|
|
“日本的な美を世界に打ち出す” 日本画家/手塚雄二さん |
|
|
|
平山郁夫さんの愛弟子だった手塚さん。「明るくて細かいことを言わない“大きな”人でした」(アトリエにて) |
芸大5浪の苦労人、風景画転向が転機
日本画家・手塚雄二さん(57)の展覧会「手塚雄二 一瞬と永遠のはざまで」が23日(土)から11月28日(日)まで、横浜のそごう美術館で開催される。どこかで見たことがあるような懐かしい風景を、誰もが分かるように、そしてドラマ性を感じられるように描くことを得意とする手塚さん。故・平山郁夫氏の愛弟子であったことでも知られている。「日本的な美って世界に類を見ない良いものだぞ、ということを強く打ち出していきたい。風のように見えないもの、雪の音のように聞こえないものを分かるように描く。それがぼくの目指している日本画です」と語る。
真っ暗な夜の海、浜辺に打ち寄せる波打ち際だけが白く光っている「海霧」。向こうが明るくなってきて今にも雨が上がりそうな希望が感じられる「雨明」—。画業30年、手塚さんは日本画家として、ゆるぎない地位を築きあげている。
意外なことに、風景画以前は人物画を描いていたという。
「若いころは絵は面白ければいい、と思っていて、鑑賞者のことは考えずに自分の描きたいものを描いていましたね。まさにエゴイズムです。でもある時、急に描けなくなりました」
それまで泉のごとくあふれ出てきたアイデアがまったくわかなくなった。落ち込み、筆を折ることも考えたが、ふと思い立って写生に出掛けた。何度も写生に通ううちに、「今までは変わったものを描こうと思っていたけれど、同じ風景でも見方を変えて描けばいいのかな」と思い、画風が変わった。それ以後、描くものすべてが世間から認められるようになった。
意外な点はもうひとつある。東京藝術大学入学に5年を費やしたことだ。
友禅の絵付け師である父を持つ手塚さんにとって、日本画家になりたいと思うのは自然な道だった。しかし年齢を重ねるうちにさすがの家族も大反対。働きながら勉強を続け、「これで本当に最後だ」と決めた年にようやく合格を果たした。大学と同大学院で平山郁夫氏に師事し、首席で卒業した。
「ブルックリンの雨」(C)Yuji Tezuka 2010 |
今回の展覧会には、30年以上にわたる画業の中から大作約40点が出展される。新作は3点。中でも昨年、個展開催を機に渡米したニューヨークで見たブルックリン橋を描いた「ブルックリンの雨」は興味深い。北斎を思わすような大胆な構図、モノトーンの色あいがドラマチックだ。
「日本画でアメリカの都市を描くわけだから、なにか強い日本的なものを持っていないといけない。それに雨というのはちょうどいかな、と思ったんです」と説明する。
見えぬもの、聞こえぬものを描く
手塚さんの絵を目の前にすると、描かれた世界に入りこんだような錯覚を受ける。
「ぼくの絵はドラマです。実際にはあり得ないものを、さもあり得るように描くんです。例えば風は目に見えない、雪の音は聞こえない、でもそれが伝わるように描くのが絵画だと思う。そして見てくださった方が『そうそう、分かる分かる』と言ってくださるやり取りが楽しくて、ぼくはずっと描き続けているんですよ」 |
手塚雄二 一瞬と永遠のはざまで
23日(土)〜11月28日(日)、そごう美術館(横浜駅東口)で。会期中無休。
23日、24日(日)、11月3日(水・祝)、21日(日)の午後2時から手塚氏によるギャラリートーク&サイン会も行う。一般1000円。問い合わせは同館TEL.045・465・5515 |
|
| |
|