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「気が付くとその役に成りきっていて、その役の頭で考えているんです。不思議です」と語る水谷さん |
主演作「HOME 愛しの座敷わらし」公開
築200年の古民家での暮らしを通して、ぎくしゃくしていた家族の仲に変化が起こる様子を書いた荻原浩の著作が、「HOME 愛しの座敷わらし」として映画化され、28日(土)から上映される。同作で水谷豊さん(59)は、転勤で東京から岩手の田舎町に引っ越す高橋家の父・晃一を演じている。「1人ではとても乗り越えられないことも、家族みんなで力を合わせると乗り越えられるのでは」と、演じ終わっての感想を話す。また「実際に家をまとめるのは奥さん」という本音も?
直木賞に一番近いといわれている注目の作家・荻原浩。彼が朝日新聞夕刊上で連載した「愛しの座敷わらし」を読んで、水谷さんはすぐに「これだ!」と確信した。
「本の中で起きる家族の出来事は誰もが経験したことだし、誰もが想像できること。長年製作したいと願っていたホームドラマにぴったりでした」
主人公で高橋家の大黒柱である晃一は食品メーカーに勤めるサラリーマン。東北に転勤が決まり、心機一転、大きな古民家を借りてみたが、田舎暮らしに不慣れな妻と娘からはブーイングの嵐。小学生の息子は古民家暮らしに乗り気だが体が弱く、同居する晃一の母は最近少し認知症の傾向が。晃一自身も、懸命に仕事に取り組んでいるが努力が空回りしており、家族はどこかちぐはぐだ。
実生活では女優・伊藤蘭さんとおしどり夫婦で知られている水谷さん。家族がうまく機能するこつについて、「僕が演じた役は一家の柱ではあるんだけど、結局家をまとめているのは奥さんなんだな、と思いました」と答える。
「あとは何か起きた時にみんなで向き合うこと。1人じゃとても乗り越えられないというショッキングな出来事も、奥さんの支えがあったり、家族みんなで力を合わせれば乗り越えられる、ということがありますよね」と、撮影を通して見えた考えを述べた。
映画化の話が進んでいた昨年の3月、東日本大震災が起きた。いったんは映画製作中止の話も出たが、ロケ地となった岩手県をはじめ東北地方からぜひ撮影をしてほしいという声が寄せられ、クランクインとなった。映画のタイトルにもなっている「座敷わらし」は、東北地方の民間伝承に登場する子どもの姿をした家神だ。
7月で60歳に“わくわく”
「ぼく自身は座敷わらしは見たことはないんですが、目に見えない不思議な世界を信じていますね。今回東北を舞台にした映画を製作できたのも、不思議なご縁だったのだと思っています」と水谷さん。映画を通して、「普段見過ごしがちな日常の中にもたくさんの幸せがあるということが見えてきます」と振り返る。
約1カ月にわたる岩手県でのロケ中、1度も東京に帰らなかったほど岩手にほれ込んだという。撮影隊は遠野、雫石、花巻と県内をはしごし、心に染みる山里の風景をカメラに収めた。
「東北には本当にすばらしい自然がたくさん残っています。映画ではそれも楽しんでほしいです。映画では震災には触れていないのですが、東北のことを思うきっかけになればうれしいですね」
7月に水谷さんは60歳を迎える。「とてもわくわくしています」と笑顔を見せる。
「若い時は早く40歳になりたかったんです。20代の時はエネルギーがあり余って、持て余していたので。実際に50歳近くになったら、それはテレビドラマの『相棒』が始まったころなんですが、落ちついて物事が見えるようになっている自分に気付いてうれしかったですね。だから、60歳になったらもっといろんなことが始まるぞ、今はその準備期間なんだ、と思い続けてきたんですよ」と胸の内を語る。
子役としてデビューして以来、出演作が途切れることはなかったが、心の中では「ほかにもっと自分に合った仕事があるのでは」と思い続けていた。
「『どこまでできるか分からないけれど、できるだけ長くこの仕事をやってみよう』と思ったのは38歳で娘が生まれた時なんです。仕事のやり方を意識して変えたつもりはないのですが、無意識のうちに変わったかもしれないですね」
落ち込まないのが 健康の秘訣
健康管理は特にしていないと言うが、強いて挙げるなら「あまり自分を責めないこと、落ち込まないこと」だという。
「この年になると、悩んでも解決しなかったり、後でそれほど悩むことじゃなかった、と分かることが多いですよね。だから悩みは短く、自分を責めるエネルギーは早く前に向ける。これが健康の秘訣(ひけつ)でしょうか。もっともぼくはあまり落ち込まないタイプなんですが(笑)」 |
(C)2012「HOME 愛しの座敷わらし」製作委員会 |
HOME 愛しの座敷わらし
監督:和泉聖治、出演:水谷豊、安田成美、草笛光子。109分。
28日(土)から横浜ブルク13(TEL.045・222・6222)ほかで上映。 |
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