![](../../../image/common/shim.gif) |
![](../../image/title.gif) |
生死の“はざま”愉快な落語絵 イラストレーター/小森傑さん |
![](../../../image/common/shim.gif) |
![](../../../image/common/shim.gif) |
|
![](1.jpg)
抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け帽子をかぶるようになった。髪の毛が再び生えた今は「帽子がトレードマークみたいになった」 |
|
“余命3カ月”の体で描き続けた愉快な落語絵。リンパ系組織のがん「悪性リンパ腫」に侵されたイラストレーター小森傑 (すぐる) さん (57) が、9月9日 (日) から神楽坂で小さな個展を開く。
死の恐怖に覆われそうになった2006年春、友人が「描き続けてくれないか」と、背中に手を添えた。「そんな心をいっぱいもらって … 。前向きな気持ちを失わずにすんだ」と小森さん。がん細胞がなくなる「寛解」に至った今、あふれる感謝を絵筆に託す。
悪性リンパ腫 … 今は「寛解」
神楽坂の毘沙門天で開かれる毘沙門寄席。小森さんは、古今亭菊之丞が初出演した05年11月から「菊之丞の会」ポスターの落語絵を描く。菊之丞の高座を見て「粋な江戸の噺家 (はなしか) が出てきた」と感じた小森さん。演目に合わせ、花魁 (おいらん) 姿の菊之丞の似顔絵を描いた。
好きなお酒が飲みにくくなったのは、その年の暮れ。左足付け根のリンパ節がはれ上がった。06年2月、悪性リンパ腫の告知。何もしなければ3カ月後に訪れる死。義理の兄が数年前、同じ病名で同じ病院で逝っていた。
「先生、(義兄の) リベンジをしてください」。
義兄の時にはなかった抗がん剤を用いたが、治る保障はなかった。5年以上生きる確率は3割台。
「06年W杯 (サッカー) は見れないかも…」。
自らの生死にかかわるという現実感がなく、病院のベッドでぼんやりと思った。そんな時「またイラスト、頼むよ」と声を掛けたのが、ポスターをデザインする山口則彦さん (59) 。神楽坂の地域活動を続ける山口さんとは30数年来の仕事仲間。すべてを知らせた後の依頼だった。
|
![](2.jpg)
菊之丞が慣れない商売をする士族にふんした似顔絵。演目は「素人鰻」
= 2007年6月のポスターから |
心に染みる友の思い
再発の不安、制作続ける
抗がん剤の副作用からくる「ひどい気分の浮き沈みと吐き気」の合間を縫うようにして描いた。「演目の時代背景を (山口さんが) 調べてくれたね」。山口さんの妻の公子さん (54) が、がん患者生活コーディネーターの資格と経験を生かし山口さんに助言した。
「前向きな気持ちが、体に一番いいんだから」と。
雑誌やパンフレット、博物館のパネルなどのイラストを手掛けた小森さん。独学で身に付けたさまざまな画風を使い分けるが、発病前に描いた「手間がかかる、がっちりした絵」の制作を貫いた。治療開始から7カ月後に聞いた寛解の言葉。
「 (夫が) 落ち込んでいる時も、できるだけ普段通りに接しました」と言う妻の喜巳子さん (52) は「少しだけほっとしました」。寛解まで3回分のポスターを描いた小森さんは「絵筆を手にした時は、少し病気から離れられた」と話す。菊之丞が士族やたいこ持ちなど、落語の人物にふんする似顔絵は、見る人の笑いを誘う。
![](3.jpg)
古今亭菊之丞 |
|
菊之丞とサイン会も
寛解後「 (再発不安から) うつ病になる人の気持ちが分かった」と言う。それでも涙で目を光らせ“快気祝い”をする友人や家族の顔が、描き続ける力になった。落語絵展のアイデアも友人たち。第8回菊之丞の会がある9月27日 (木) には「菊之丞・小森傑サイン会」も開く。「“嫌だ”と言っていたのに、サインの練習をしている」と笑う山口さん。
そんな山口さんを見て、「似顔絵の謝礼は (菊之丞の会の入場が) タダになるだけなんだよ」と小森さん。
「でも、お金では決して買えないものを、いっぱいもらっている」
古里では“スター”
再発の可能性は消えないが「ようやく精神的に落ち着いてきた」と言う。もともとサービス精神旺盛で活動的。自宅のある調布市では、町会活動を再開させた。古里の静岡県川根本町では“スター”だ。弟の禅 (ゆずる) さん (54) = 静岡市 = と年に2回以上、自分が作詞・作曲した歌を演奏する。昭和30年代をイメージした曲。バンド名は「懐かしい」をもじった「ナッツ&カッシー」。「幼なじみが復活ライブをおぜん立てしてくれた」。持ち前の明るさと遊び心を取り戻しつつある。
落語絵展は10月13日 (土) まで、神楽坂「ココット・カフェ」で開催する。第1回〜8回までのポスターと、小森さんの原画を展示する。「神楽坂がん子」の落語名を持つ公子さんが各回の噺レポートを添える。仕事に復帰した小森さんは、仲間とともにつくった神楽坂に近い広告制作会社に通う。「人間を描くことが好き。人の内面のどこか愛せるところを少し品良く描いていきたい」。そして神楽坂や友人たちに「少しでも恩返しをしていきたい」。笑顔の奥の祈るような思い。
山口さんはポスターのほか、友人向けの案内状を作った。
「団塊の宝、中年のキラ星、オールドルーキー小森傑羽ばたく!!」
『落語絵展』
お茶や料理、ワインなどが楽しめる。9月27日のサイン会は午後5時〜6時、同店で。小森さんのサイン色紙には落語絵のシールを張る。
期間 : 9月9日 (日) 〜10月13日 (土)
会場 : 「ココット・カフェ」
アクセス : JR飯田橋駅徒歩7分
問い合わせ :
TEL : 03-3269-8030 (オフィスヤマグチ)
TEL : 042-499-7055 (小森) |
『 毘沙門寄席「第8回菊之丞の会」』
日時 : 9月27日 (木) 午後7時
場所 : 毘沙門天 (JR飯田橋駅徒歩5分) 書院
前売り : 2200円
問い合わせ :
TEL : 03-3260-6260 ( NPO法人粋なまちづくり倶楽部事務局) |
|
| ![](../../../image/common/shim.gif) |
|