主人公の気持ちが痛いほど分かります」と語る。テレビや舞台でも精力的に活躍する中、「家族の大切さをあらためて感じた。ぼく自身も仕事と家族、両方をずっと大事にしていきたい」と話す。
「実生活と重なる」
「R−45?」とはいえ、誰もが“笑って泣ける”映画「結婚しようよ」。吉田拓郎のヒット曲からタイトルをとった作品では、拓郎の20曲が全編に流れ、それぞれのシーンに重なっていく。「落陽」「明日に向って走れ」、そして「結婚しようよ」。三宅さんがギターを弾く場面は“見せ場”のひとつだ。プロの音楽家とともに日本武道館のステージに立ったほどの腕だが「やはり(音楽の)プロには及びもつかない」と笑みを見せる。
映画は、三宅さん演じる平凡なサラリーマン・香取卓の心の揺れを軸に展開する。妻と娘2人との4人家族。毎日欠かさず家族一緒に夕食をとる「ルール」を生きがいとしてきたが、姉の恋愛や妹のバンド活動でルールは次第に崩れていく。さらに妻も自立の気配。主人公は大学卒業後もプロのフォーク歌手を目指したが、家族を守ろうと音楽の夢を断った過去があった…。
「根っこは喜劇役者」
中学生の時にバンド活動を始め、高校・大学では落語研究会に入った三宅さん。神田神保町に生まれ育った江戸っ子で「人前でわっと受ける快感がたまらない」と喜劇のプロを志した。「20代はなかなか売れなかった」と振り返るが31歳の時、ラジオ、テレビでレギュラーの座をつかみ、35歳で結婚した。妻は小学校の同級生。「結婚する前は7回も別れた。でも、ぼくが食っていけるようになるまで待っていてくれた」。映画のように毎日一緒の夕食とはいかないが、大学生の長女、高校生の長男を加えた一家4人での夕食は「ぼくにとっても大切な時間」と語る。映画では主人公が娘の恋人の靴を踏む場面があるが、「実はわたし、私生活でも自宅に来た娘の彼氏の靴を“もちろん”踏んづけました」。
「必ず泣きます」
家族の変化への戸惑いといら立ち、娘の恋人への複雑な思い…。主人公の心中を映すかのように、ストーリーは二転三転するが“切れない家族のきずな”を象徴するクライマックスのシーンが印象的だ。「45歳以上のお父さんなら必ず泣くでしょうね」と、5作目となる映画主演作への手ごたえを語る。「日本を支えてきた団塊のお父さんたちがちょっと立ち止まり“家族の形”を思うきっかけになる作品だと思います」と、かみしめるように話す。
持ち前の“芸”磨く
テレビでの軽妙な語り口と機転の効いたアドリブはおなじみだが「ぼくの根っこは喜劇役者」と歯切れよい。自らが座長を務める劇団スーパー・エキセントリック・シアター (SET) の「ミュージカル・アクション・コメディー」や、伊東四朗らとの軽演劇を「これからも活動の“しん”にしていく」と話す。
内容を練り上げた「お笑いの芸」が三宅さんの持ち味。「オレたちひょうきん族」(フジテレビ) が視聴率で「8時だョ!全員集合」(TBS) を逆転した1980年代前半を境に、テレビでは「作りこんだ笑い」が少なくなったと感じている。「だからこそ自分の芸風をガラッと変えるつもりはない」。伊東や森光子らの名を挙げ「70、80代でやっている大先輩たちを、これからもずっと追いかけていきますよ」と意欲を見せる。
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