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竹と丸太を縄で結んだ円形のカガミ(最前面の曲線)が美しい |
震災を経て、5年ぶりの上演へ
常陸大宮市西塩子(にししおご)の西塩子の回り舞台(茨城県有形民俗文化財指定)は、現存する日本最古の組立式農村歌舞伎舞台だ。1945年以来、舞台の組み立てが中止されていたが、97年に復元記念公演を果たし、以後ほぼ3年ごとに公演を行っている。ことしは東日本大震災をはさんで5年振りの公演を10月19日(土)に開催する。「先祖が残してくれた西塩子の回り舞台を絶やしたくない、という思いと震災を忘れないという2つのメッセージを込めています」と西塩子回り舞台保存会会長の大貫孝夫さん(66)は話す。
西塩子の回り舞台には江戸時代後期に造られた回り舞台や花道の床材などの部材、ふすまなどの舞台背景や大幕、水引き幕などの道具が残されている。
「舞台の組み立ての図面はなく、村の古老の口頭での伝承でしたので、どういう屋根だったのか、どのように竹を乗せて縄でしばるのかなど何もかも手探りで、最初は時間もかかり大変でした」と大貫さん。約20メートルの舞台をすべて組むのに1カ月かかるという。
柱は、以前、保存会が切り出したものを保持しているが、屋根に使う竹は白く焼けるので、組み立ての際には真竹約500本を山から切り出す。「それを格子状に組んで縄でしばり、屋根にします。ずれないよう竹をとめるのが難しいです」
西塩子回り舞台保存会が西塩子の全世帯70戸によって発足したのは94年。当初は、経費や労働の負担をどうするかなど課題が山積だった。「なぜ、今さら自分たちが歌舞伎舞台などを復活しなければならないか」という声も多く、舞台組み立ての実現は難しいと思われた。
しかし、全国芝居サミットなどに参加し地芝居に関わる人と交流を持つうちに、先祖が残してくれた回り舞台を復活し、これを地域再生につなげようという気持ちに変わっていったという。
その後、3年に1度の頻度で舞台を上演するまでに。努力が認められ、06年には「サントリー地域文化賞」を、08年には第1回ティファニー財団「伝統文化振興賞」を受賞している。
大貫孝夫さん |
歌舞伎を演じるのは、常陸大宮市民による「西若座」と市内の大宮北小学校と「常磐津教室」の小学生だ。
「公演当日は拍手喝采で、おひねりの雨が降ります。前回は、3000〜4000人の観客が集まりました」と顔をほころばせる大貫さん。
10月19日に行うことしの舞台では「白浪五人男」「絵本太功記」などを上演する。この舞台は本来12年に公演される予定だったが、東日本大震災の発生を受けて延期に。震災後、初となる今回の舞台は、福島県内から南会津と郡山のふたつの地芝居団体を招いて共演する。「常陸大宮市も震災の被害が大きかったですが、福島はもっと大変です。先祖が残してくれた回り舞台と、震災を忘れないためにも、ぜひ見にいらしてください」
スタッフを募集中
今年は8月25日より組み立てを開始。現在、舞台組み立てと公演当日の舞台転換などを行うボランティアスタッフを募集中だ。「公演当日の舞台の転換、ふすまなど大道具、小道具の調整に苦労します。手伝っていただけると助かります」。また協賛金も受け付け中。1口1000円。詳しくはHP「西塩子の回り舞台保存会」で検索を。 |
東日本大震災復興祈念「西塩子の回り舞台」
10月19日(土)午前10時〜午後6時半、大宮公民館塩田分館グラウンドで。雨天の場合は20日(日)に順延。無料。当日はJR常陸大宮駅と鷹巣運動公園駐車場から会場までシャトルバスが運行。問い合わせは常陸大宮市歴史民俗資料館 Tel.0295・52・1450 |
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