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「童謡を次の世代に伝えたい」と大庭さん |
「年齢は宝物。今が花盛りです」と笑顔で語る歌手・大庭照子さん(73)。1971年にNHKの歌番組「みんなのうた」で自身が歌った「小さな木(こ)の実」を大ヒットさせた人物だ。現在は、「日本が世界に誇る音楽文化“童謡”を次世代に継承したい」と、毎月横浜で歌の教室を開き、童謡の復興運動に尽力している。次回の開催は5日(金)に港南公会堂で。「童謡は単なる子どもの歌ではなく、人生の応援歌です」と熱く語る。
「年齢は宝物。70代に入ってそう思えるようになりました」と笑顔の大庭さん。
大庭さんが毎月、横浜・港南公会堂で開催している「花ざかり うたの教室」では、季節に合った童謡を大庭さんとともに歌う。今ではなかなか歌われなくなった懐かしい童謡を再び思い出し、次の世代に伝えていくためだ。「今の子どもたちは昔の童謡を知りません」と危ぶむ。
「童謡は単なる子どもの歌ではなくて、人生の歌です。AKB48もいいですが(笑)、まず童謡を教えてあげたい。でも若い人は忙しいので、それを団塊の世代の方に手伝っていただきたいのです」
実は、大庭さんは地元・熊本では歌手としてよく知られた顔だ。「DOYO組」という若い女性ユニットのプロデュースも手掛けている。また、アメリカ・ハワイではラジオで童謡の番組を企画、放送している。
大学時代を過ごした横浜に帰ってきたのは3年前。歌手としての原点に戻り、童謡復興運動に力を入れようと思ったのだという。
「大庭照子 童謡・唱歌をうたう Part 1」
収録曲は、七つの子、夕焼小焼、里の秋、月の砂漠、小さな木の実ほか。
(2000円・キングレコード) |
「1957年にフェリス女学院短期大学音楽科に入学しましたが、卒業はしてもなかなかデビューできませんでした。成功しなければ熊本に帰るに帰れない。そんな時NHKの歌番組『みんなのうた』を知って、すぐNHKに売り込みに行きました。そして幸運にも『小さな木の実』を歌うことができたのです」
「小さな木の実」のヒットを受けて、全国の小・中・高等学校をスクールコンサートで回った。「そのうちに『人間は共に生きている』ということを子ども達に伝えたいという使命感が強くなってきたのです。それには、童謡が一番だと思いました」と振り返る。
全国の高齢者施設を回って歌うことも多い大庭さん、「歌謡曲だと知らんぷりしていた人も、童謡だと一緒に歌ってくれる」と言う。
「日本人の団結力の根幹は、童謡が作り上げたものだと思います。子どもの時にきれいな日本語で生きていくうえで大切なこと、優しい世界を歌うことはとても大切な教育だと思います」と語る。
また、戦争のことも歌で語り継いでいくつもりだ。「私たちの親の世代は、あまりにも戦争がひどかったのであえて戦争の歌は歌いませんでしたが、『長崎の鐘』や『海行かば』などを歌い継ぐことで、平和の大切さを子どもたちに知ってほしい」と続ける。
30代でデビュー後、音楽事務所を開き、自身の演奏活動のほかにもシャンソンの祭典「パリ祭」の主宰もしてきた。しかし、「50代、60代の時はバブル時代の借金の返済に追われたり、親の介護など長い空白期間もありました」。それでも常に応援してくれる人がいて、支えられてきたという。
「年を重ねたことで、“苦労”は“試練”であったと受け止められるようになりましたし、感謝もできるように。今は社会のためになることをしたい。わたしの教室が童謡の復興運動の一端になれたらうれしいです」 |
歌の教室で指導する大庭さん |
花ざかり うたの教室
5日(金)午後2時、港南公会堂(地下鉄港南中央駅徒歩2分)で。一般900円。申し込み・問い合わせはNPO日本国際童謡館かながわ TEL.045・562・1950 |
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