|
作った金の獅子は藤枝さんの自慢の作品だ |
|
弟子は450人 秋祭りのシーズンがやってきた。石岡市でも関東3大祭りの一つといわれる通称「石岡祭り」(常陸國總社祭)が9月に行われた。江戸時代から続いているこの祭りに欠かせない獅子頭(ししがしら)作りに励む数少ない職人の1人が、市内国府に住む藤枝英夫さん (78) である。製氷業を営む傍ら常陸獅子を製作し、また、自分の技術を後世に残したいと毎週のように近隣の公民館の教室や同好会に出掛け作り方を指導している。これまで指導した弟子は全国に450人もいるという。
40年以上も前から常陸獅子を作り始めた藤枝さん。もともと子どものおもちゃ用に作ったところ褒められたのだが、「こんなもので褒められるのは恥ずかしい、もっと上手なものを作ってやろう」と決心する。しかし教えてくれる人もいなかったため、独学で勉強しながら獅子を彫り始め、次第に夢中になったのだという。
祭りに使う獅子頭は幅が50〜60センチあり、それを1人でかぶり舞いながら進む。なるべく軽い桐を組木して作るが、それでも15キロ以上の重さになるそうだ。藤枝さんが作り始めるまでは東京などで調達していたという獅子頭だが、今では藤枝さんや弟子が古くなった獅子頭を修理したり、新しく作った獅子頭が勇壮な舞いを披露して祭りを盛り上げている。
祭り用の獅子頭は、木組から・下張り・みがきなど10工程を経て1カ月近くかかる。藤枝さんは、400年前の獅子を修復するため依頼を受けて熊本県まで出掛けたりもする実力を持つだけあって、「どんなものでも注文どおりに出来る自信がある」と胸を張る。丁寧に作るとこんなふうに出来るのだと弟子に見せるために作った金の獅子は藤枝さんの自慢の作品だ。「手を抜かず丁寧に彫っていくと平面の感じられない本格的な獅子が出来上がる」と見せてくれた。
藤枝さんは『指定第49号』という県の郷土工芸品の指定も受けており、県や市からの要請で海外への土産品として製作をすることも多い。しかし、藤枝さんの目的はあくまで後継者の指導にある。ずっと無料で獅子頭作りを教えてきていたことからもその意気込みが伺える。
「月謝を払いながら学ぶと金額が負担になり長続きしない。人に見せられるようになるには4〜5年かかるのでそのくらいは指導したい。だから、せいぜい材料費の出費くらいに抑えてやりたいのです」と言うから頭が下がる。新聞やテレビの取材もこれまで数多く受けているが、それも伝統工芸を次の世代に伝えたいからだという。
「現在は土浦の公民館などで20人ほどに教えていますが、自分の歳のことを考えてもあと20人くらいは教えられると思うので、興味のある人はぜひ連絡してください」と気持ちよく話してくれた。
■常陸獅子■
常陸總社宮大祭(石岡の祭り)に登場する獅子舞で使う、桐で製作された獅子頭で眉が太く角がないのが特徴である。祭り以外では魔よけとして、家庭の装飾品としても使われる。
TEL : 0299-22-2235 (藤枝氏) |
|
| |
|