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地域の在来種守る 常陸太田市「種継人の会」布施大樹さん |
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布施大樹さん |
小豆「娘来た」の栽培・PRに傾注
地域に残る固有の在来種は、農家で昔からほそぼそと栽培され受け継がれているが、いわば“農業の絶滅危惧種”のような存在だ。常陸太田市の「種継人の会(たねつぎびとのかい)」は、在来種を守りつつ、その魅力を伝える活動を行っている。同会が現在、力を入れているのが小豆の在来種「娘来た」の栽培とPRだ。「栽培会で『娘来た』を生産するだけではなく、同品種を使ってくれる菓子店やカフェなどと、食べてくださる人たちをつなぐ活動をしています。人とのつながりの中で『娘来た』の良さが伝わり、結果的に種が引き継がれていけばうれしいです」と同会代表の布施大樹さん(48)は話す。
常陸太田市にはホウキモロコシ、アカネギなど20種類以上の在来種があり、そのほとんどは、高齢者が自家用に栽培しながら種を守ってきた。「おいしいから作り続けてきた」という声も多く聞かれる。「農家が自分たちで生産・消費するだけだったら在来種の存続は難しいのです」と、自身も生産者の布施さん。そこで2013年に生産者や商店主が中心となって「種継人の会」が発足。現在では、30代〜80代の約35人が会員となり、さまざまな活動を行っている。
小豆「娘来た」
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「娘来たのパフェ」
常陸太田市 Gateau Daisy(ガトーデイジー) |
小豆「娘来た」との出合いは同年、同市で開催されたドキュメンタリー映画「よみがえりのレシピ」自主上映会でのこと。上映会場の展示会に「娘来た」が出品されていたのだ。
えんじ色と白色のまだら模様が特徴の小豆「娘来た」は、皮がやわらかくすぐ煮えるので、嫁に行った娘が里帰りしてから準備してもおいしく食べられることから「娘来た」と名付けられたといわれる。
同会は15年から北山弘長さん(51)を中心に「娘来た」の栽培会を作り、契約栽培に取り組んできた。「『(まだら模様が)きれいだなあ』と思い作り始めました。ただ白と赤(えんじ)が交じっているので普通の小豆より選別に手がかかります。普通の小豆は割れたり虫が食ったりしていると、赤の中に白が見えます。選別機と手作業で選別します」と北山さん。妻の郷子さん(47)は「味はあっさりしていて、おいしいです」と話す。
現在、栽培会のメンバーは11軒。「娘来た」の昨年の生産量は約300キロ。例年7月上旬ころに種をまき、10月中旬〜11月初旬に収穫、下旬ころ選別する。
同会は昨年から、地元の街の菓子店やカフェなどに素材として「娘来た」を提供し、パンや菓子などを作ってもらっている。常陸太田市や日立市などで「娘来た」を使っている店は現在11店あるという。「私たちは農家と地域の店をつなぐパイプ役です」と同会の布施さんはほほ笑む。
「地元が誇れる食材に」
評判も上々だ。日立市のドイツパン「Rousenburg(ローゼンブルク)」オーナーの山田雄大さん(37)は、「(『娘来た』は)素朴でおいしいです。地元のいい食材を使ってお客さんに広めていきたいです。餡(あん)とバターを組み合わせてパンだけではなくケーキなども作りたいです」。
同市の「Maple cafe(メイプルカフェ)」オーナーの西内徹也さん(39)は「やさしい風味でくせがないので、料理、デザートなど幅広く使えます」と話す。「安心でおいしい、食の基本などを大切に」が店と同会をつなぐ言葉だという。
「F1(交配種)もいいですが、在来種を残せたら将来楽しいですよね。『娘来た』が地元のいろいろなところで使われ、気軽に食べられ、地元の人が誇れるものになったらいいなあと思っています」と布施さんは話す。
同会は、「『娘来た』を使ってみたい」という飲食店を募集中。 問い合わせは同会・渡辺 Tel.0294・72・0569
https://tanetsugibito.com/
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