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京都での古民家暮らしが映画に ベニシア・スタンリー・スミスさん |
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「庭にいる時が一番幸せ」と話すベニシアさん(東京・文京区の旅館で) |
映画「ベニシアさんの四季の庭」公開
イギリス人でありながら、京都・大原の築100年以上の古民家に暮らすベニシア・スタンリー・スミスさん(62)。自宅の庭には、150種類以上のハーブやバラ、野菜などが育てられている。古いものを大切にし、自然の恵みを享受するベニシアさんの暮らしを追ったドキュメント映画「ベニシアさんの四季の庭」が14日(土)からシネスイッチ銀座で公開される。「庭にいる時がいちばん幸せ」と言うベニシアさん。しかしその笑顔の陰にはさまざまな困難があった。「まるで嵐みたいな日々の時も、庭の植物が慰めてくれました」と話す。
イギリスで貴族の家系に生まれ、“おとぎ話に出てくるようなお城”で育ったベニシアさん。しかし華やかだが閉鎖的な社交界になじめず、19歳で世界放浪の旅へ。インドを経て日本にたどり着く。1992年に山岳カメラマンの夫・梶山正さんと再婚。その後、豊かな自然の残る京都・大原の古民家での暮らしをスタートさせた。
「ここ(大原の家)はついのすみかになると思う。初めて来た時、暗くてぼろぼろの家なのにピンとくるものがありました」とベニシアさん。自宅には夢だったコテージガーデンも作った。
「コテージガーデンとは、田舎の農家にあるような庭のこと。野菜もハーブも花もぽんぽんぽんとデザインなしに一緒に植えられている、自由でアットホームな庭です。わたしが育ったお城の外には、お手伝いさんが作ったコテージガーデンがあったの。でも貴族は貴族としか話してはいけないと母から言われていて、そこに行けなかった。だからずっと憧れでした」
これまでに20回以上も引っ越しを経験しているというベニシアさんだが、どこに住んでも、必ず庭を造ってきた。映画では、四季を通じて庭の手入れを楽しみ、「庭にいる時がいちばん幸せ」と笑うベニシアさんが映っている。大原の“ご近所さん”とともに四季を楽しむ日々は、まばゆいばかりの光に包まれている。
幸せだった大原の暮らしに、ある日突然不運が襲う。次女のジュリーさんが1人息子を出産後、統合失調症を発症したのだ。また連鎖的にさまざまなもつれが生じ、積もり積もって、ついに正さんは家を出てしまう。「嵐みたいな日々だった」とベニシアさん。当時、10キロ以上も痩せてしまったという。
「嵐だから家からも出られない、どこへも行けない。ある日、『もう問題がありすぎてどうしたらいいか分からない、このまま死ぬんかな』と思った時があって。ふと庭に入ったら不思議な力を感じたんです」。庭の花が、ベニシアさんの苦しみを分かってくれたように感じたという。「『そこまで落ち込まないで、大丈夫』と励ましてくれた気がしたの。慰められました」
この一件から、「ステップ・バイ・ステップ、まさに一歩一歩、という感じ」(ベニシアさん)ではあったが、少しずつ状況に変化の兆しが見られるようになった。同時にベニシアさんの植物に対する気持ちも変わり、「植物と人間はコミュニケーションできる」と思うようになったという。ハーブの勉強のために読んだネイティブアメリカンの本にも同様のことが書いてあるのを見つけ、その思いはますます強くなった。
「ネイティブアメリカンはハーブを収穫する時ハーブの前に座って『切ってもいいですか』と聞くの。そして全部切らないで残す。薬を作る時は、この人のために作るのでお願いします、とお祈りする。これを知った時、すごいと思いました」と話す口調に熱が入るベニシアさん。
「でもわたしも以前はハーブをぱぱぱーっと切ってたけどね。植物にしてみたら、ギャーって感じよね(笑)」。そう言って笑う横顔は以前にも増して穏やかである。
何年にもわたる「嵐の日々」が過ぎた今、ベニシアさんが悟ったこと。それは、「人生は突然変わる」ということだった。
「ある日突然、全てが変わる。でもわたしたちはそれを受け入れるしかないの。そしてまた再生する。植物と同じだと思う」 波乱の中にあっても折れることなく、ひとつずつ試練を乗り越えてきたベニシアさん。映画には幸せを見つけるヒントがあちこちに隠されている。まるでコテージガーデンのように。 |
©ベニシア四季の庭製作委員会2013 |
「ベニシアさんの四季の庭」
監督:菅原和彦。98分。
14日(土)からシネスイッチ銀座(Tel.03・3561・0707)で上映。 |
ベニシアと仲間たち展 11日(水)〜24日(火)、松屋銀座(地下鉄銀座駅直結)8階イベントスクエアで。
ベニシアさんが実際に使っている身の回りの品々を展示。また自宅の庭も再現するなど、ベニシアさんの暮らしぶりを感じることができる。
一般1000円、映画の半券提示で200円割引。問い合わせは Tel.03・3567・1211 |
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