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「日立鉱山煙害」克服の歴史を紙芝居で 日立市・「大煙突とさくら100年プロジェクト」代表の原田実能さん |
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原田実能さん |
共生の理念、子どもらへ伝承…「100年先まで届けたい!」
日立鉱山の煙害(環境破壊)と闘った若者たちを描いた新田次郎の小説「ある町の高い煙突」が2019年に映画化された際、映画製作に協力した日立市在住のボランティア団体「映画『ある町の高い煙突』を応援する会」。このときの同会メンバーを中心に「大煙突とさくら100年プロジェクト」が新たに発足し、このほど紙芝居「大煙突とさくらのまち」のお披露目会を催した。応援する会と同プロジェクトで代表を務める、日立市の原田実能さん(62)は、「100年前の“人と自然と産業の共生”という歴史的事実を、これから100年先まで届けたい」と語る。
約100年前の日立市では、日立鉱山から排出される煙で地元の山々は荒れ果て農作物が枯れていた。そこで、地域の人たちと日立鉱山が協力して解決策を模索し、当時、世界一高い155.7メートルの煙突が建設され、煙害を克服。その後、オオシマザクラなどが植えられ山の緑を取り戻した。
映画「ある町の高い煙突」公開後も、「応援する会として継続して活動していきたい」と思っていた原田さんは今年4月、応援する会会員を中心に、ボランティア団体「大煙突とさくら100年プロジェクト」を立ち上げた。 同プロジェクトが目指しているのは、100年前の史実を再認識し、これから100年先の子どもたちのためこの史実を伝承するだけでなく、その原点である共生の精神を基に「持続可能なまちづくり」を推進すること。
「SDGsの理念も」
「かつての日立鉱山は『一山一家主義』を掲げ、従業員と地域を大切にした経営を行ったという歴史があります。それは『誰も置き去りにしない』という国連加盟193カ国が目指ざすSDGs(持続可能な開発目標)の基本理念そのもの」と原田さん。「SDGsの理念こそが私たちのプロジェクトの根幹であり、このことを多くの人たちに知っていただきたい」 その手始めとして、おととし11月から紙芝居の準備を始め今年1月に完成、4月にお披露目会を行ったのが、“人と自然と産業の共生”をテーマにした紙芝居「大煙突とさくらのまち」だ。
脚本は、日立市出身で仙台市在住の児童文学作家・佐々木ひとみ、絵は仙台市で活躍しているイラストレーター・栗城みちのが担当した。「子どもたちに高い煙突の史実を伝えるには紙芝居が適しています。紙芝居は、読み手と聞き手でコミュニケーションをとることができ、さらに絵の中に多くの情報を描きこむことができますから」と原田さん。紙芝居を監修し、「小さな表現にもこだわり、佐々木さんに7回も書き直していただきました」と話す。
紙芝居は、市内の小学校や図書館のほか、日立鉱山に端を発する企業で日立市に生産拠点を持つJX金属(本社・東京都港区)などに寄贈された。今後は紙芝居の副読本、英語版などの作成や漫画化も計画している。
「大煙突とさくら100年プロジェクト」運営会議で。中央が原田さん |
各種催事も構想中
同プロジェクトではかつて大煙突が煙を上げた3月1日にちなんで3月を「大煙突とさくら月間」と定め、“大煙突とさくらの物語”をつないでいくためのイベント開催を計画中だ。「煙突状に長くした菓子やすしなどの食べ物を、飲食店、家庭などで作っていただき、恵方巻きのように大煙突に向かって食べるというイベントを行い、史実を忘れないようにしていきたい」と原田さん。さらに、将来は「雇用を生み出すような仕掛けも考えていきたい」と構想は大きい。
また、同プロジェクトでは、桜の景観を保全し、日立ならではの桜の名所作りや、現在の日立の人たちが100年前の史実を生かして生活している実態を見てもらう環境観光(生活観光)をも進めようとしている。
「100年前、手を取り合って煙害を解決したように、市民、企業、行政の人たちなどと力を合わせていきたい」と原田さんは話す。
同プロジェクトに関する問い合わせは「うのしまヴィラ」原田 Tel.0294・42・4049 |
紙芝居「大煙突とさくら100年プロジェクト」上映会
10月16日(土)、うのしまヴィラ「ユズリハhouse」(JR日立駅からタクシー)で。午前10時半と午後1時の2回上演。
革製小物や絵本などを販売するイベント「プチ・グレーヌのプチマルシェ」内で開催。当日は紙芝居「大煙突とさくらのまち」などをスクリーンに映し、ピアノ演奏とコラボレーションする。入場無料。プチ・グレーヌ・やまの Tel.090・4847・3660 |
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