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童謡を創作人形で表現 水戸市の人形作家・知神けい子さん |
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自らが制作した創作人形と知神さん。水戸市立博物館(JR水戸駅からバス、Tel.029・226・6521)でも門下生とともに創作人形を展示している |
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「赤い靴」「七つの子」など野口雨情の世界描く
水戸市の創作人形作家・知神けい子さん(67)は、「赤い靴」や「七つの子」「あの町この町」など詩人・野口雨情の童謡を人形で表現。そのノスタルジックな世界が人気を呼んでいる。知神さんの作品は、北茨城市にある野口雨情生家での常設展「童謡の世界」などで見ることができる。「1体1体、童謡の世界の雰囲気が出るように作りました。布の持つ“温かさ”を大事にしています。雨情さんが暮らしたこの家で私の人形たちが毎日どんなお客さまに出合いどんな表情を見せるかが楽しみです」と知神さんは話す。
知神さんは、東日本大震災の後、野口雨情生家のひな人形展を鑑賞した際、野口不二子館長から震災の津波で野口雨情生家も大きな被害を受けたことを聞いた。「不二子さんに、雨情生家は場所も雰囲気もいいので、震災の支援のために雨情の童謡シリーズで人形展を行いたいと申し出たところ、不二子さんが『ぜひやってください』と言ってくださいました」と知神さん。現在、創作人形12体は「野口雨情生家」に寄贈され常設展示されている。
知神さんは約30年前、人形作家の与勇輝氏や水澄美恵子氏に師事し人形の作り方を教わった。「与先生は遊んでいる子どもなど、その辺にいる人たちを普通に、自然に表現されています。人形の温かさ、布の表現などに魅せられて教室に通いました」。与氏からは張り子人形、水澄氏からは球体関節人形、江戸三つ折れ人形、からくり人形などを学んだ。
「人形は、きちんと製図をしないと立体になりません。手や足の大きさ、どこが体の中心かなどを決めておきます。自然に見えるというのが上手な人形です。優しい顔、美男子の顔は難しいです」と知神さん。「電車などに乗っていてすてきな男性がいると、ついずっと見てしまいます。骨格、肉付き、目や鼻の位置など(人形作りのための)人間観察をしてしまいます」
人形作りの中でもとりわけ目に命を吹き込むのが難しいという。知神さんは、目は水彩で描くことにしている。「目を描くのが一番緊張します。最初はにじんだりしました。布により水加減、濃さも違います。きちんと表情のある目が描けたら人形作りは70%ぐらい完成です」
また知神さんは人形作りのため結髪、着付け、仕立て、げたや靴の作り方なども習得。かわいい人形を作るときは「かわいく作ろう、かわいく作ろう…」と自分に言い聞かせることがコツだという。
創作人形教室も主宰
「仕上がりがうまくいかないときは、『洋服が合わない、髪の毛が違う』などと人形がうるさく言っているような気がするのです。あれこれ試行錯誤してうまくいくと、不思議と人形のざわめきが聞こえなくなり、すまし顔になります。そういう人形を生みだすことが楽しいです」。人形1体が完成するまで約半年かかるという。
知神さんは、1999年に京成百貨店で開催した個展を皮切りに、ひたちなか市の横瀬画廊、水戸市の偕楽園公園センターなどの人形展に多数出品している。その傍ら創作人形教室「遊工房」(Tel.029・253・2957)も主宰。「教室では、張り子人形、球体関節人形、江戸三つ折れ人形など好きな人形から始められます」
現在、門下生は17人。「2年に1回、門下生と開催するチャリティー創作人形展(次回は来年3月)など、さまざまな活動をしています。人形を見て生きる勇気を感じていただければ、人のお役にたてればと思っています」 |
知神けい子創作人形「七つの子」 |
知神けい子創作人形「童謡の世界」
野口雨情生家・資料館(JR磯原駅徒歩15分)で常設展示。開館は午前9時〜午後4時。入館料100円。無休(臨時休館あり)。
問い合わせは Tel.0293・42・1891 |
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