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  茨城版 平成29年5月号  
夫婦で移住、バラ園運営  大子町の森谷憲さん・和江さん

「ローズガーデン森谷」は大子町の豊かな自然の中に造られている

「ローズガーデン森谷」をオープンさせた森谷憲さん・和江さん夫妻
自ら整備した「ローズガーデン森谷」
 かぐわしい香りが漂い、バラの花園が広がる—。大子町の森谷憲(もりや・けん)さん(68)は、会社を定年退職後、妻の和江さん(66)と共に千葉県から移住し、自ら整備した「ローズガーデン森谷」を2009年夏から運営している。1800平方メートル余り(約550坪)の敷地には約130種類・約1200本のバラが、色鮮やかに咲き誇る。「大子町に初めてできたバラ園です。自然豊かな大子でバラの美しさを堪能してください」と憲さんは呼び掛ける。

 森谷さん夫妻はガーデニングが趣味で、千葉県鎌ケ谷市にあった自宅の庭などにバラや草花を植えていた。築地でマグロの競りをしていた憲さんは、余暇にテニスも楽しんでいたが、50代半ばで軽い脳梗塞を発症。「通院している病院から家に帰る途中、見事なバラがあり、見ているうちに大好きになりました」と振り返る。定年の1年前から千葉県鴨川市や宮城県蔵王町のえぼしスキー場の付近など、全国を巡り、バラ園の候補地を探した。「朝日新聞に『大子町が(町所有の)山田ふるさと農園への移住者に土地を20年間無償貸与』という記事が掲載されていました。その翌日、大子町を訪れ、気に入りました。自宅は大子町の業者に依頼し建設するという約束でした」と憲さん。町有遊休地への定住促進を図り地域を活性化させようとする大子町の施策だった。

園内に自宅建てる
 定年退職後は半年間、千葉県我孫子市の造園専門学校に通った。森谷さん夫妻はバラ園内の自宅が完成するまで大子に通い、バラ園造りに励んだ。「ここは以前、苗畑でした。荒れ地になっていたので、たくさんの石を取り除かないといけなかった上、草取りや芝生張りも大変でした。しかし、バラを植える意気込みがあったので苦労とは思いませんでした」と森谷さん夫妻は回想する。

 庭園のデザインは、千葉県八千代市の京成バラ園をデザインした岩浪孝さん(故人)に依頼した。「岩浪先生が『平坦な土地なので高低差をつけましょう』と山を造りました。どんなバラを植えるかも決めてくださいました。自宅のグリーンの屋根とベージュ色の壁も先生の提案です」と憲さん。

 努力が実り09年6月、バラ園をオープンさせることができた。「バラ園を見下ろせる所に住みたいという夢がかないました」と森谷さん夫妻は目を輝かせる。その後、憲さんは再び脳梗塞に襲われたが、和江さんは「何とか乗り越えました」と話す。

 「夫は医者が驚くほどリハビリを頑張りました。私はペーパードライバーでしたが、水戸の病院まで夫を送迎できるようになりました」

「見頃の時季に」
 バラ園のバラは、人気の高い「モダンローズ」が中心。「パローレ」「レッドクイーン」など、木立性・四季咲きの大輪種「ハイブリッド・ティー」のほか、「フロリバンダ」、支柱や柵に絡まるつる性のバラなど、種類は実に多様だ。柵の下にもバラが咲き誇る。大子の山々に赤、白、黄色、紫色などの花々が映えて人々を魅了する。日立市、ひたちなか市などから年間およそ700人が訪れ、リピーターも多い。昨年は旅行会社の企画で、水戸発着の日帰りバスツアーも実施された。

 例年、バラの咲く時季は5月末から7月下旬、見頃は6月上旬から7月上旬、ピークは6月第1週から第2週という。「原野に囲まれていて草の種が入ってくるため、草取りが大変。バラの消毒にも手間が掛かりますが、予想した通りに咲いてくれるとうれしいですね」と憲さんは語る。

 つるバラを絡ませる支柱は、間伐材を活用。2人で担いできた間伐材を、憲さんがバーナーで焼いて作っている。「小屋や温室なども自分で造りました。丸太の椅子は、譲られた木に防腐剤を塗布して仕上げた物です」と憲さんは話す。

 和江さんは、大子町のコーラスの会に入会し地元の人たちとの交流を楽しむ。「勇気を出して田舎に来て良かった。ハーブや花の球根などを近所の人たちから頂きます。『田舎は病院が遠い、買い物が大変』などと言われますが、不便さを超える楽しさがあります。空気はいいし毎日、小鳥のさえずりとともにきれいな山を眺められます。花も美しいし野菜もおいしいですよ」と笑顔を見せる。

◆ローズガーデン森谷
 久慈郡大子町山田1197の15。JR常陸大子駅から車で約10分。「ゆばの里 豆仙」から約2キロ。案内看板あり。入園料は300円。問い合わせは Tel.090・2720・5339

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