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  埼玉版 令和5年10月号  
パーキンソン病でも…「人生を諦めない」  シンガー・ソングライター 樋口了一さん

パーキンソン病の治療開始から15年近くたち、樋口さんは「今は、複数の薬を飲むタイミングが計れるようになった」と話す。震えの症状はほとんどないが、「レム睡眠障害などにも悩まされています」。新型コロナウイルス感染の「療養」直後、起立性低血圧のため、都内の地下鉄の駅で一時、意識を失った。「さすがに体が弱っていた。(映画の)撮影再開まで少し時間を頂きました」。「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」を中心に歌う「ポストマンライブ」は、「症状の波に注意しながら、ライフワークとして続けたいです」
「俳優初挑戦」で映画主演
 手足の震えやこわばり、抑うつなど、症状が多岐にわたる難病「パーキンソン病」。患者本人の実話をもとにした劇映画「いまダンスをするのは誰だ?」が、7日から劇場公開される。難病の主人公を演じたのは、自らも同じ病を抱えるシンガー・ソングライターの樋口了一さん(59)だ。映画を企画した当事者の「誤解の多い、この病気の実情を知ってほしい」との思いに共感し、「俳優初挑戦」を決意した。主人公の叫び「諦めたら終わりだぞ」と、自身の“心の叫び”が重なり合う。「たとえ絶望しても、そこから一歩踏み出す。そうした生き方に、何かを感じていただければ…」

 パーキンソン病の症状は多種多様。樋口さんに強く出ているのは、体のこわばりだ。「全身にサイドブレーキをかけられている感じです」。対して映画「いまダンスをするのは誰だ?」の主人公は時折、意思とは無関係に体がひどく動く。主人公のモデルはかつて中野区に住み、震える手で原案を書いた松野幹孝氏だ。証券会社に勤めていたとき、「なぜダンスをしているんだ?」と問われた体験も、作中に反映されている。樋口さんは「撮影スタッフにパーキンソン病の人がいて、僕にない症状のところでは、助言をしてくれた」。患者全体に共通する特徴も挙げる。「適切な薬の処方やリハビリテーションの継続で、症状はかなり抑えられる。日常生活が支障なく送れる人もたくさんいます」

 樋口さんはバンド活動を経て、1993年にメジャーデビュー。自作を歌う傍ら、SMAPや沢田研二、石川さゆり、郷ひろみらに楽曲を提供するなど、ジャンルにとらわれない創作を続けてきた。自身の音楽は「物語音楽。僕は、歌の主人公の“語り部”です」。人気バラエティー番組「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)のテーマソング「1/6の夢旅人2002」(03年)や、老いた親の不変の愛をつづった「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」(08年)が代表作だ。特に「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」は「第51回日本レコード大賞」優秀作品賞を受賞。受賞前からテレビの音楽番組出演が相次いだが、「実は、このころが一番つらかった」と明かす。06年ごろからギターが弾きにくくなり、声も出しづらく…。満足のいく演奏ができなくなり受診を重ねたが、「14カ所たらい回し状態」。2年以上たって確定診断が出た際は、「相反する二つの感情が巻き起こった」と回想する。「『進行性の難病』という衝撃と『向き合う相手が見つかった』という安堵(あんど)に似た気持ちです」。その後、東京から故郷の熊本市に拠点を移し、病名を公表した。「一人の表現者として、病気を表現していく」

遺志を継ぐ思い
 そんな樋口さんに映画の話が舞い込んだのは21年夏。初めは主題歌の作曲依頼だったが、監督の古新舜(こにい・しゅん)は樋口さんのライブ鑑賞後、直筆の手紙で「主演もぜひお願いします」。松野氏とも顔を合わせていた樋口さんは、「半ばドキュメンタリーの対象になる覚悟でお受けしました」と笑みを見せる。しかし、松野氏は昨春、脳出血のため67歳で急逝。遺志を継ぐ形となった樋口さんは、自身の新型コロナウイルス感染による撮影中断を乗り越え、「中年サラリーマン」の役を演じ切った。

絶望から再生へ
 絶望、自暴自棄、孤立、家庭崩壊…。そして、同じ病を持つ仲間たちとの出会いと気付き、どん底からの再生…。仕事人間で家庭を顧みなかった主人公は、一人娘が熱中するダンスに自らも打ち込んでいく—。

 演技経験がほとんどなかった樋口さんは、本格的なダンスも初挑戦。人目を気にせず踊る姿は、主人公の変化の現れであるとともに、樋口さん自身の生き方の投影だ。ダンスに込めた意味をこう語る。「みっともなくてなりふりかまわない、真っすぐな気持ちで歩む人生の象徴です」。この映画は「単なる啓発用の作品とは違う普遍性がある」と明言する。「他の難病で苦しんでいる人、病気でなくても何らかの生きづらさを抱えている人にも見てほしいです」。クライマックスに近いシーンの「諦めたら終わりだぞ」という叫びは、「どん底からはい上がってきた人間だからできる“前向きな爆発”」とよどみない。世代を超える絆を描いた作品でもあるだけに、疾走感のある主題歌では、「1980〜90年代の音楽と、現代の音楽を融合させました」。さらに、シンガー・ソングライターとしての“今”を語る口調も熱を帯びる。「病気と向き合う人の『物語』にも曲を付けていく。既にデビュー30周年記念アルバムから、その取り組みを始めています」

【パーキンソン病】
 中脳の黒質のドパミン産生細胞の減少により、動きが遅くなる「寡動」、筋肉が硬くなる「筋強剛」、震え、姿勢調節障害などの症状が現れる厚労省指定難病。便秘や起立性低血圧などの自律神経障害、抑うつなどの精神症状を合併することも。現在、65歳以上では100人に1人ほどの割合で発症するといわれるが、適切な治療を受ければ、平均寿命は全体の平均とほとんど変わらないと考えられている。


©2022いまダンフィルムパートナーズ
「いまダンスをするのは誰だ?」 日本映画
 監督・脚本・原作:古新舜、企画・原案:松野幹孝、出演:樋口了一、小島のぞみ、山本華菜乃、塩谷瞬、IZAM、杉本彩ほか。114分。
7日(土)から、東京・K's cinema(Tel.03・3352・2471)ほかで全国順次公開。
♪樋口了一デビュー30周年記念アルバム 「いまダンスをするのは誰だ?」♪
 映画と同名の主題歌や映画挿入歌「光のランナー」など8曲を収録。
((株))テイチクエンタテインメント ・2500円)

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