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クラリネットで若返り 富士通川崎吹奏楽団/中嶋忠司さん |
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昨年の演奏会は25回目ということで全員正装で臨んだ |
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毎年6月に定期演奏会を開催する富士通川崎吹奏楽団。ことしも6月3日の定期演奏会に向けて、現在追い上げけいこの真っ最中である。同楽団でクラリネットを担当するのは楽団の最高齢演奏者・中嶋忠司さん(60)。「60歳なんてまだまだ尻の青い小僧。65歳以降を楽しく過ごすために、今から世界を広げていくこと、日々感激することが大事だと思う」と語る。
「60歳はまだ小僧」
中嶋さんは横浜の自宅から埼玉の職場まで2時間かけて通勤する。4年前、現在の会社の募集要項を見た。富士通とはまったく違う業種ではあったが、「これを機に新たなことをしたい」と、思い切って飛び込むことにした。
仕事は変わっても趣味の音楽は続けようと中嶋さんは決めていた。趣味は一生のもの。楽団のメンバーもOBとして快く中嶋さんの在籍を認めてくれた。
「年配者だけの音楽サークルもあるけれど、年齢を超えて音楽をつくるということがいいことだと思う」と中嶋さん。若い人から教わることもたくさんある、と話す。中嶋さんにクラリネットを指導してくれる先生も洗足学園を卒業した若い人で、彼女の熱心な教育には驚かされたそうだ。
「わたしは20年ぐらい我流でクラリネットをやっていたのですが、口やのどの使い方が『まるで違う』としかられました」と苦笑い。ひとつの音を1時間かけて吹き続けるなどかなり厳しいレッスンを受けたが、そのかいあって「最近やっと形になってきたんですよ」とうれしそうに目を輝かす。いい音が出た時の快感、全員でいい演奏が出来たときの達成感は、ひとたび味わうと麻薬のように忘れられなくなるのだ。
意外にも、中嶋さんは若い時は音楽が嫌いだったという。ビートルズの全盛期も「あんな軟弱なもの」と、耳を傾けなかった。しかし、社会人になって友人に連れられて入った歌声喫茶で音楽に目覚めた。音楽って文字通り楽しいんだ、と心揺さぶられ、楽器を演奏しようと思い立った。
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練習後、楽団仲間に「今度おれの写真集を出すんだよ」とふざけてみせる中嶋さん |
「好奇心が今後の人生を豊かにする」
楽器の中でも、特に吹奏楽は若いころに始めないと習得するのが難しいといわれている。定年してようやく自由な時間が手に入るようになり、長年の夢だった楽器を始めようかと思っても年齢を理由に門前払いをくらう人も少なくない。しかし中嶋さんは「何かを始めるにあたって、年齢は関係ないですよ」ときっぱり言う。
「ものすごく体力を使うものだったら無理かもしれないですけど。わたしだって演奏技術の限界はいつも感じますが、それでも練習の積み重ねしかありませんしね」と同世代にエールを送る。
「だって、60歳なんてまだまだ尻の青い小僧ですよ(笑)。今、自分の世界を広げていくようにしないと、65歳を過ぎてそれから先がつまらなくなると思います」
中嶋さん自身、ゼロからのスタートとなった転職も「新しい業界なのだから知らなくて当たり前。転職をばねに伸びればいい」と割り切った。通勤時間もこれまでより30分も増えて毎朝6時に家を出るが、くよくよしたって始まらない、人間万事塞翁(さいおう)が馬、と言い聞かせた。
徒歩で向かう駅までの道や電車から見る景色を、ぼーっとではなく、常に何かを発見したいという気持ちを持って見ているという。何事につけても感激することが、気持ちを若く保つために大切なのでは、と話す。
「もっと先の人生を豊かにするためにも、いろんなことに関心を持っていきたい。まだまだこれから」と目尻にしわを寄せ、若々しい笑顔を見せた。
【富士通川崎吹奏楽団】
1980年に同社サッカー部の応援を目的に結成。82年から毎年6月に定期演奏会を開催。県大会にもたびたび出場している。総人数は約40人。
【富士通川崎吹奏楽団第26回演奏会】
日時 : 6月3日(日)午後1時半から
場所 : エポック中原(JR武蔵中原駅前)
入場料 : 無料
演奏予定曲目 : ホルスト「惑星」、チャイコフスキー「白鳥の湖」、久石譲「ハウルの動く城」ほか。
ホームページ : http://homepage3.nifty.com/FBC-HP/ |
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