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「湖舟という名前は本名で、父親の故郷にある木崎湖から付けられました」と遠藤さん |
横浜髙島屋で個展
写真家・遠藤湖舟さん(60)の写真展「天空の美、地上の美。」〜見つめることで「美」は姿を現す〜 が、29日(水)から横浜髙島屋で開催される。遠藤さんのカメラが捉えたのは、水面の揺らぎや雨足の襲来など、“見ているようで見えていない”自然の美しさ。作品の大半が東京の自宅近くで撮影したもの。「“作品”を撮るためには、わくわくすること、感じることが大事。ありふれたものも見方を変えれば新しいものになります」と遠藤さんは話す。
長野県で生まれ育った遠藤さん。中学生のころから天体撮影を行い、大学を卒業後は大手精密機器メーカーに研究職として就職。しかし会社員生活には早々に見切りをつけ、以後、川合玉堂の画集の撮影や宝石メーカーの資料画像のデータ管理など、撮影やデザインに関わる仕事を数多く手掛けてきた。
Yuragi-0701112626 ©遠藤湖舟 |
転機は2004年。千葉県で撮影したブラッドフィールド彗星(すいせい)をブログに載せたところ、海外の著名な天文雑誌やNASA関連のホームページに掲載される快挙を達成。その2年後、周囲の後押しもあり、50歳を過ぎて初の個展を開催する。本人いわく「大器晩成(笑)」と通常よりは遅いデビューとなったが、代表作となる「ゆらぎ」シリーズで注目度が加速。今回も、本来、新人作家はあまり取り上げない髙島屋としては異例の個展開催となった。
代表作「ゆらぎ」は、海や川、湖の水面に映る周囲の景色が、光と風によって“揺らいだ”一瞬を撮影したもの。街の外れのありふれた川も、遠藤さんにかかれば幻想的で神秘的な作品になる。
「自然は撮るたびに発見があります」
“見るだけでなく感じること”
「水面に人工的な物が写っていても、波や風で変換されると、また違う命を持ってくる。そこが面白い。写真を撮る時は、この“わくわくする気持ち”がとても大事です」。わくわくすることで、自分だけの表現になるからだ。
また、対象物を「見ているだけでは駄目」と言い切る。「感じないと。風の息や強弱、輝き、こういったことを体で感じると深い対象の何かをレンズに捉えることができます」と、魅力ある写真を撮る秘けつを話す。
プリント方法にもこだわりがある。写真展では、大型プリント、びょうぶなどのほか、特別な手法でアクリルボードに印刷したものを出展。「アクリルにプリントすると、彩度が高くなり、紙よりも色がより鮮明に出てくるんです」。この印刷方法で個展を開催するのは世界的にもまだ珍しいという。
新しいことに挑戦することをいとわない遠藤さんは、ツイッターやブログも積極的に活用している。きっかけは、東日本大震災だった。
「それまでは、自分はアウトサイダーなままでいいと思っていたところがありました。でも震災をきっかけに、気付いたことをそのままにしておくわけにはいかない、情報を発信しよう、と思うように。また、ボランティアで多くの人とつながりを持って活動するようになると、次第に人に対してオープンになっていきました」。その時に培った人のつながりで展覧会の話が決まるなど、新たな道も開けた。「かたくなでなく、心を開くことは大事だと実感しています」
今回、横浜での展示用に、特別に撮り下ろされた新作の「ゆらぎ」も出品される。身近に潜む自然の美しさを、再発見しに行こう。 |
昇る金星 ©遠藤湖舟 |
遠藤湖舟 写真展
「天空の美、地上の美。」 〜見つめることで「美」は姿を現す〜
29日〜8月10日、横浜髙島屋
星々から身近な美を見つめ撮影した写真約130点を展示。すでに東京、京都、大阪で5万人以上の入場者を記録。一般800円。問い合わせは Tel.045・311・5111 |
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