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趣味は読書。かばんには池波正太郎の本が入っていた。「これが終わったら、次はシバレン(柴田錬三郎)でも読もうかな」。書物も、落語に通じる世界が好みのようだ。 |
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2010年に六代目三遊亭円楽を襲名する落語家の三遊亭楽太郎さん(59)。27歳でテレビ番組「笑点」にメンバー入りした彼も、来年で還暦を迎える。しかし芸事の世界に定年はない。「現役でいられるうちがすべて。定年は人前に出なくなった時」と意気込む。クールを装いつつも、落語に対する思いは熱い。「長く現役でいるために心掛けているのは『高座百遍』。師匠に言われたように、『あいつでなきゃ』と言われる仕事をしたい」と全国を飛び回る。
還暦の来年、「円楽」襲名
ことし8月、横浜のにぎわい座で行われた「三遊亭楽太郎・風間杜夫二人会」のチケットはあっという間に完売した。当日、楽太郎さんが選んだ演目は「禁酒番屋」。舞台の上で酒を飲むしぐさをするたびに会場は熟練の技に息をのみ、手をたたいて喜んだ。
襲名も決まり、今まさに脂が乗り切っている。「現役でいる間がすべて」と言い切る。そのために、「高座百遍」を心掛けている。「壁に向かって100回しゃべってもだめなんです。日々高座にのぼって、お客さまの前で表現をするのが大切。こっちの方がいいかな、という再発見は糧になるしね」と話す。
「新しい円楽」の色出す
円楽の下に弟子入りして39年。師匠は、ああしろこうしろとうるさく言うことはなかったが、「忙しい、忙しいで終わってはだめだよ。あいつでなきゃ、と言われる仕事をやってごらん」と言われたことがあった。
「(多目的ホールに行くと)次もまたぜひ落語を、と主催者側に言ってもらえるように熱が入ります。呼んでもらうのがおれじゃなくても、落語であればいい。そうすれば、自分を育ててくれた落語に恩返しもできるし」と楽太郎さん。
「落語家はセールスマン」と自負している。実際、その手腕はかなりのもの。高座のインターネット配信やテレビ放送も、寄席に足を運んでもらうきっかけ作りに、と早くから始めた。2年前からは毎年秋に福岡市で「博多・天神落語まつり」を開催するなど、落語界の盛り上げに尽力している。天神落語まつりには、桂歌丸、林家木久扇、三遊亭好楽、三遊亭小遊三ら笑点のメンバー全員が出演し、三遊亭圓歌、笑福亭鶴光、桂ざこば、桂三枝、春風亭小朝、桂文珍、立川志の輔といった豪華な顔ぶれがそろう。高座のレベルの高さはいうまでもないが、各団体の垣根を越えてこれだけの落語家を束ねられる人脈とプロデュース能力こそ、円楽が楽太郎さんに期待を寄せるゆえんだ。
「落語はジャズ」
「話は自然と落語の技法に及ぶ。「落語はジャズ」と例える。「覚えた通りを話すだけではだめ。一人芝居だけど、本当に芝居をしてもだめ」と定義する。
「どこか抜けてなきゃいけないの。“間”が個性だから。毎回観客の反応を肌で感じながら、その時の呼吸でどんどん変わっちゃうのが落語なの。少しくどくやってみたり、抑え目にやってみたり。ジャズのアドリブと同じだね。自分との勝負です」
「円楽」襲名を言い渡された当初、異例の生前贈与に楽太郎さんは複雑な思いを隠さなかったという。親と慕う師匠の老いを見たくなかったからだ。今も寂しさはあるが、「忙しさで紛れている」という。実の親子以上のきずなが見える。
「襲名しても、これまで通り粛々とやっていくしかない。でも周りが喜んでくれているので、どこまでやれるか分からないけれどやってみよう、と思っています。世間は楽太郎のイメージで見るだろうけど、新しい円楽の色を出していきたい」。落ち着いた口ぶりからは、すでに六代目円楽の貫録が感じられた。
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◆楽太郎・風間杜夫二人会を放送◆
時代劇専門チャンネルでは17日(土)、31日(土)ともに午後3時から「中継!秋の傑作落語選スペシャル」として三遊亭楽太郎・風間杜夫二人会を放送する。また、毎週土曜午後4時からは、楽太郎さんが役者として出演した「暴れん坊将軍6」も放送。
問い合わせ:TEL03-5549-2214
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