|
|
川崎のバラ、育てます ばら苑ボランティア/長澤陸夫さん |
|
|
|
バラの手入れをしながら話す長澤さん |
|
旧・向ケ丘遊園地跡地の「ばら苑」春の開苑が15日(木)から始まる。広大な面積と500種類以上のバラを所有するにもかかわらず、同苑はすべてボランティアの手によって整備されている。ボランティアの1人、長澤陸夫さん(72)はすっかり活動にのめり込み、5年計画で苑内バラマップを完成させると張り切っている。「定年後は、労働力をお金に換算するのではなく、世の中に貢献しようと決意しました。ばら苑は川崎市の貴重な財産。いい形で次世代に残したい」と意欲を話す。
荒廃したばら苑の復興に尽力
「次世代に残すことが高齢者の務め」
川崎市内最大の緑地帯・生田緑地の、周囲をぐるりと山に囲まれた高台の盆地にあるばら苑。ここにはいまや絶滅種の株や古く懐かしい品種のバラもある。
1958(昭和33)年5月23日に関東一の規模を誇る「ばら苑」として向ケ丘遊園地内にオープンした同苑だったが、2002年3月の遊園地閉園とともに川崎市が管理を継承することとなった。その年の7月、苑内を整備するボランティアグループが集い、活動を開始。
「当初はもうバラの苗が隠れるぐらい草ぼうぼうで、腰の高さまでありました。こんなに荒れてしまってもったいない…とショックでしたね。バラうんぬんより、雑草の撤去作業に結局2年は費やしました」
|
ばら苑(生田緑地内) |
今でも作業の8〜9割は雑草撤去だという。地味な作業ゆえに、脱退者も多かった。その後、活動日の規則を緩和し、通年でボランティア募集を行うなどの工夫によって、現在会員数は170人程に落ち着いている。
雑草撤去のほかにバラの剪定(せんてい)や、雨の日には室内で新しいラベル作りの作業がある。作業時間は午前10時から正午まで。無報酬だ。
「これについては色々な意見がありますが、わたし自身は定年になって、『労働力をお金に換算するのはやめて、世の中に貢献することをしよう』と決意しました」と長澤さん。荒れ果てたばら苑にショックを受けて活動を始めた長澤さんだが、当初バラの知識はなく、特別好きでもなかったという。しかし徐々にのめり込んだ。ここ5年ほど、入退院を繰り返したが、病院のベッドの上にいると「土に触りたい、と渇望するんです」。雪が降っても作業をしに行ったこともあった。
長澤さんだけでなく、会員のモチベーションのほとんどが「達成感」だ。雑草撤去のエキスパートは、それこそなめるようにきれいに草を取り除く。また、四季折々の風景もいい。普段、苑内は一般公開していないため、満開の桜や紅葉はボランティアにしか味わえない。
ボランティアのみなさん |
|
苑内に育成されるバラは、開園当時の1940〜50年のものが多い。新品種をどう組み入れていくかが今後の思案どころだ。ことしは、「ばら苑募金」でイングリッシュローズガーデンを新設した。
古いバラは処分するのではなく、及川清明苑長の指導で市内の公園に譲り、植樹している。「バラは市民のものですから」と及川さん。
品種の多さでは世界一かもしれない、といわれる同苑のバラ全資料を作ることが、長澤さんの今後のライフワークだ。どこにどんな種類のバラが咲いているのかを開花時期に記録し、調べてラベルを付ける。長期プロジェクトになることは覚悟の上。「5カ年計画です」と笑う長澤さんはむしろ楽しそうだ。また、募金で休憩用のいすの増設を検討中だ。
「ばら苑を多くの方の思い出の場所、心の循環となる場として次世代に残したい。年を取ってできるのはそれにつきると思います」 |
| |
|