茨城から世界、そして茨城へ 行方市のデザイナー・藤代範雄さん
13年9月に公開予定の東日本大震災復興支援映画「天心」のポスターのデザインも担当した藤代さん
霞ケ浦に浮かぶ「七色帆引き船」
霞ケ浦の七色帆引き船 7人の仲間と自主製作
行方市在住のグラフィックデザイナーで、「なめがた大使」を務める藤代範雄さん。海外での活躍と霞ケ浦の「七色帆引き船」を製作し、地域の活性化に大きく貢献したことを受けての任命だった。「都会と地方のギャップがあるからこそ、僕はあえて茨城から世界に挑戦しています」と藤代さんは話す。
海外のコンクールで数多くの賞を受賞し、世界各地で20回以上も個展を開催してきた藤代さん。2007年に、「霞ケ浦の魅力をアピールしたい」と「七色帆引き船」を企画発案し、製作した。
「7人の仲間との信頼関係で実現しました。雄大な筑波山を背景に風を受けて漂う赤、青、黄などの七色帆引き船の姿は、素晴らしいですよ」と目を輝かせる。
また「おみたまプリン」の陶器と桐箱をデザインし絵付けも行い、行方の竹細工を国内外に紹介したのも藤代さんだ。こういった活動が認められて、昨年9月に「なめがた大使」に任命された。
藤代さんのデザインの特徴は、能面、狂言面を大胆に扱う点だ。
「能面をモチーフにすることで、伝統芸能の素晴らしさを、また、天災、戦争がなくなればよいと訴えています。世界中にいろんな面がありますが、神経の細やかさは日本の能以外、世界中どこにいってもありません。能面は、魂が入り奥が深いです」と熱い思いを話す。
09年に「デンマークポスター美術館」が開館する際、美術館側は世界29カ国100人のデザイナーに収蔵作品の提供を求めた。そして藤代さんは100人の中からオープニングエキシビションの3枚に選ばれるという快挙をなした。
Together in harmony
「その時のポスターは、『Together in harmony』(世界はひとつ)という題で、『一富士二鷹三茄子』をイメージしました。環境に敏感なタカが体もボロボロになりながらもお祝いの旗をぶら下げデンマークまでやってきたことを表現したもので、タカの頭の形は富士山を表しています。タカの目と髪が能面のイメージで、連なった国旗は、のし袋の水引きをイメージしました。くわえているのはナスの枝です」
最近では、13年9月に公開予定の東日本大震災復興支援映画「天心」のポスターやチラシのデザインも担当した。
健康のために1日10キロ歩行
今や、世界を股にかけて活躍する藤代さんだが、下積み時代もあった。
「親の援助を受けず、ダクト工事などアルバイトをしながら学校に通い、人からの裏切りにも遭いました。30歳を過ぎて藤代デザイン事務所を設立し、40歳を過ぎてから海外で賞を取るようになりました。逆境に遭えば遭うほど“何くそ”と思い、どんなに大変な時もこの世界から身をひくことは考えませんでした」と振り返る。
健康のために、1日10キロ歩くことを目標にしていると話す。
「僕は団塊の世代ですが、一生現役で、まだまだ頑張ります。歳をとるごとに忙しくなっていますし、今も徹夜で仕事をします。何か一つの目標に挑戦し、続けることが大切です。東京と地方のギャップがあったからこそ僕は逆に茨城でやろうと思いました。常に挑戦です」 更なる活躍は続く。