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定年時代
 
  東京版 平成19年5月下旬号  
言葉は心の糧   女優/山本富士子さん

最近は"美点凝視"という言葉に感銘を受けたという山本さん。「人のいいところをじっと見つめれば、その人も自分のいいところを見てくれる。世の中が楽しくなるんです」
(撮影 : 川上尚見)
 
雨情の思いを伝えたい
 「 "こうありたい" と願い、毎日積み重ねていくことが大事。言葉は日常の苦悩から自分を支えてくれる心の糧です」と話すのは女優の山本富士子さん(75)。戦後、第1回ミス日本に選ばれ、日本映画界の全盛期を支えた山本さん。結婚後はテレビや舞台に活躍の場を移し、昨年秋の公演では野口雨情の詩の世界を語りとセリフで演じ、好評を博した。6月に行われるアンコール公演に向けて「こんな時代だからこそ弱者への優しさや慈しみを歌った雨情の詩を伝えていきたい」と語った。

 かつて日本では言葉に宿る不思議な力を「言霊(ことだま)」と呼び、言葉の力が信じられた。さりげない一言が自殺を考えた若者を救い、時に為政者の失言が時代を揺るがした。文豪ゲーテは《機知に富み、うちとけた言葉は永久に生命を持つ》と残している。「言葉は心の糧です」という山本さんが大好きな詩に出合ったのは今から約16年前。

《青春とは、人生のある期間ではなく心の持ち方をいう。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき人は老いる》

6月にアンコール公演 「女優、再演が大事」
 サムエル・ウルマンが70代で書いた詩にハッとさせられ、思わず紙に書きつけた。以来、琴線に触れる言葉に出合うとノートに書き留めるように。感銘を受けた言葉や人生訓をつづった「折々の言葉」と題したノートを、息子・茂晴さんの結婚式でプレゼントした。

 夫・丈晴さんが感動したという詩を誕生日に贈ってくれたことも。《時は過ぎ去るものではなく、身体のうちに積もりゆくもの》。一瞬一瞬を大切に、いい時間を積み重ねていこうという "砂時計の詩" は、山本さんの女優人生に通じる "心の持ち方" だった。

転機を積み重ねて
 日本一の美女と言われ、 "お富士さん" の愛称で慕われてきた山本さんは昔から料理や家事が大好き。何でも話せる両親の姿を見て育ち「将来の夢はいいお嫁さんになること」だったが、1950年、第1回ミス日本に選ばれ、「人生が180度変わりました」。

 大映専属女優として53年に映画「花の講道館」でデビュー。10年間に103本の作品に出演し、日本映画界の全盛期を支えた。結婚を機に家庭との両立を目指し、63年にフリーに。だが、 "五社協定の壁" にぶつかり、決まっていた仕事が次々となくなった。一時は女優をやめることも考えたが「母や主人がいてくれたから」と家族の支えで乗り越えた。その後、テレビドラマや舞台に新境地を開き、36歳で出産した後は舞台に専念した。

 舞台では「その日のお客さんの心にいかに残せるか。体調が悪くても言い訳にはできません」。映像と違い、演技は形に残らない。一瞬一瞬が勝負だという。言葉を明確に伝え、言葉から言葉をつなぐ「間」を山本さんは大切にする。自らを律し、食事やストレッチなど日々の積み重ねに気を配ってきた。「時間があれば歩いたり、お風呂場で発声をしたり」と笑う山本さん。「こうありたいと願えば、努力もする。難しいことはしなくていいんです」と定年世代にメッセージも。

 舞台生活は40年を超え、公演回数も優に1万回を数えるほど。「1回も公演を休んでいないのが自慢です」とさらりと話すが、最近はひざを痛めて舞台に上がっていないという。

"再生の詩"とともに
 そんな折、懇意にする酒井政利プロデューサーから雨情の詩の世界を語る公演に誘われた。「十五夜お月さん」など昔から歌い、耳になじんだ童謡の数々は「自分に近しいものを感じました」。

 山本さんにとって初めてとなる「語り」での舞台。扮装(ふんそう)も、動く芝居もない。自らの悲しみやかっとうを抱えながら名作を生んだ言霊の詩人・雨情。彼にかかわる3人の女性を語りとセリフで浮き彫りにし、「名作の裏側にある雨情の痛切な思いやドラマを語るのです」。突然の父の死によって雨情の運命が大きく変わっていく場面では、山本さんは間合いと声のトーンを変えることで静かに重く表現していく。そこに歌手のすがはらやすのりさんの歌が重なる。「語りと歌でつづる」公演は「見る人の胸によけい染みこむようです」。

 再演が決まり、山本さんは今この公演をやる意味をかみ締める。「(雨情の孫の)不二子さんは "真心を養う大切さ" を次の時代に残したいと話していました。雨情は特に弱者に対する優しさや慈しみを歌っています」と。


 山本さんの好きな雨情の歌の中に「船頭小唄」がある。《おれは河原の枯れすすき》と続く詩は嘆きの詩と理解されることもあるが、「人間の悲しみは小さなもの。自然の大地にはだしで立ち、苦しみを乗り越えていく再生の詩なんですね」とほほ笑む。この詩以降、雨情は自らを再生し「赤い靴」や「しゃぼん玉」など名作を生み出したという。"再生の詩"と出合った山本さんもしっかりと明日を見つめている。

 「女優にとっては再演することが大事。作品のテーマや役に、より深く入っていける。何百回とやっていて初めて気づくこともあるんです」。静かに丁寧に人生を積み重ねてきた山本さん。その声は深く、しっとりと響いてくる。


  「日本の心、雨情の心 〜すがはらやすのりが歌い、特別出演山本富士子が語る〜」
日時 : 6月15日(金)午後2時半〜午後6時半
料金 : 全席指定9000円
場所 : 草月ホール
アクセス : 地下鉄青山一丁目駅徒歩5分
申し込み : (TEL)03-3763-6967

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