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定年時代
 
  横浜・川崎版 平成28年8月号  
「生ある限り、役立ちたい」  女優・中尾ミエさん

「新しいことに出合うのは楽しい。わくわくしています」と話す中尾さん
音楽劇「マハゴニー市の興亡」に出演
 KAAT(カート)神奈川芸術劇場で音楽劇「マハゴニー市の興亡」に出演する中尾ミエさん(70)。拝金主義にまみれた架空の街「マハゴニー」をつくった“尋ね者”の1人を演じる。演出は白井晃。共演者も山本耕史、マルシア、古谷一行など豪華な顔ぶれだ。中尾さんは歌声も披露する。「生きているということは“生かされている”ということ。それならば誰かの役に立ち続けたい」と語る。

 1962年、レコード「可愛いベイビー」の大ヒットで瞬く間に売れっ子の仲間入りを果たした中尾さん。その後、伊東ゆかり、園まりと「三人娘」としてトリオを組み、一時代を築いた。

 「私は幸運なことに舞台も映画も早いうちから経験できて、それ以来テレビも含めて同時進行でやって来ましたが、やはり舞台は原点という気がします」と今回の舞台の出演を喜ぶ。2008年には介護をテーマにしたミュージカルで初プロデュースも行うなど、舞台への思いは強い。

 演出家・白井晃との仕事は初。「この仕事はほとんど毎日が初めてのことだらけ。でも新しいことに出合うのは楽しいからわくわくしています。人生ってまだまだ知らないことがたくさんあるでしょ?」と笑顔。

ナチスが禁じた問題作に挑む
 中尾さんが今回演じるのは荒野の真ん中に「マハゴニー」という楽園の街をつくる指名手配中の女性逃亡犯、ベグビック。酒やギャンブルを謳歌(おうか)する男たちから金を巻き上げようと考えたのだ。自由と歓楽を売りにして街は大いに繁栄するのだが…。

 同作が書かれたのは戦前のドイツ。その過激な内容のためにナチスは上演を禁止した。日本ではほとんど上演例がなく、今回は貴重な機会となる。

 「マハゴニー市の興亡」では、拝金主義の行方を追っている。私たちの生活に欠かせない、お金。なくても困るが、それがすべてとなるとおかしなことになるようだ。

 「確かにお金はすべてじゃない。けれど、大事なもの。大切なのは何に使うかですよね」と中尾さん。例えば芸能の仕事には、時代の風を取り入れることが必要。“今”のフエッセンスを取り入れられるヘアメークやスタイリストに仕事のサポートをお願いすること、これらは大切な出費だ。「自分にとって必要なものには割り切って使う、これも時には大切だと思います」

“ごま塩仲間とチャリティーも
 チャリティーなど“お金を介在する”社会福祉活動にも賛成の中尾さん。「お金をいただくということには責任も伴うので、まったくの無料よりもお互いにとって良いと思う」との答えに実感が伴っているのは、中尾さん自身も加藤タキら友人3人と「チームソルトンセサミ」という団体を立ち上げ、チャリティー活動を行っているから。このチーム名は、全員が白髪を染めない「ごま塩」頭の持ち主ゆえ。年齢による変化を隠さず、むしろ勲章として堂々と受け止めている女性陣で結成した。年に1度、チャリティーパーティーを開催し、東北地方に寄付している。

 「1人では大変だけど、何人かで集まればできることってありますよね。ソルトンセサミの活動はまさにその一例。元気なうちは仕事でもチャリティーでも役に立てることをしたいですね。皆さまも『定年』にこだわらず、いつまでも“あてにされる人”であってください」と話す。

 ただし何事も「無理は禁物」と付け加える。「自分の年齢を自覚することは大切です。この年になると余力を残しながら行動しないと倒れます(笑)。年齢に応じて生き方や考え方は変化しないと駄目ですね」

健康には人一倍留意水泳も継続
 年齢に関係なく必要なのは、「希望と目標」。そして目標を達成するために健康を維持すること。そのために今でも週に数回の水泳を欠かさない。

 「健康だけは自分で気を付けないと維持できないでしょ。なので体のメンテナンスにも お金は使いますね。要するにお金の使い方って、“自分がどういう人生を送りたいか”につながるもの。そんなことを頭の隅に置きながら、舞台をぜひ楽しんでください」

「マハゴニー市の興亡」
 9月6日(火)〜22日(木・祝)、KAAT神奈川芸術劇場ホール(みなとみらい線日本大通り駅徒歩5分)で。
 作:ベルトルト・ブレヒト、作曲:クルト・バイル、演出:白井晃、出演:山本耕史、マルシア、中尾ミエほか。
 S席8500円(65歳以上8000円)、A席7500円ほか。申し込みは Tel.0570・015・415

「『定年時代』を見た」と言えば全席1000円引き(9月6日、7日は除く)。

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