|
田中芳子さん(左)と雅美さん。雅美さんはアップルパイのネット販売や店のレイアウトを担当し、経営を支えている |
水戸市に「YOCICOTAN Cafe」オープン
リンゴのおいしい季節だ。お世話になった人や友人などへの贈り物にアップルパイはいかが? 水戸芸術館裏手の「YOCICOTAN(よしこたん) Cafe」では、“よしこたん”こと田中芳子さん(67)が作るアップルパイが人気だ。もともとは結城の人気店だったが、ことし2月、水戸に移転した。「誰かの笑顔のために働きたい」と話す芳子さん。還暦を過ぎて新たに手にしたライフワークは、芳子さんの「定年時代」を輝かせている。
もともとお菓子作りは得意で、結婚前に東京で働いていた時は料理学校に通っていたという芳子さん。しかし結婚後は家業の手伝いが忙しく、なかなかお菓子を作ることはできなかった。
62歳で仕事を辞め、時間にゆとりができたので結城市の自宅の庭で野菜を作ったりしていたが、何かもの足りなかったという。「自分の楽しみだけではなく、誰かを喜ばせるために何かをやりたい、と思うようになりました」と振り返る。
そんな時、大子町でリンゴ農家を営む知人からおいしいサンふじをたくさん譲ってもらった。一般的にサンふじは、アップルパイに向かないといわれている。けれど芳子さんは、「それなら今までの概念をくつがえすアップルパイを作りたいと思いました。また娘がアップルパイを好きではなかったので、おいしいアップルパイを作って食べさせてあげたいと思いました」と持ち前のチャレンジ精神を発揮。毎日アップルパイを焼き、研究を重ねる日々が始まった。
パイは、ホールだと切り分ける時に手間が掛かる。長女の田中雅美さん(41)をはじめ試作のアップルパイを食べた人から寄せられた意見を取り入れ、最終的に食べやすい手のひらサイズのアップルパイに落ち着いた。パイ皮の厚さ、リンゴの甘さなども試行錯誤した。
「その時期に一番おいしいリンゴを使い、そのリンゴに合ったアップルパイを作る」のが芳子さんのこだわり。リンゴは減農薬のものを選んでいる。また、できる限り人工甘味料や保存料は使用せず、白砂糖の代わりにメープルシロップを使う。ジャムとは違う、シャキッとした食感のあるリンゴをメープルシロップ独特の甘みと風味がひきたてている。
「今でも母は常に研究開発を続けています」と雅美さん。
アップルパイをさまざまな所に差し入れていくうちに、売ってほしいという声が多くなり、2012年に自宅の庭に夫が建てた小屋で、アップルパイの製造販売を開始。1年後にカフェを営むようになり、今年の2月に水戸市に「YOCICOTAN Cafe」をオープンした(結城店は閉店)。
現在は、1日に約100個のアップルパイを作る。「アップルパイを作る工程は32あり、数量を多く作るようになると手間がかかります。少しでも労力を軽減できるように、模様を作る機材などを開発するなど、工夫しています」
客層は年令を問わず、男性客も。安心安全な材料を使用しているので、特に妊婦や子どもに人気が高い。店内には、イートインスペースがあり、焼きたてのアップルパイを味わえる。焼きたてアップルパイは、電話かファクスでも予約できる。
還暦を過ぎて、新しい事業を成功させた芳子さん。
「お客さまに『おいしいですね』と言っていただけるのが喜びです。私は一生誰かの笑顔のために生きたいですね」 |
クリームチーズ入りアップルパイ |
「YOCICOTAN Cafe」
ピュア・プレーン、カスタードクリーム入り、クリームチーズ入りアップルパイなど各540円。フォーチュン・クローバーハート型4種アソートアップルパイ4860円は要予約。
水戸市五軒町1の3の13 赤須ビル1F。不定休。Tel.029・291・8177 |
|
| |
|