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「南の海は本当に幻想的です」と吉村さん |
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美しい海の中を魚のように泳ぐ、それがスキューバダイビングのだいごみだ。海のレジャーであるため危険なイメージがあるが、信頼できる店を選べば危険性は低く、60、70代のダイバーも多い。1年前、65歳でスキューバダイビングの世界に飛び込んだ横浜市港北区の吉村岳 (たかし) さん (66) も、ほぼ毎月海へ潜るというはまりよう。「団塊の世代ならまだ十分にダイビングを始めるのに間に合いますよ。ぜひ挑戦してみてほしい」と話す。
その面白さにのめり込む
海の中、光が指す洞くつの先に向けて魚の群れを追いかけて泳ぐ。「南の海は非常に幻想的。ダイビングは慣れてくると宇宙遊泳をしているような、ふわっと浮かぶ感覚を味わうことができるんですよ」と吉村さんは目を細める。その顔はこんがりと日に焼けている。5月、フィリピンのアニラオから帰ってきたばかり。
昨年6月に定年を迎えた吉村さん。「定年になったら好きなだけ趣味の時間が持てる」と期待に胸をふくらませていたが、一方で吉村さんよりも先に定年を迎えた友人のリタイア生活を見ていて思うところもあった。
「現役の時は忙しい中に時間を見つけることに楽しさがあるけれど、定年後は時間つぶしになってしまう。それだと飽きてしまうんじゃないだろうか」。それならば新しい趣味を始めよう。前から念願だったスキューバダイビングに挑戦したいと思ってはいたが、「町のダイビングショップに張り出されている写真はほとんど若い人で、この年だとお呼びじゃないのかな?」と二の足を踏んでいた。
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ことし3月にフィリピンのスミロン島で |
危険度低く定年後のレジャーに
そんな時、吉村さんは偶然、新聞で自分と同年齢の男性がダイビングを楽しんでいる記事を読んだ。幸運なことにその男性が世話になっているダイビングショップは吉村さんの家の近所だった。店に足を運んだ吉村さんは、店長の人柄の良さもあってその場でライセンス取得を申し込む。「そこからはとんとん拍子で資格を取って、3カ月後にはもう沖縄の海に潜っていたんですよ」。不安のあった体力と年齢的による危険性は、始めてみるとまったくの取り越し苦労だった。「わたしより小柄でわたしより年上のおばあちゃんも、タンクを担いで潜っているんですから!」と笑う。実際、吉村さんが通うダイビングショップ「ミッドサマー」の家接剛志店長は、スキューバダイビングの危険度は普通考えられているより低いと話す。
ダイビング店が企画したツアーの参加者とは、年齢も職業も超えて仲間となった。それは予想外の驚きだった、と語る吉村さん。「これまでは同じ境遇、同じ話ができる人と友達になっていました。普通、20歳の女の子と会話は続かないですよね。でもそれが同じ体験をしていると抵抗なく話すことができる。年を取ると心の底から興奮するということが少なくなりますが、ダイビングは本当にわくわくします。ぜひ定年後の選択肢の中に入れてみてください」 |
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