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若かりしころカントリー・ミュージックに傾倒し、一時期アメリカに滞在した折には、そのルーツを求める旅をしたこともあると眞木さん。「当日ご一緒する『石田新太郎とシティライツ』のリーダー・石田さんは僕の大学時代の先輩。もともとは石田先輩のバンドに入りたかったのですが、断られて仕方なくほかの大学の連中とフォークバンドをやったのです。もし断られていなければ、今も先輩の後ろでカントリーを歌っていたかもしれませんね(笑)」 |
8日に“カントリーの祭典”に出演
フォークソング黎明(れいめい)期の大ヒット「バラが咲いた」(1966年)に代表される歌手活動のほか、楽曲の提供や俳優としても活躍するマイク眞木さん(74)。芸能活動の傍らアウトドアやモータースポーツなどの趣味も謳歌(おうか)し、生涯通して青春を生きる “人生の達人”としても注目を集めている。そんな眞木さんが、8日に開催されるカントリー・ミュージックの祭典「ジ・オープリー」に初出演する。「高校時代に傾倒したカントリー・ミュージックは自分の音楽活動の原点の一つ。歌にしろ趣味にしろ自分が全力で楽しみ、それを見た周りの人に喜んでもらえていることで今の自分があります。この流れのままずっといきたいですね」
「ジ・オープリー」は、アメリカで放送されている“世界最長寿”の「カントリー&ウエスタン」公開ラジオ番組の「グランド・オール・オープリー」にあやかったカントリー・ミュージックの祭典。7回目の今回も大野義夫、石田新太郎とシティライツなど、今も色あせない往年のカントリーのスターらが出演。シニア世代が青春時代にタイムスリップできるステージだ。「そうそうたるメンバーの中、自分は“パシリ”です(笑)。当日は2曲のみの予定ですが、その短い時間でお客さんにどうやって喜んでもらえるか考え中です」
眞木さんは1944年、東京・赤坂で舞台美術家、眞木小太郎の長男として生まれる。父は明治生まれだが、登山やスキー、それに楽器演奏なども楽しむ粋な人物。アウトドア趣味を楽しみ、もの作りに励んでいた父親の背中を見ていた眞木さんは、趣味嗜好(しこう)に関しても大きな影響を受けたと語る。「小学校までは木工細工、中学生からはプラモデルに夢中になりました。今も好きですよ」
もの作り好きが高じて、テレビ局で特撮スタッフのアルバイトも経験。映画「ゴジラ」(54年)に感銘を受け、「一時、特撮の世界に進むことも考えていた」と言う。後年、特撮番組「救急戦隊ゴーゴーファイブ」(99年〜00年、テレビ朝日系)に出演、ヒーローたちの父親役を好演した折には、「時間があれば別のスタジオものぞかせていただき、特撮の裏方さんたちの仕事を懐かしく拝見させていただきました」とニコリ。
歌の原点は讃美歌
眞木さんは自身の音楽の原点は宗教音楽だと語る。幼少時に参加していたボーイスカウトの影響で教会に通い数々の讃美歌を聴いていた眞木さん。後年、米国のカントリー歌手たちがそれら讃美歌を歌っているのを聞き、カントリー・ミュージックに親近感を覚え、高校でバンドを結成したという。大学時代も音楽活動は続けていたが、ひょんなことから人生の転機が訪れる。
アルバイト感覚で受けた新曲デモテープ(制作途上の音源)のレコーディングだったが、後日、「君の歌声のままレコードを発売するから」とのレコード会社からの通知。それが「バラが咲いた」だった。レコード30万枚以上を売り上げ、大ブームを巻き起こしたが、しかし本人は冷めていた。眞木さんにとっては特撮の仕事も歌手の仕事も人生の数ある選択肢の中の一つ。それに「こんなブーム、1年もすれば皆忘れている」。事実、その後、眞木さんはブームに背を向けるように数年間渡米。だが帰国後、歌唱の仕事が舞い込み「バラが咲いた」を歌うと会場全員が声を合わせ歌うなど大興奮に包まれる。この情景に眞木さんは、「僕は生涯歌っていくべきなんだろう」と、歌に背中を押される形で歌手としての一本立ちを決意した。
以後、70年代のCMで話題になった「気楽にいこう」や、今もボーイスカウトで愛唱される「キャンプだホイ」の作詞・作曲などを手掛けるが、活躍は歌の世界だけでは収まらない。キャンプや釣り、サーフィンなどのアウトドアやモータースポーツなどの趣味も存分に楽しみ、その姿が注目を浴びる。「自分は今も昔も大好きなことだけして生きてきました。頭の中は17歳で止まっているんです(笑)」
90年代前半、「勢いで」家族とともにハワイへ移住した後、97年にドラマ「ビーチボーイズ」(フジテレビ系)で、海を愛するペンションオーナー役のオファーを機に日本に帰国。眞木さんそのもののような“はまり役”を好演すると、いつまでも青春を謳歌する余裕ある生きざまに、多くの若者のリスペクトを集めた。だが、眞木さんは苦笑する。「実はその裏では結構大変なんですよ」
「手の届く範囲で」
眞木さんは大家族。3回の結婚を経験し、それぞれの伴侶との間で子宝に恵まれている。ドラマなどではドロドロの愛憎劇となりそうなシチュエーションだが、家族仲は眞木さんを中心に良好だ。「自分だってドロドロしたものを背負い込んだことはありますが、そんなの自分も相手も不幸になるだけ。楽しく生きた方がよいでしょう」
眞木さんは08年に大動脈瘤(りゅう)で病院に担ぎ込まれたこともあったが、現在は健康を回復。多い年には50回以上もライブに立ち、楽しんでいるという。人生を謳歌する秘けつを聞くと、「『あれも欲しい、これも欲しい』というような願望を糧に大成功する人もいますが、僕は欲が少ないんでしょうね。タキシードがなくてもTシャツでいいんです。自分の手の届く範囲で人生を楽しめばいいと思いますよ」。 |
昨年のステージの様子
©Japan Popular Music Association & Koji Ota |
♪ジ・オープリー〜甦るカントリー&ウエスタン〜2019
8日(金)午後6時、渋谷区文化総合センター大和田(JR渋谷駅徒歩5分)さくらホールで。
日本のカントリー・ミュージックの再興を目指し、故・小野ヤスシが提唱、2010年に幕を開け、いまや「カントリー・ミュージックの祭典」として定着してきたコンサート。
予定曲:「ジャンバラヤ」「ローズ・ガーデン」「ハイ・ヌーン」「マウンテン・デュー」ほか。
出演:大野義夫、ウイリー沖山、マイク眞木、斉藤任弘、高橋和也、高輪克彦、トニー中村、カントリーメイツ、石田新太郎とシティライツ、石田美也ほか。
全席指定4900円。日本ポピュラー音楽協会 Tel.03・3585・3903 |
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