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手ぶらで散歩をするのが最高の気分転換。岐阜出身なので山も好きです」と水口さん |
3月、県民ホールで公演
オーストリア・ウィーンに在住し、世界各国を飛びまわるテノール歌手の水口聡さん。ウィーン国立音楽大学を首席で卒業し、バリトン歌手としてデビューするも一大決心をしてテノールに変更。大成功を収めた異例の経歴の持ち主だ。その成功の秘訣ともいえる美声の秘密を書いた本「声の力で人生をもっとよくする!」(実務教育出版)も好評発売中だ。3月には「タンホイザー」役に挑戦する。
「歌っていると雑念が消えて無常の幸せを感じます。声は持って歩ける一生の財産です。楽しく歌って元気になりましょう」と話す水口さん。3月24日(土)には、神奈川県民ホールでワーグナーのオペラ「タンホイザー」で主役を務める。「こういった役を演じるには年季が必要です。10年前に一度お断りしたのですが、今なら歌えると思い、挑戦することにしました」と話す。
オペラ「タンホイザー」は、騎士タンホイザーが官能の愛を讃える歌を歌った罪の許しを得るために、ざんげの旅に出るというストーリー。
「オペラというと高尚なイメージを持つ方も多いですが、もともとは俗っぽいものですし、とても面白いですよ」と水口さん。
「今は会いたくなればインターネットでつながることもできるし、すぐに欲を満たすことができますが、それができなかった時代の葛藤や喜びが、『タンホイザー』の魅力だと思います」と解説。
水口さんは現在ウィーン在住。公演のたびに世界中を飛び回る。
「コントラバスなど大きな楽器を持ち運びする人に比べてぼくは手ぶらでいいから楽。そのかわり、病気になったらおしまい(笑)。だから体や喉の調整にはとても気を使います。常に旬のものを食べ、水をよく飲みます。デパートには人の少ない平日の午前にしか行かないですね」
「声の力で人生をもっとよくする!」
(実務教育出版・1470円) |
歌って心も体も元気に!
武蔵野音楽大学大学院を修了後、ウィーン国立音楽大学を首席で卒業し、バリトン歌手としてデビューした水口さん。その後、世界的にも珍しいことに、テノールへの転向に成功した。日本では1998年に、新国立劇場のこけら落とし公演「アイーダ」で一躍脚光を浴びる。サッカー日韓ワールドカップや、フィギュアスケートなど様々なスポーツイベントの国歌斉唱という重責も担ってきた。
ウィーンに留学時代、毎日劇場に通い、4時間並んでチケットを取った後に3時間立ったまま観劇することをほぼ6年間続けたという。
「下宿先は郊外にあったので、市街地の大学まで、片道3時間半の道のりを歌いながら歩いて通っていましたね。練習と節約を兼ねて」。ヨーロッパ中のコンテストで賞を勝ち取ってきた美声と豊かな表現力は、たゆまぬ努力から生まれたものなのだ。
しかし、輝かしい経歴に反して素顔の水口さんは難しい論議や気難しい演奏スタイル、音楽界に残る権威主義とは対極の場にいる。
「そういうのは音楽の本来のスタイルでないと思う。情熱はすべてステージで出せばいいのだから」と考えている。
まるでトンネルを指す光のようにどこまでもまっすぐに伸びる水口さんのテノール。その秘けつは、喉で生まれた声を、鼻腔(びこう)で共鳴させるテクニックにある。著書にもその方法を余すことなく書いた。発売から3年になるが、売れ行きは好調だ。
「声はタダ。持って歩ける一生の財産です。体の中でも声帯が一番寿命が長いそうですよ。この本に書いてあるテクニックはぼくが探り探り習得したもので、これまでどこにも載っていないと思います。上手に使って、ぜひ歌うことを楽しんでください」
ことしの夏には同ホールでプッチーニのオペラ「トゥーランドット」(演奏会形式)に出演することも決定。さらなる活躍に注目が集まる。 |
歌劇「タンホイザー」ドレスデン版 全3幕
3月24日(土)、25日(日)共に午後2時、神奈川県民ホール(みなとみらい線日本大通り駅徒歩6分)で。
指揮:沼尻竜典、演出:ミヒャエル・ハンペ。ドイツ語上演、日本語字幕付き。水口さんの出演は24日。25日のタンホイザー役は、福井敬。
SS席1万5000円〜D席3000円。問い合わせ・申し込みはチケットかながわ TEL.045・662・8866 |
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