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高校教師経て再びステージへ ザ・タイガースのドラム・瞳みのるさん |
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グループ解散後、1年の猛勉強を経て慶應義塾大学文学部に入学した瞳さん。「タイガース時代の忙しさに比べたらそんなに大変ではなかった。とはいえ、虚仮(こけ)の一念(一年)でした」と、得意の駄じゃれを披露 |
グループ・サウンズの一つとして今も日本の音楽史に名を残す「ザ・タイガース」が、昨年、解散から42年を経て帰って来た。これまでもたびたび再結成はあったが常に誰かしら欠員がおり、完全なるオリジナルメンバー復活は今回が初。その“万年欠員”の1人が、「ピー」の愛称で当時、ボーカルの沢田研二と人気を2分していたドラムの瞳みのるさん(67)だ。瞳さんはグループ解散後、芸能界とは縁を切っていたが、2010年に30余年勤めた慶應義塾高校を退職し、音楽の世界に戻ってきた。最近ではグループ最大のヒット作のルーツを自らの手で探った記録をもとに「ザ・タイガース 花の首飾り物語」(小学館)を出版。9月には関内ホールでコンサートも開催する。「さまざまな経験から、本当の誠意はどこかで通じることを実感した」と話す。
1968年3月に発売されるやいなや大ヒットとなった「花の首飾り」。沢田研二に代わってボーカルを務めた加橋かつみの透明感のある高音を覚えている方も多いのではないだろうか。しかし、この曲の作詞者は公募の中から選ばれたということ以外、詳しいことはほとんど知られていない。
「そのことがずっと気になっていました」と瞳さん。なぜなら「花の首飾り」はザ・タイガースのヒット作の中でも、瞳さんの一番のお気に入りソングだったからだ。
そこで教職を退いた後、数年にわたって作詞者のこと、詩の背景などを丹念に調べあげた。
「ザ・タイガース 花の首飾り物語」(小学館・1500円+税) |
ヒット曲のルーツ探った本を出版
「花の首飾り」作者探索の旅が最終的にどのような結果に行きついたかは、本を読んでのお楽しみ。しかし、瞳さんがこの本で伝えたかったのは、作詞者の素性ではない。「誠意を尽くせば必ず伝わるということ」だと話す。そしてまた作詞者を代表する同世代のファンに対し、瞳さんが芸能人、一般人という垣根を越えていたわりの気持ちを抱くところに本作の価値がある。
インタビュー中、瞳さんは1冊の本をかばんから取りだした。黄ばんであちこちが破れたこの本は、教員時代に使っていた漢文の教科書だという。ページをめくりながら、すらすらと「至誠而不動者未之有也(至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなり)」とそらんじてみせた。
「これは孟子の言葉で、『誠を尽くして心を動かさなかった人間はこれまでにいなかった』という意味。僕が一番好きな言葉です。僕がザ・タイガースに戻ろうと思ったのも、沢田の誠意が通じたから。沢田が僕に向けて『Long Good−by』という曲を作ってアプローチしてくれたことがうれしかった。67歳の今になって、誠意は伝わることを実感しています」と熱を込めて話す。
秋にはソロライブも
昨年開催されたザ・タイガースのコンサートツアーには、これまた長らくグループと距離のあった加橋かつみが参加し、完全にオリジナルメンバーがそろった。
ここに至るまでもかなりの紆余(うよ)曲折があったそうだが、「最終的に沢田の執念というか(笑)、誠意、熱意がかつみに通じて」(瞳さん)、再結成が実現となり、ツアーは大成功のうちに終了。
「みんなで集まって演奏すると、言葉にできないプラスアルファが出るんです。技量的にどうこうではなくね。これがザ・タイガースなのだな、と。今回もそれを感じました」と笑顔。
2011年に沢田研二のバックバンドとして参加したツアーの時は岸部一徳、森本太郎と一緒の楽屋だったが、「今度はそれぞれの部屋があったのでちょっと寂しい思いをしましたね」とも。
「でも60を過ぎてこうやってまた集まれるのは本当にありがたいこと。基本的には京都時代の仲が良かったころと変わらないです。もう一回再結成するか? それは分からないな(笑)」とはぐらかしたが、きっとまた、と信じずにはいられない。
ザ・タイガース、こんなにも絶妙なバランスで成り立った魅力のあるグループは他にいないのだから。 |
「瞳みのるエンタテインメント2014 歌うぞ! 叩くぞ! 奏でるぞ!」
9月19日(金)午後6時半、横浜・関内ホール(地下鉄関内駅徒歩1分)で。
6000円。6月13日(金)から発売。KMミュージック Tel.045・201・9999 |
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