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「“バツイチ”だった独身の11年間、時々料理をしていました」と言う中村梅雀さん。バランスの良い食事作りを研究し、料理をするのが好きに。「得意料理はパスタとスープ。かみさんは和食系が得意なので、2人で時々、創作料理を作っています」 |
主演映画「山中静夫氏の尊厳死」でがん患者役
誰もが逃れることのできない「死」。自分の死期が分かったとき、人はどう行動するのか—。14日に公開される映画「山中静夫氏の尊厳死」は末期がんの患者が自らの意思で最期のときまで生き抜く姿を描いている。同作で山中静夫を演じた俳優の中村梅雀さん(64)は、「撮影中は母の危篤が続いていて、いつ(病院から)呼び出されるか分からない状況でした。母と静夫が死んでいくさまが重なり、ずっと死について考えていました」と話す。50歳で再婚し、4歳の娘がいる梅雀さんにとって「人生はこれから」だが、「いつ最期を迎えるかは誰にも分からない。日々やりたいことを思う存分にやり続けていきたい」と語る。
原作は、「阿弥陀堂だより」(2002年映画化)などで知られる芥川賞作家、南木佳士(なぎ・けいし)の同名小説。南木が医師としての経験をもとに臨床現場を描いた作品だ。
婿養子の山中静夫は静岡で家業の雑貨店を手伝いながら郵便配達をし、気の強い嫁に逆らわずに息子や娘を育ててきた。そして郵便局の定年を迎え、「第2の人生を」と思っていた矢先、静岡の病院で肺腺がんが見つかり、腰骨と肝臓へも転移していることが分かる。死期を悟った静夫は抗がん剤治療を拒否し、家族が反対するにもかかわらず、生まれ育った信州の病院に転院して“あること”をやり遂げようとする…。
「母危篤」…思索深める
梅雀さんは「(養子で周囲に気を使いながら生きてきた)静夫が一番求めていたのは自分らしい自由。末期の肺腺がんが見つかったことでやっと自分の気持ちを解放し、残りの時間で自分のやっておきたいことをやろうと思うわけです」と、静夫の心境を思いやる。
撮影は長野県佐久市で2018年10月から行われた。ロケ地近くに千曲川が流れ、田んぼが広がる。静夫が入院した病院の病室(実際は市役所の会議室)からは大きな浅間山がきれいに見えた。
ロケ地に近い小諸市にある明治の文豪・島崎藤村ゆかりの温泉旅館「中棚荘」に宿泊し、役作りに励んでいた梅雀さん。千曲川のせせらぎや鳥、牛の鳴き声、源泉かけ流しの音に囲まれながら、時々頭の中をレクイエムが流れていたと明かす。「山中静夫とはどういう人間かと箇条書きにし、毎朝それを読んで静夫の心境に入っていくように努めました」。ターミナルケア(終末医療)を受けていた母(昨年3月に死去)が危篤という状況の中で、母や自分も含めて「どうやって人間は死にたいのか」と考え続けたという。
撮影入り後、減量
また、撮影に入ってから末期のがん患者に見えるよう体重を6キロ落とした。静夫に寄り添いながら、その思いを遂げさせようと最大限のサポートをする医師役の津田寛治が痩せているため、患者役の梅雀さんも痩せたように見せる必要があった。旅館の料理長の協力によるバランスの良い料理を毎朝食べ、残りを昼に、そして夜は食べない生活だったという。
「劇団前進座」創設者のひとり三世中村翫右衛門(かんえもん)を祖父に、同劇団元代表の四世中村梅之助を父に持つ梅雀さん。9歳のとき、「勧進帳」で初舞台を踏み、24歳で前進座に入団し曽祖父の名跡、中村梅雀を二代目として襲名。前進座では「煙が目にしみる」(91)や「大石内蔵助 おれの足音」(00)などの舞台で評判をとり、その後、51歳で活動の場を広げるために同劇団を退団。同劇団在籍中から大河ドラマや映画に数多く出演し柔軟な演技には定評があったが、退団後はテレビの時代劇やサスペンス、ミステリー、そして舞台のほかナレーターにと、その“演技”にますます磨きをかけている。
ベーシストの顔も
そんな梅雀さんの俳優以外の顔がジャズベーシストとしての活動だ。「5歳から日本舞踊や長唄を習い、6歳から三味線も弾いてましたが、それよりも早く、最も影響を受けたのは西洋音楽でしたね」
今でも「音楽がないと生きていけない」というほど、毎日の生活に音楽は欠かせない。クラシックのピアニストだった母が弾く「しっかりした低音」が特徴のピアノを幼いころから聞き、そのためか子どものころからコントラバスなどのベースの音が大好きだった。12歳で初めて購入した楽器もエレクトリック・ベースギター。好きな音楽プレーヤーには、ジャズベーシストのジャコ・パストリアスを挙げる。「エレクトリック・ベースという楽器の概念を根底からひっくり返した人」と絶賛する。音楽を続けてきて夢だったCD製作も、08年に自作9曲を含む音楽CD「ブライト・フォーチュン」を出し、実現した。
俳優として、またコンサートでジャズベーシストとして活動をしている梅雀さん。映画の山中静夫とほぼ同年齢だが、「私の場合はまだ、これから。80歳までは絶対に元気でいなければなりません」。50歳で再婚し、60歳になる直前に子どもが生まれた。4歳の娘が将来20歳になり、一緒にライブ演奏するのが夢だという。「そのためにもこれから頑張って稼がなくちゃ」と笑い、俳優として「初めての役にも挑戦し、より高度な演技を目指していきたい」とさらなる高みを目指す。 |
©2019映画「山中静夫氏の尊厳死」製作委員会 |
「山中静夫氏の尊厳死」 日本映画
監督・脚本:村橋明郎、出演:中村梅雀、津田寛治、石丸謙二郎、浅田美代子、高畑淳子ほか。107分。日本映画。
14日(金)からシネスイッチ銀座(Tel.03・3561・0707)ほかで全国上映。 |
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