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「九ちゃんの家」保存しよう 笠間市の「笠間九ちゃん会」が活動 |
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地元の有志が保存活動に乗り出している「九ちゃんの家」 |
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「九ちゃん」の愛称で親しまれ「上を向いて歩こう」や「明日があるさ」など多くのヒット曲を持ち、1985年に惜しくも死去した国民的人気歌手の坂本九。12月10日が誕生日で、生きていれば72歳の誕生日を迎えることになる。笠間市には彼の母親の実家があり、子供の頃、疎開していた事はよく知られている。その思い出の家が取り壊されることを知った地元の有志は、家を保存しようと2006年に「笠間九ちゃん会」を発足。イベント活動を通して保存運動を続けている。
小田部伸さん |
坂本九は、小学生の数年間を過ごした笠間での思い出を生涯胸に抱き続け、忘れることはなかったという。戦後、川崎市に戻ってからも事あるごとに笠間を訪れ、結婚式も笠間稲荷神社で挙げるなど、笠間との関わりを大事にし、途切れることがなかった。
「取り壊すことになった家には、九ちゃんが描いたと言われている落書きがあったんです。今ははがして他の場所に保存してあります」と話すのは同会事務局の小田部伸さん(44)。地元で米店を経営している。
「戦時中、九ちゃん一家は川崎から家族でやって来ました。食料も十分にない大変な時代だったけど、友達と野山を走り回ったり、母親の膝の上で見る夜空の星に感激したりと楽しい毎日を送ったそうです。そんな九ちゃんが住んだ家の記憶を風化させないためにも、この家を保存しなければと思ったんです」
「九ちゃんの家」の案内標識 |
家は山の中にあり、思った以上に周囲に草が生い茂り、草刈りに苦労した。草刈りに人手が必要となり、そこで小田部さんは、ゴールデンウイークに開催されるツツジ祭りで観光客に保存の協力を呼びかけた。
「シーズン中は山に多くの観光客が訪れるので、その時に九ちゃんの大好きだったカレーの販売や、私が以前から町おこしのために集めていた九ちゃんの写真を展示し、保存のための協力を呼びかけたんです。反響はとても大きくて、『九ちゃんの笑顔が大好きだった』、『悲しいとき歌に元気をもらえた』などの声がたくさん寄せられました。九ちゃんはこんなにみんなに愛されていたのだと知って、ますますこの家を残さなければならないと思いましたね」と、しみじみと振り返る小田部さん。
今でも一番大変な作業が草刈りだという。「笠間九ちゃん会」には会則も会費もなく自由なために、その都度手の空いている仲間を募って草刈りを行う。家は傷みがひどく、柱一本でかろうじて残っているような状態。補強はしているが、1カ所いじると全部壊れてしまうことが予想されるため、現在は玄関までしか入れない。
わずかに玄関だけ入れる状態 |
「でも、外観や周りの景色に触れるだけで、どんな年代の人たちも自分たちの楽しかった子供時代や懐かしい田舎を思い出させる気持ちにさせる場所だと思います」。小田部さんは、見回りの途中に見学の人に出会うと家の説明を自発的に行う。思い出を共有できることが嬉しいからだ。家は普段は無人だが、置いてあるノートに連絡先が書いてあれば、後からお礼のはがきを送っている。
「この活動を始めて、自分達の住んでいる町の良さを再発見することが出来ました。それに形あるものはいつか壊れるので、その時はそれでいいと思います。家はなくなっても九ちゃんの思い出はいつまでも笠間の人たちの心の中に生き続けますからね」と、気負わず自然体での活動を心掛けているという小田部さん。
街を歩くと、有線放送から時報を知らせる九ちゃんのメロディーが流れ、本当に彼は笠間を愛し愛されたのだと実感した。
住所:笠間市笠間1037の2。笠間つつじ園近く 問い合わせは小田部 Tel.090・1884・8278 |
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