|
「人のお世話をするのが好きなの」と話す酒井さん |
|
24日 (月・振休) に都筑公会堂でシニア合唱団「紳士・淑女のガラ・コンサート」による同名の音楽会が開催される。平均年齢75歳で、オペラの名曲を歌う。主宰兼音楽監督を務めるのは横浜を中心に音楽活動を行っている青葉区の声楽家・酒井沃子 (ようこ) さん。シニアの指導を20年以上続けている。
「精一杯打ち込むものを持つことが健康と長生きの秘けつ」と長年の経験から話す。酒井さんは「NPO法人65歳からのアートライフ推進会議」理事長として、シニア世代のための音楽イベントを開催する。
65歳以上のためのイベントも
酒井さんには「罵倒 (ばとう) 観音」という愛称がある。レッスンとなると容赦なくしかるからだ。
「決して全員の声が出るわけじゃない。でも、みんな歌いたいという気持ちがあるから歌わせてあげたい。だって練習すればちゃんと歌えるようになるのですから」。"観音" と呼ばれる理由はこの熱心さと優しさにある。
「高齢になると人間は怒られることが少なくなる。でも怒られることを通り過ぎないとステップアップできない。半べそをかくくらい落ち込んでこそ成長できるんですね」と愛のむちを振るう。
今回のコンサートは横浜市青葉区の3つのシニア合唱団のメンバー20数人で開催する。最高齢はなんと94歳の女性。87歳の男性もいる。男性の方が若干人数が少ないが、「みなさん暗記の期日はきちんと守られます (笑)。その点では男性の方が優秀です。定年後に新しいコミュニティーに入り友達を作る勇気が何より素晴らしい」と酒井さんは褒める。
女性メンバーの中には伴侶を亡くした人、介護を担っている人など何かしら背負っている人もいる。しかし最初は暗い顔をしていた人も、「レッスンを重ねるうちに上達するうれしさからか、確実にきれいになるの」。
|
練習は酒井さんの自室の地下スタジオで。 |
"ありのままに伸ばしたい"
数年前、酒井さんが指導する合唱団は某コンクールに出場した。そのコンクールは音大生も出場するハイレベルなもの。結果は良くなかった。「だったらシニアだけのコンクールを作ろう」。そう思い、早速「NPO法人65歳からのアートライフ推進会議」を立ち上げる。以後、シニアのための音楽イベントとして1 年に2〜3回、横浜のフィリアホールでコンクールを行う。著名な音楽家による講評が得られるのが特徴だ。出場者に張り合いも出るし、今後への意欲も増す。
シニアと長年接しているうちに、酒井さんにも変化が表われた。「何がなんでも『こういう方向』に持っていこうとはしなくなりました。その指導法だと、のびやかさがなくなってしまう。今はありのままに伸ばしていきたいの」
現在は、24日のコンサートに向けて最後の仕上げに追われている。東京芸大時代のクラスメイトでプロの指導者にも手伝いをお願いした。少しでもメンバーの力を伸ばしたいのだ。
シニアの指導は大変な時もあるが、生徒から教わることも多い。「みなさん、精一杯歌われます。精一杯打ち込むものがあること、それが健康と長生きの秘けつでしょうね」。そう確信している。 |
| |
|