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伝統文化継承に情熱注ぐ 日立市の柳内芸術音楽院主宰・柳内呈留摩さん |
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1月の柳内芸術音楽院「初釜、初弾き会」で、「千鳥の曲」を歌う柳内呈留摩さん(左端)。
三弦を演奏しているのは、夫の日朗さん(72) |
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箏や抹茶…生涯学習講師として邦楽・茶道など指導
筝曲、三弦、尺八などの「柳内芸術音楽院」を、自宅のある日立市で主宰する柳内呈留摩(やない・てるみ)さん(78)は、生涯学習の「ひたち生き生き百年塾」市民教授としてボランティアでの演奏にも情熱を注ぐ。茶道と華道の教授資格も持つだけに、活動は実に幅広い。「ボランティアなどでは、作曲者などをテーマに講話も行います。演奏後、参加者の皆さんに抹茶と生菓子をお出しして、希望があれば、筝(こと)の演奏や抹茶をたてる体験をしていただいています」
柳内さん |
柳内さんは3歳のとき、母の真(まこと)さんから筝の手ほどきを受け始めた。真さんは、筝曲家・作曲家として高名な宮城道雄の直門という。7歳から茶道と華道も習った柳内さん。12歳で筝曲師範と華道教授(小原流)の資格を取得。14歳で茶道教授(裏千家)の資格を取得し、22歳で東京藝術大学を卒業した。「小学校のとき、練習が大変で私の筝は涙でぬれました。学生のときは『リズムが取れない』などと悩み、ふと気が付くと渋谷の街を出て6キロ以上も歩いていました。あのころは努力しかなかったです」
1963(昭和38)年にはNHK邦楽技能者育成会(第8期)を卒業し、文化庁やNHKの依頼で、海外公演を15回以上重ねた。「イタリアやルーマニア、フランス、スペイン、ロシアなどを巡りました」。文化庁芸術祭にも、これまで2度参加している。
地元の日立市では、筝曲、三弦(地唄)の生田柳内流家元、尺八の琴古(きんこ)柳内流家元として、「柳内芸術音楽院」を主宰し、筝や三弦(地唄)、尺八に加え、茶道、華道も教えている。洋楽器の練習も重ねている柳内さんは、笑みを見せる。「バイオリンやチェロの指導もしています」。活動方針には「楽しく、和やかに」、「基本をしっかり身につけ、技術を磨く」、「日本の伝統文化を守り、後世に継承する」、「海外公演活動を通じて国際交流を図る」、「音楽を通じた社会福祉活動」を掲げている。
日立市民と市による生涯学習事業「ひたち生き生き百年塾」の市民教授として小学校や中学校などを訪ねる柳内さんは、高齢者福祉施設や国際交流団体のイベントでもボランティアで演奏している。「演奏前の講話では、宮城道雄の生涯や業績、千利休の生い立ち、華道の成り立ちなどを話します。3月にはおひなさまの起源、4月にはお釈迦(しゃか)様についてなど、季節によって話題を変えています」
演奏の後は、参加者に抹茶と生菓子を振る舞う。筝の演奏体験や抹茶をたてる体験の希望にも応じている。「初めて筝を演奏する人でも、1時間くらい練習すれば『さくらさくら』を弾けるようになります。多くの人に伝統文化を体験していただきたいので、茶道具のなつめ、茶せんなどは約150人分、筝は50面ほど用意しています。筝は公演前日にトラックで運びます」
柳内さんは、筝や尺八、三弦などの和楽器と、バイオリンやチェロ、トランペットなどの洋楽器との“コラボレーション演奏”にも意欲的に取り組み、演奏曲も多数作曲している。「高齢者や子ども、体の不自由な人の気持ちになって、観客がどのような反応をするかを考えて演奏します。心がこもり『良かったね』といわれる演奏を目指しています」。ボランティアやイベント出演は、日立市内を中心に年間約100回を数える。
「土・日曜日も予定が入っていて、忙しい日々を送っています」。今までに、大腸がんなどで15回も手術を受けているというが、前向きな姿勢を貫いている。「演奏や教えることを通して、皆さんと交流することが生きがいになっています。楽しみながら命を頂いています。皆さんも自分の生きがいになる趣味を持ってくださいね」 |
今秋、「ひたち生き生き百年塾」で交流会予定
柳内さんは今秋、予定されている「ひたち生き生き百年塾」市民交流会に参加。和洋楽器で世界の音楽を演奏する考えだ。問い合わせは柳内芸術音楽院 Tel.050・8012・6652 |
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