「大煙突マップ」見て! 歩いて! 日立市の宗形憲樹さん
「大煙突マップ」を手にする宗形憲樹さん
市民有志らと作製
日立鉱山が住民と力を合わせて煙害克服に努めた実話に基づく劇映画「ある町の高い煙突」の撮影が5月にスタート。日立市の宗形憲樹(けんじ)さん(55)は、「映画『ある町の高い煙突』を応援する会」の依頼を受け、妻や市民有志とともに「大煙突マップ」を作製した。表面では、大煙突を中心に日立の名所や歴史を紹介。裏面には、日立鉱山が栄えた1940年代の鳥瞰(ちょうかん)図を載せた。「日立は前に海があり後ろに山があるという感じなので、山側の西を地図の上部にしました」と宗形さんは話す。
宗形さんは9年前、妻の出身地である日立市に夫婦そろって移住。現在、編集・制作を主体とした「メディアクラフト」を主宰している。2013年、「自分たちの暮らしを通して、日立を知ってもらえれば…」と冊子「ひたち帖」を作った。春号、夏号、秋号、冬号と4回発行。全国の編集者や写真家、デザイナーらが「わたしのまち」を紹介する展覧会「myhome town わたしのマチオモイ帖」が同じ年、横浜市で開かれたことから、その冊子を出展した。夏号の表紙を飾った「河原子海岸」の写真は、昨年の「ゆうちょマチオモイカレンダー」の絵柄に採用されている。
日立市の県北生涯学習センターの職員が「ひたち帖」に目を留めたのがきっかけとなり、宗形さんを講師とする「小さな本つくり講座」「お散歩マップつくり講座」が開催された。その「お散歩マップ」を見た「映画『ある町の高い煙突』を応援する会」メンバーが、宗形さんに「大煙突マップ」の作製を依頼した。
「大煙突マップ」は昨秋から半年ほどかけて作られた。A3判で、3千部印刷。表面では、共楽館(現・日立武道館)、日鉱記念館などの見どころや、日立鉱山の歴史を紹介した上で、海岸に近い日立駅周辺エリア、大煙突のある大雄院エリア、山間部の入四間エリアなどに分け、エリアごとの説明も書き加えた。「山が立体的に見えるように緑の色付けを工夫しました。最初は色鉛筆で描きましたが最終的には水彩絵の具で描きました」と宗形さんは作製の苦労を語る。
裏面には、鳥瞰図のほか、日立鉱山が栄えた明治以降の写真と説明文も掲載した。「『鉱山電車道』『本山劇場』などの文字は、鳥瞰図の字を打ち直して貼り付けました」。宗形さんは昨年12月から今年2月にかけて、「(住民代表として煙害を訴えた)関右馬允さんの足跡を辿(たど)る」や「鉱山住宅の跡を訪ねる」などの「大煙突マップでまちあるき」を3回実施し、参加者からアンケートを取りマップ作りに反映させたという。
新田次郎の名作小説「ある町の高い煙突」の映画化は市民待望のものとあって、「映画『ある町の高い煙突』を応援する会」事務局長を務める原田実能さん(59)は、「多くの人たちが『大煙突マップ』を見て、映画『ある町の高い煙突』への関心を高めてくだされば…」と話す。
町歩き用冊子作成も
また、宗形さん夫妻は、有志グループ「チームひたちのまちあるき」とともに冊子「ひたちのまちある記」を作製。昨年11月発行の「vol.1」では神峰山、共楽館、日鉱記念館など、今年2月発行の「vol.2」では助川山、十王、川尻などを紹介している。「日立は海と山が近いのが魅力です。『大煙突マップ』や『ひたちのまちある記』を手にして、日立を歩いていただきたいですね」と宗形さん。
「ひたちのまちある記」は日立市立記念図書館、JR日立駅構内待合室、日立駅情報交流プラザ「ぷらっとひたち」、市内の飲食店などに置かれている。
映画は2019年春ごろの公開予定
映画「ある町の高い煙突」は、東日本大震災復興支援映画「天心」を手掛けた映画監督・松村克弥が、井手麻渡(あさと)、渡辺大、吉川晃司、仲代達矢らをキャストに迎え、撮影を進めている。2019年春ごろの公開予定。
「大煙突マップ」の問い合わせは「うのしまヴィラ」Tel.0294・42・4404
「ひたちのまちある記」の問い合わせはチームひたちのまちあるき・柴田 hitachino.machiaruki@gmail.com