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浅野学園の出身。「卒業生や同窓生が映画の出資に協力してくれました」 |
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実業家・浅野総一郎の一生を映画化
「京浜工業地帯の父」「セメント王」と呼ばれた明治の偉人・浅野総一郎の老年期を描いた映画「九転十起の男3 グッドバイ」が11月10日 (土) から川崎と横浜で公開される。映画は全3部作で、本作で完結となる。監督は横浜市鶴見区出身の市川徹さん (59) 。
「何度となく起業しては失敗した浅野に自身が重なる」と話す。
「何かを得れば、何かを失う」
七転び八起きどころか、「九転十起」と呼ばれた浅野総一郎。川崎・鶴見地区の京浜工業地帯の基礎を造った日本近代産業の立役者であるが、15歳で商売を始めて以降、起業しては失敗を繰り返し、故郷・富山では「損一郎」とやゆされた。
偶然にも浅野が創立した進学校・浅野学園の卒業生である市川さんだが、伝記「その男、はかり知れず」(新田純子著・サンマーク出版)を読むまで、「セメント会社を造ったという程度しか知らなかった」という。しかし読了後、浅野の持つ底知れない力に魅了され、突き動かされるように映画化に踏み切った。
1948 (昭和23) 年生まれの市川さんは、大学紛争に巻き込まれ獣医の道を絶たれた苦い過去がある。無為な時間を映画館で過ごした。その後、テレビ神奈川に入社。江の島で大型のライブを成功させるなどその力量を発揮し、14年間勤めて退社。退社したのは、会社員時代に面倒を見ていた若手歌手のためにプロダクションを設立するためだった。「これが成功してお金が貯まったので映画を作ろうと」。映画はそこそこのヒットとなったが、所属歌手が次々と独立していき、「何かを得れば、何かを失う」と思わされた。
「ショックでした。当時は40代半ばでしたけれど、もう引退しようかなあと思いました。那須の別荘で毎日ゴルフざんまい。でもやっぱり退屈になってくる。それで別荘も全部売っぱらって、今度は自分で映画の監督をしようと決心しました」
映画監督となってからは「ファンキー・モンキー・ティーチャー3」などのヒット作も出して順調な滑り出しを見せたが、大失敗に終わった1本の映画が原因で1億円の借金を背負う。「甘かったな、と。当然仕事は来なくなりました」。仕方なく、当事はやっていたビデオ映画で「OLの性」を作った。これが当たり、結局2年で借金を返した。
県知事、川崎市長らも出演
やがてビデオからDVDへの変換期が来てビデオが売れなくなったが、「何かを失えば何かを得る」の言葉通り、今度は映画が作りやすくなった。そんな折、友人の紹介で「その男〜」の著者・新田純子さんに出会う。映画化を決意したのは、浅野に市川さん自身の重なるところが多かったからだ。
「脚本を書いているうちにだんだん浅野が乗り移ってくるのが分かるんです。浮上させてよ、ばん回させてよ、という彼の思いが」。「九転十起の男」というタイトルは、校歌の同様の個所から取った。この歌詞は卒業後もずっと市川さんの頭から離れなかった。
3部作になったのは、資金が集まらなかったからだ。1作目は浅野の青春時代だけに焦点を絞って作った。その1本で終えるつもりだった。しかし浅野の故郷・富山県氷見で上映した時、鳴り止まないスタンディングオベーションに思わず客席から飛び出し「必ず続編を作ります! と言ってしまったんです」と苦笑する市川さん。
ことし春に上映した2作目も成功し、10日からは晩年の浅野を描いた「九転十起の男3 グッドバイ」を上映する。なんと作品には松沢神奈川県知事を筆頭に、阿部川崎市長、中田横浜市長らが出演するという。「ウケ狙いですけれど。浅野さんの言う工夫魂ってこういうことだと思います」
劇中、病気の宣告を受けた浅野は言う。「50、60代は鼻たれ小僧」と。市川さんもそれにうなずく。「ぼくらは熟年といわれる世代ですけれど、僕自身に限っていえばちっとも熟していない。言葉が世の中を追い込んでいるんですよ。熟年の場に身を置くことなんて考えないで、同世代のみなさんも一緒にがんばりましょう」
不屈の精神を持つ浅野の魂が乗り移ったかのように見えた。
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『九転十起の男3 グッドバイ』
主演 : 寺田農
11月から109シネマズ川崎 (TEL：044-520-0136)と109シネマズMM横浜 (TEL：045-664-0109)で上映。 |
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