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  横浜・川崎版 平成27年9月号  
県民ホールのパイプオルガンで無料コンサート  オルガニスト・和田純子さん

日本聖公会神田キリスト教会の主任オルガニストとしても活躍する和田さん。軽井沢には自身が主催する音楽ホールもある
「オルガン1つ1つと対話」
 ことし開館40年を迎える神奈川県民ホール。県民ホールの顔といえば、開館と同時に導入されたドイツ製のパイプオルガンだ。同ホールでは毎月パイプオルガンの無料コンサートを開催している。9月のオルガニストは、日本聖公会神田キリスト教会の主任オルガニストとしても活躍する和田純子さん(54)。和田さんはウィーン国立音楽大学修士課程を満場一致の最優秀成績で修了。国内外の著名な教会やホールの専属オルガニストを務めた経歴を持つ。

 「パイプオルガンというのは一つ一つ個性があって、一つとして同じものがないのです。なので、いつも個々のパイプオルガンと、どういう曲が合うのか“対話”してから曲を選びます」と話す和田さん。弾き手に柔軟性が求められる楽器なのだという。

 県民ホールのドイツ・クライス社製のパイプオルガンは優しく、力強い音を出す。やはりドイツの曲が合うようだ。「25日のコンサートでは、バッハや、バッハの誕生以前にハンブルクで活躍したベックマンの作品から選曲します」と和田さん。

紀元前から存在中世の欧州で発展
 オルガンの歴史は長く、紀元前ですでにエジプトでは水(水圧)オルガンが存在していたといわれている。12、13世紀あたりからヨーロッパの教会で使われ始め15〜16世紀ごろに飛躍的に発展し、現在の形に完成された。

 そして17世紀の北ドイツではハンザ同盟によって経済的に発展し、各教会に質の高いオルガンが設置された。またルター派が宗教音楽に寛容な姿勢を取っていたなどの好条件が重なり、オルガン音楽が盛んとなる。

 ベックマンは、北ドイツ楽派が最盛期を迎えたころに活躍した巨匠の1人。今でこそ歴史の中に埋もれているが、彼ら北ドイツ楽派の活躍は、後にバッハに継承されている。とにかく、偉大な音楽家であったことは間違いない。

短大卒業後、音楽の道へ
 和田さんとオルガンとの出合いは決して早くはない。通っていたミッション系の短大でオルガンに魅せられた和田さんは、その後、短大卒業後に上野学園大学のオルガン専攻に入り直す。「現代のようにどこの音楽ホールにもパイプオルガンがある時代ではなくて、オルガン科の生徒も学年で私1人だけでした」と笑う。

 その後、オーストリアのウィーンに留学。世界中から集まる多くのオルガニストの卵とともに腕を磨き、国家資格も取得した。

 「ウィーンは緑が多く、文化的な街です。ウィーンで流れる時間と東京で流れる時間は、同じ長さのはずなのに感じられ方が違う。日本だとあっという間だけど、むこうはゆったりしている。不思議です」と懐かしむ。

 ウィーンでの経験が忘れられず、いつかは東京とは別の休息地を得たいと思っていた和田さんは、8年前、長野県・軽井沢に別荘兼オルガンホール「ヴィラ・セシリア」を建てた。イタリア・ルネサンス様式のパイプオルガンを設置し、定期的にコンサートを開催。国際的に著名な音響設計士に依頼して、まるでヨーロッパの教会のような残響を作り出すことに成功した。16世紀イタリア・ルネサンスオルガンの音色が味わえるのは、日本でもここだけだという。

 現在、和田さんは東京・神田キリスト教会の主任オルガニストでもあるため、東京—軽井沢間を週に1、2回行き来している。

 「音楽家は表に出ていくのが仕事ですが、その分、絶対に1人になる時間も必要です。ずっとわさわさしていると音に出てしまう。静かな時間がないとだめですね」

 心も体もたっぷり休息する時間があるからこそ、和田さんの奏でるパイプオルガンの音は深く、多くの人を魅了するのだろう。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 神田キリスト教会(地下鉄末広町駅徒歩2分)でも、毎月第3水曜の午後0時20分〜50分に無料のパイプオルガンコンサートを開催している。今月は16日で、和田さんが演奏する。

 問い合わせは Tel.03・3251・4981

オルガン・プロムナード・コンサート
 25日(金)午後0時20分〜0時50分、神奈川県民ホール(日本大通り駅徒歩6分)小ホールで。無料。
 問い合わせ Tel.045・633・3798

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