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古布で日本画制作…「布絵」考案 水戸市の皆川末子さん |
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皆川末子さんと布絵「白の想ひ」。「大正時代後期の白、赤、黒のちりめんの祝い着が手に入りました。三部シリーズの一つです」 |
着物や帯、手拭いなどの伝統的な古布を縫い合わせ、情景や人物などを表現する「布絵」。水戸市の皆川末子さん(70)が考案した独自の世界だ。「布絵展の主役は見にきてくださる人たちと、人生の先輩たちから分けていただいた魂の入った布です。『供養させていただきます』と念じながらはさみを入れます。布絵は世界でオンリーワンのアートです」と皆川さんは話す。
国境を越え展覧会も開催
子ども時代は無口で絵が好きだった皆川さん。水戸市の実家は精米所で金屏風(びょうぶ)や掛け軸、長持ちなどがあり、実家の隣は料亭で、近辺には芸者さんの置き屋があった。「東京から水戸に嫁いだ母は、私たち子どもを東京まで、歌舞伎や浄瑠璃をよく見に連れて行ってくれました。このような環境や経験が今の作品作りに生かされています」
高校時代、皆川さんの絵が水戸のデパート宣伝部部長の目に留まり、デパートからイラストを依頼されたことも。その後、イラストを描く傍ら、東京にデザインの勉強に通った。
皆川さんは、カメラマンの夫と結婚後、子どもの誕生を機に約40年前、「この子に手作りのものを与えてあげたい」と、バッグなどを作り、布で絵を“描く”ことを発想した。「ふと見ると長持ちに古い着物が入っていました。そこで伝統的な日本の着物を画材にしようとひらめいたのです」。皆川さんの夫は美術品も撮影するため、日本画専門の画商と交流があったことも幸いした。「約30年間、日本画画商に構図など日本画の描き方を教えていただきました」
「布絵」の技法は皆川さんが生み出した。顔料の代わりに着物や帯、半襟、八掛(はっかけ)、胴裏、紅絹、帯揚げ、手拭い、浴衣などの伝統的な古布を使用する。古布は、人から譲ってもらうほか、骨董(こっとう)市にも足を運んで調達。制作は、皆川さんが描いたデッサンの拡大コピーを下絵にして、さまざまな古布を作品に合うようにカットし、縫い合わせていく。
「頬紅は八掛を張り付けて表現します。シミも利用します。しつけやアイロンで縫い代を折ります。しわをなくすアイロン掛けが難しいです。もやとか霧は表現できず、明暗をつけるのが大変です」
これまでに制作した作品は約250点に及ぶ。題材はおとぎ話や民話、祭り、四季など日本の伝統的な文化や情緒を表現したもののほか、ダンスフェスティバルを扱った国際交流シリーズなど多岐にわたる。
1990年、常陽銀行本店で初めて布絵展が開催された。これを皮切りにほかでも展覧会が実施され、皆川さんはNHKや新聞社の取材を受けたことも。ただ、布で日本画を“描く”という手法はなかなか受け入れてもらえないこともあり、皆川さんは自信喪失に陥ったこともあったという。
それでも自分を信じて制作を続けた皆川さんに転機が訪れる。96年1月のことだった。つくば市のデパートで開催された布絵展を見た人の紹介で、同年3月、オランダのアウトホールンで布絵展が開催されたのだ。その後、ハンガリー、チェコ、オーストラリア、アメリカでも布絵展が開かれ、皆川さんは国際交流に貢献することになった。国内では、NHKハート展をはじめ、東京や岐阜、岩手、千葉などでも布絵展を開催。また2000年には、関取の武双山関大関昇進記念「化粧回し」のデザインを担当した。
「今後は、自分の作品を町おこしに役立てたいと思っています。町おこしのために約250点の布絵の嫁入り先を探してします」 |
「和の展」
9月5日(火)〜11日(月)午前10時〜午後5時(最終日は午後3時)、茨城県総合福祉会館(JR水戸駅からバス20分)で。
入場無料。皆川さんと布絵チームの作品を展示。
布絵教室
毎月第1、第2、第3週の火曜・水曜・土曜、午前10時〜午後3時、皆川末子布絵教室(JR赤塚駅からバス)で。
授業料は月3回で8000円。別途入会金7000円。
※いずれも、問い合わせは皆川 Tel.090・8015・4197 |
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