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伝統の「かな料紙」、次世代へ 常陸太田市・「小室かな料紙工房」小室久さん |
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ナラの木の皮を煮て、素紙を染める染料を作っている小室久さん。木のほかの部分は薪(まき)として利用しているという |
書道でかな文字を書くために装飾された用紙「かな料紙」。平安時代以降に書かれた美しいかな書きの書「古筆」などに使われている。その「かな料紙」を平安時代の技法そのままに復元し制作しているのが常陸太田市の小室かな料紙工房だ。4月30日から、ひたちなか市のギャラリーで展示会を開くと話すのは同工房3代目の小室久さん(56)。「当時の美しい料紙を今の時代に再現できる面白さがあります。お客さんに喜んでいただけるのがうれしい」と目を輝かし、「伝統の技を次世代に伝えていきたい」とほほ笑む。
祖父の代から平安時代の技法復元
小室かな料紙工房創業者の小室徳さん(故人)は、かな料紙制作者として東京で開業していたが戦火のため、里美村(現・常陸太田市)に移転した。2代目義久さん(故人)、3代目久さんと伝統の技を受け継ぎ、現在は長男の太郎さん(29)が同工房で技術を継承中。久さんは、米田版画工房すり師・米田稔さん(故人)から伝統木版画を、父・義久さんからかな料紙制作を学んだ。かな料紙の技術は常陸太田市無形文化財に指定されている。
かな料紙の制作には大きく分けて四つの伝統的な加工方法がある。その一つ、染紙(そめかみ)は、すいたままの状態の紙「素紙」を染料に浸し、くぐらせて染色したもの。二つ目の唐紙(からかみ)は、平安時代に唐から輸入された美しい加工紙から名付けられたもので、版木を彫り、雲母(きら)などの絵具を付け和紙にする。三つ目の箔装飾紙(はくそうしょくし)は、金銀の箔(はく)をまき、優美さや荘厳さを表現する。四つ目の継紙(つぎがみ)は、直線状、雲の形や山、川の流れをイメージさせるさまざまな形に切ったり破ったりした紙を張り合わせる。この四つの加工方法を組み合わせ、または、単独の加工方法でかな料紙を作る。
「西本願寺本三十六人家集より『能宣集』 上」の原本を基に作ったかな料紙。デザイン、色、文様など原本通りだ |
「平安時代の材料と技法を再現しています。どのようにして作っていたのだろうかと残っている原物を手掛かりに基本的には当時のデザインで作っています。昔は、プロデューサーみたいな人がいて染色職人、箔加工職人などをまとめて分業で制作していたようですが、祖父はこれらの工程を一人で行うというスタイルをとりました」。現在、小室さんの工房以外でかな料紙を制作している工房は、岡山と姫路に1カ所ずつあるくらいだという。
「かな料紙を作るには手間と時間がかかります。工程の数が多いので覚えることがたくさんあります。祖父は一人前のかな料紙職人になるには30年かかると言っていました」。20枚〜30枚ぐらいを工程ごとに進め、1枚作るのに最低1カ月かかるという。「伝統的な作り方をしたかな料紙は年月がたてばたつほど深みが出てきて、書き心地がいいです」。かな料紙は、同工房で書道家などから注文を受けており、展示会でも販売している。
久さんは、茶道具の風呂先屏風(びょうぶ)やガラスに料紙を挟んだ文鎮、能に使われる仕舞扇など、かな料紙を用いてさまざまな工芸品の制作にも取り組んでいる。また、海外の人たちに「かな料紙の美を伝えたい」という気持ちから、かな料紙など日本の伝統文化のプロモーションビデオを製作中だ。 |
展示会「料紙と花」
4月30日(火・祝)〜5月6日(月・振休)、サザコーヒー本店内ギャラリーサザ(JR勝田駅徒歩10分)で。開廊時間は午前10時〜午後6時半(最終日は午後3時まで)。
入場無料。主催は小室かな料紙工房、かわめ真紀子。
問い合わせは小室かな料紙工房 Tel.0294・82・2451 |
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