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  横浜・川崎版 令和4年1月号  
役の心を伝えたい  女優・吉行和子さん

東京・市ケ谷に生まれ育ち、そして現在も住んでいる吉行和子さん。途中、20代初めに家を出て四谷などに転々と移り住んだが、40代で再び市ケ谷に戻ったという。「何度も引っ越したいと思ったんですが、やっぱり引っ越せない」。交通の便がよく、散歩しやすい住環境というのは気に入っているが、自宅から満月が見えないことが不満。長年俳句を作り続けている吉行さんは、「友人が『満月よ』と知らせてくれても、どこを向いてもビルばかりで。大きなお月様が見たいですね」
映画「誰かの花」で、「家族を支える母」演じる
 作家の父・吉行エイスケや兄・淳之介、妹・理恵、そして母・あぐりはドラマにもなった美容師—、という多彩な一家に生まれた女優の吉行和子さん(86)。29日から全国で順次公開される映画「誰かの花」では、認知症が進行する夫を世話し、中年になる独身の息子を案じる老女役で出演。「何があっても家族を支える腹のすわった母の心を伝えよう」と演じた。初舞台以来、“女優人生”は65年にも及ぶが、今も「役に扮(ふん)して過ごすことが一番楽しい」と吉行さん。「この年になっても、出演の機会をいただけて大変幸せです」と話す。

  「誰かの花」は長編映画2作目という若手の奥田裕介監督が、自らの経験から着想を得て脚本を執筆し、それを基に映像化。昨年開館30周年を迎えたミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」(横浜市)の企画で製作された。横浜市内の団地を舞台に、その1室に住む老夫婦と息子の家族愛を描いている。

 野村忠義とマチの老夫婦には2人の息子がいたが、長男は数年前、事故で亡くなり、次男・孝秋(たかあき)は家を出て一人で暮らしている。そんなある日、団地のベランダから植木鉢が落ち、下を歩いていた団地の住民を直撃、救急車やパトカーが駆け付けて大騒ぎになる。

 ちょうど団地を訪ねていた孝秋は、認知症が進む父が部屋の中にいるのを見てほっとするが、ベランダの窓が開き、忠義の手袋に土が付いているのに気づく…。

 「どこの家族にも起こる問題を扱っています。だからこそ身近に感じました」と話す吉行さんは、長男を事故で亡くし心に傷を負っているのに、明るく元気に生きようと努力してきた老夫婦の姿に共感。「マチは普通の主婦で、彼女には何のドラマもないけれど、夫や息子のことを敏感に感じ取りながら生きている人だろうな、と思います」。ほのめかすシーンが多い中、吉行さんが「一番難しかった」と言うのは、夫がどれほど心に重いものを抱えているかと息子に話す場面だ。新人のころ、所属していた劇団の大先輩、宇野重吉から教わったように「(見ている人に、役の心が)伝わるよう言わないといけない」と思った。

「代役」で初舞台
 「マチには、表には出さない強さがある」と話す吉行さん。そんなマチとは「全く違うタイプの女性だった」と言うのは母・あぐり。明治、大正、昭和、平成を生き107歳で亡くなった母は、NHK連続テレビ小説「あぐり」(1997年)のモデルとして知られる美容師の草分け的存在。「戦争や大震災などいろんなことがあっても、常に前に進もうという強さがありました」

 エイスケとあぐりの長女として生まれた吉行さん。11歳上の兄・淳之介、4歳下の妹・理恵という芥川賞作家のきょうだいの中で一人、女優の道を歩んだ。しかし、子どものころ女優になるとは夢にも思わなかったという。

 吉行さんは2歳から52歳までぜんそくでずっと苦しんできた。半世紀もの間続いた持病は「鍼(はり)治療が効いてようやく治った」と言うが、小さいころは持病のため学校をよく休み、自宅で一人過ごすことも多かった。

 そんな吉行さんが演劇の世界を初めて知ったのが高校1年のとき。劇団民藝の「冒した者」(三好十郎・作)を見て、感激。「話の筋はよく分かりませんでしたが『こういう世界があるんだ。この劇団に入りたい』という気持ちでいっぱいになりました」。自分が舞台で演じることは全く考えなかったが、子どものころから手先が器用で裁縫や編み物が得意だった吉行さんは劇団の中で衣装や舞台装置をつくったりする仕事を想像していた。

 高校3年になって民藝付属水品演劇研究所一期生募集を新聞で知り、受験。見事、合格する。入所後、21歳で初舞台のチャンスが意外なところからやってきた。劇団で「アンネの日記」を上演することになり、主役のアンネ・フランク役の少女を全国から公募。ところが、上演開始後ほどなく主役の少女が風邪で声が出なくなり、吉行さんにピンチヒッターのお鉢が回ってきた。「思いがけない初舞台になっちゃった」と言う吉行さんだったが、東京に続く地方公演も途中、ぜんそくの発作で危ぶむ周囲の声にかえって闘志が湧いて務め上げ、公演終了後、劇団員に昇格。「女優になる」という決意は公演中に固まった。

自らフリーに
 その民藝を「フリーになってやりたいことをやろう」と33歳で退団。唐十郎作、鈴木忠志演出による早稲田小劇場「少女仮面」などに出演し、74年の「蜜の味」では紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。「この頃が一番楽しかったですね。お客さんが客席で見ている生の舞台って楽しいなって思いました」。それからも、一人芝居「MITSUKO—ミツコ 世紀末の伯爵夫人」を13年間続けるなど、主に舞台で活躍。舞台の傍ら出演した大島渚監督の映画「愛の亡霊」(78年)では日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞している。情熱を注いだ舞台も「アプサンス〜ある不在〜」を最後に74歳で引退。舞台を退く決心をしたのは「だんだん年を取って、周りに心配されながら舞台をやるのは嫌だな、と思ったから。ここらへんが潮時と感じていました」。活動拠点を映画へと移したものの、舞台をやめてからのことは白紙だった。しかし、「偶然のように話があって、次々と映画に出ることになったんです」。

 特に大きな出会いだったのが山田洋次監督の「東京家族」(2013年)への出演。「女優人生の後半で山田監督に巡り会えた」と話す吉行さんは同作で2度目の日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。「燦燦—さんさん—」(外山文治監督、13年)など、若手監督の作品にも積極的に出演。

 最近も、「雪子さんの足音」(19年)で下宿人に過剰な援助をする老女を演じるなど、映画出演が続いている吉行さん。そして今回、「誰かの花」で母の役を演じた。「女優というのは自分から『やりたい』と言ってもしようがなくて、どなたかが見ていて『やりませんか?』と言ってくれる以外ないんですよね。私はずっと『必ず誰かが見つけてくれるだろう』と思いながら、ここまできたという感じです」。自らの女優人生について「文句なし」と話す。


©横浜シネマ・ジャック&ベティ
30周年企画映画製作委員会
「誰かの花」 日本映画
 監督・脚本:奥田裕介、プロデューサー:飯塚冬酒、出演:カトウシンスケ、吉行和子、高橋長英、和田光沙、村上穂乃佳、篠原篤、太田琉星ほか。115分。

 29日(土)から、シネマ・ジャック&ベティ(Tel.045・243・9800)ほかで全国順次公開。

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