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民謡「磯節」の保存と普及に全力 (ひたちなか市・保存会会長/福田佑子さん) |
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谷井氏に12歳から師事し50年以上もの間「磯節」を唄い続けてきたのが福田さん、氏のけいこは異常なほど厳しかったという |
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「磯で名所は大洗様ョ…」。これは茨城の人々に良く知られた民謡「磯節」の最も知られた歌詞の唄い出しである。その生い立ちは諸説あり定かでないが、豪商や政治家をもてなす座敷唄であったことから、豪快さの中に情緒味あふれ品位に満ちているといわれ日本の3大民謡の1つとして親しまれてきた。しかしスピーディーで激しいリズムに慣れた現代人には、ゆったりしっとりと唄う「磯節」本来の魅力は理解しづらくなってきている。そんな中でひたちなか市の福田佑子さん(64)は長年にわたり、唄い継がれてきた「磯節」の保存と普及に力を注ぐ県内の第1人者である。県民の1人として「磯節」を理解したいとの思いから話を聞いてみた。
「磯節」の基礎を作った矢吹萬助氏の芸を継いだ娘さんから「磯節」を習得した亡き初代・谷井法童氏。大正時代の華やかなりし良き時代に生き、戦後はいち早くリズムを整え、唄いやすい節回しにして誰もが愛唱できるよう大衆化を図った今日の「磯節」の土台を作った人物である。この谷井氏に12歳から師事し50年以上もの間「磯節」を唄い続けてきたのが福田さんである。谷井氏のけいこは異常なほど厳しかったというがそれに耐えられたのは、「先生が家庭生活のすべてを犠牲にしてまで磯節の普及活動にかけているのを傍らで見ていて、その熱意に動かされたから」だという。
1947年、谷井氏は磯節や那珂湊八朔祭り囃子などの伝統芸能の保存や伝承の目的から「茨城県磯節保存会」を設立。谷井氏が亡き後、福田さんはその遺志を継いで保存会の会長となり現在まで精力的に活動を続けている。
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磯節の教材 |
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「この保存会の看板を背負っているからこそ、皇族を始め多くの人々の前で、唄を披露する機会を与えられているのだと思う。それだけに責任も重いのですが、県を代表する民謡、磯節の保存にはこれからも全力を尽くすつもりです」と話す。
福田さんはボランティア活動にも熱心で、民謡を始めた12歳から現在まで郷土民謡を通して故郷の良さや大切さを知ってもらいたいと、水戸少年刑務所への慰問を続けている。長年にわたる功績から感謝状や法務大臣表彰も授与されている。
演歌や歌謡曲などに比べるとどうしても固すぎる民謡をやさしい気持ちで心地良く聴いてほしいとの思いから、書道や陶芸、写真などを積極的に鑑賞し、その心やぬくもりを学ぼうと心掛けている。民謡を始めた時からの人知れぬ努力は「磯節の普及と芸術文化進展の功績により」2007年に「茨城県功績者賞」を受賞する結果を生み、名実ともに県の顔になった。
これらの活動が十分にできるのも谷井氏の息子である夫の仁さんが保存会の運営を一手に引き受けてくれているからであり福田さんも「夫は自分に本音で意見を言ってくれる大事な人」と信頼している。
昨今は広い会場での唄を披露することが多くなった。しかし「磯節」は高い声で広く声を通さなければ評価が得られないため、大きな会場では「磯節」本来の魅力が発揮しにくい、と苦労を語る。
ラジオやテレビ出演、全国各地のイベントや記念式典への出演を始め各種講演会、レコーディング、移動教室での指導、慰問と、「磯節」保存のためにとにかく忙しく飛び回る福田さん。単純な節回しの中に長年の積み重ねが奥深さを感じさせ、人に感動を与えるといわれる磯節だけに、それを唄う福田さんも自覚と責任を背負って、これからも保存活動に力を入れていくことであろう。
問い合わせはTEL029・263・6363 |
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