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茨城版 平成26年4月号
潮来の藍染め技術を継承
潮来市・「藍工房良庵」大川良子さん
藍染めの仲間たち
潮来市は江戸から明治にかけて水運の要所として荷船の出入りの盛んな港町であった。また常陸利根川や前川に囲まれた水のきれいな水郷地帯でもあり、稲作とともに多くの農家で藍草の栽培が行われていた。潮来の藍は質が良く、藍染の最大の産地である遠く四国・徳島の仲買人が船で買い付けに来るほど有名であったという。そんな藍染め全盛時代を知る人も少なくなった今、潮来の藍の歴史を風化させまいと、藍草を種から栽培し藍染を続けている1人の女性がいる。潮来市あやめの「藍工房良庵」の大川良子さん(75)に話を聞いた。
藍草を種から栽培
大川さんが初めて藍染めに挑戦したのは、地域の女性グループのリーダーを務めていた時のこと。当時は、グループの活動の一つとして仲間と年に1度行う程度だった。小物などを染める簡単なものばかりではあったが、初めて染めた1975年から10年にわたり毎年町の文化祭に出展していた。
ある年、見学に来ていた一人の初老の男性から「潮来は古くから藍の産地だったんですよ」と聞き、大川さんは藍草の栽培に興味を持ったという。
「昔このあたりの農家では田植えから稲刈りまでの間に藍草の栽培をしていたそうです。その男性が、『懐かしいけれど今は需要も少ないし、昔のように藍を作るのは難しい。自分が藍草を作っていた最後の農家になるかも』と話すのを聞いて、がぜん栽培に興味がわいたのです」
そこで大川さんは畑を借り、その男性の指導の下で藍の本場・徳島から種を取り寄せてまいてみた。すると藍は立派に成長し、現在でも藍草の栽培が可能だと分かったため、「葉の加工や藍液作りや染色まで自分でするようになったんです」と振り返る。畑には有機肥料を使っている。その方が藍の色がきれいに出るからだ。
大川さんは、夏に収穫した生葉を乾燥させずに下処理をしたあと藍瓶に入れ発酵させ、上澄みを繰り返しすくい沈んだ液を取り出す沈殿藍というやり方を取っている。液は1週間ぐらいで出来上がるが、大川さんはそこからしばらく寝かせて熟成させている。また継ぎ足して色を調整するなどしており、1年中染めることができる。培養液や助剤も科学物質ではなく、「台所にあるものを使っているので、口に入れても大丈夫ですよ」と言う。
始めた当時は仲間うちでの楽しみだったが、より多くの人に藍染を知って欲しいと一般向けの教室を開いた。実際に藍瓶に触れ作品を作ることが出来る機会はなかなか貴重ということもあって、近隣の学校や幼稚園からの依頼を受け、出張講座を開くこともたびたび。東京などから習いに来る人もあり、「潮来の藍染め」は浸透しつつあった。
しかし、2011年の東日本大震災で、工房のある日の出地区は液状化により大きく被災。藍瓶も全てだめになった。
大川さんは震災直後すぐに瓶を発注し染め液を作り始めたが「藍液は生きものなので毎日瓶をのぞいては液を舐め、様子を見ながら3年、やっと最近良い表情が出て(発酵が充分になった)落ち着いてきました」と思わぬ時間がかかったことを残念がる。
実は大川さんは、これまでに何度も大病を経験している。しかし現在はすっかり回復した。
「藍は薬草としての効果がありますので、昔から生活の中で大事に使われていたようですね。私が病気に負けずに今日までやってこられたのも、そんな『藍の力』があったからかもしれません」と力強い答え。
藍に出会って早40年近く、最近は一緒に藍染めをしてきた仲間が高齢になったこともあり、まったくの新人を後継者として育成することになった。
「10名ほどの若い人が頑張って引き継いでくれそうで、とても期待しています」と、嬉しそうな大川さん。
震災の後は、「自分の年齢や体力を鑑みると種まきからの藍の栽培はもう無理だ」とあきらめかけたこともあったという。
「でも、町のみんなが畑を気にかけて一緒に守ってくれるというので、このまま続けていこうという気持ちになりました。古い歴史を持つ潮来の藍がまた復活し、観光の一役を担えるようになれたらと思っています」と、熱い思いを語る。
大川さんの作品は、日本茶店「大川園」(潮来市あやめ2丁目)で見ることができる。Tel.0299・63・1721
藍染め体験(材料込)は2時間1800円。「藍工房良庵」は潮来市日の出8の9の7。問い合わせは Tel.0299・66・2801
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