|
|
よみがえる松竹映画黄金期 鎌倉文学館/山内静夫さん |
|
|
|
鎌倉市在住。絹代も鎌倉山に居をかまえていた。「街で時々会いましたよ」と山内さん |
|
|
|
田中絹代生誕100年
松竹(株)で小津安二郎監督作品のプロデューサーとして活躍した山内(やまのうち)静夫さん(84)。同社の取締役を経て、現在は鎌倉文学館館長を務める。「文学の香りのする鎌倉の文学館館長として気が抜けない」と、就任して5年、入場者数を伸ばしてきた。また、ことしの11月29日には松竹の看板女優だった田中絹代の生誕100年を迎える。これを記念し、21日(土)からは東京で主演作のリバイバル上映や「愛染かつら」などのDVD化も決定。「当時の映画からは使命感が感じられる」と山内さんは振り返る。
小津に“使命感”学ぶ
21日(土)〜29日(日)に東京・東劇では、「ニッポン・モダン1930〜もう一つの映画黄金期〜」と称して松竹作品を27本上映する。中でも、「愛染かつら」や、五所平之助による日本初のトーキー映画「マダムと女房」、市民コメディ「人生のお荷物」、溝口健二の「西鶴一代女」など田中絹代出演作8本が目玉だ。また京橋でも、12月27日(日)まで絹代の出演映画上映や展示イベントを開催中だ。
山内さんは言う。
「テレビの登場までの映画黄金期は、小津監督をはじめ、みんなが『どんな映画を作るべきか』という使命感を持っていました」
|
「愛染かつら」(C)1938松竹株式会社 |
|
|
田中絹代は女優の“横綱”
山内さんは、1948年に大船の松竹撮影所製作宣伝課に入社し、その後「早春」を皮切りに、小津安二郎監督の映画のプロデュースを多く手掛けた。田中絹代とは小津監督作「彼岸花」(58年)などで仕事を共にしている。
「役を離れれば普通の人。でもカメラの前では輝くし、どんな役でもできる。女優の横綱でした。どんな仕事でも『喜んでさせていただきます』とおっしゃってくださった。いい意味で女優のプライドを保っている人だった」と振り返る。
22日には、「愛染かつら」をはじめ初DVD化となる名作3本も発売。世界恐慌での不況や戦争など、暗かった戦前戦後の世の中に笑いや感動をもたらした絹代の笑顔は今なお輝きを放っている。
山内さんは5年前からは鎌倉文学館の館長に就任。展示の回数も増やし、集客数も伸ばしている。3年前からは、「魔女の宅急便」、「かいけつゾロリ」、「あらしのよるに」などを題材に、子ども向けの企画展を試みている。職員が魔女のとんがり帽子やキャラクターの衣装を作って貸し出したり、著者のサイン会も実施。文学という言葉から連想される固いイメージを覆し、いずれの企画も大成功を収めている。
鎌倉文学館で |
|
|
|
「ぼくたちが若いころ女優さんに憧れたように、サイン会で大好きな本の作者に会えた喜びを、きっと忘れないでいてくれるでしょう。鎌倉にはかつてたくさんの文士がいたのに、鎌倉文学館には地元の来館者が少なかった。親御さんも含めて、文学になじむきっかけになれは」
大人向けの展示の質も落としていない。12月13日(日)までは、特別展「鎌倉からの手紙 鎌倉への手紙」を開催中だ。夏目漱石や芥川龍之介、山内さんの父である作家・里見〓といった文士の手紙から小津安二郎まで、21人の文化人の手紙が出展されている。
かつての師匠・小津安二郎からは、「使命感を持って仕事に取り組む」という姿勢を学んだ。今の山内さんの使命は、「文士に愛された街・鎌倉の文化を伝えていくこと」、と自負している。
「テレビの時代になって、映画界が『面白ければ何でもいい』という考えに迷走した時もあったと思う。でも結局長続きしなかったですね。世の中の現象に追われて、本質を見失ってしまってはいけないのです」
企画展は400円。鎌倉文学館TEL0467・23・3911
|
第10回東京フィルメックス ニッポン・モダン1930〜もう一つの映画黄金期〜
問い合わせはTEL03-3560-6394
東京・京橋フィルムセンターの問い合わせはTEL03-5777-8600
DVDの問い合わせはTEL0120-135-335 |
|
| |
|